10/23/2023
みなさん、こんにちは!
この春、慶應義塾大学大学院法務研究科を修了したつみき(仮名)です。
今回は、私自身の複数の外資系法律事務所でのサマークラーク、内定獲得の経験からエントリーシート(ES)の書き方をお届けします。
多くの法律事務所ではインターン、個別訪問へ参加するに当たって書類選考があります。しかし、法律事務所の選考のESに関する情報は少なく「何をどう書いたらいいか分からない…」「民間企業の就活のESとどう違うの」と不安な就活生も多いでしょう。
そこで、今回は私自身の経験と慶應ロー修了生への取材を踏まえ、例文を紹介しながらESの書き方を解説していきます。
・提出書類(証明写真、学部・大学院成績書、予備試験等の成績表)の発行は余裕を持って行いましょう
・事務所が指定するフォーマットを守りましょう
・「高校」「慶應ロー」など略した言葉を使わないようにしましょう
・ですます調か、である調のどちらかの文体で統一しましょう
・応募書類全体で西暦か、元号表記か統一しましょう
・記入欄のスペースまたは指定文字数の8割以上は埋めるようにしましょう
多くの法律事務所では、ESの質問事項が同じまたは類似しています。
よくある質問事項は「法曹を目指した理由」「応募理由」「興味のある法分野とその理由」などです。それぞれの問いに対してストレートに、結論ファーストで回答することを心掛けましょう。多くのESでは文字数が指定されているため、物事を順番に書いていたら真に伝えたい結論が後出しとなってしまいます。そこで、結論を冒頭に端的に書くことで、限られた文字数で相手に必要なことを伝えることができます(注)。
「法曹を目指した理由」「応募理由」など、理由を聞かれた際には、できる限り具体的に回答しましょう。自分の経験談や学びを具体的に書くことで、結論に説得力がでるほか、自分がどんな人間なのかが伝わりやすくなります。具体例を書く際には、なぜそのような行動をしようと思ったか、その時に自分が何を感じたかなど、自分の思考過程を5W1Hの形で詳細に書きましょう。
法律事務所ごとに強い法律分野や事務所の理念・規模、勤務弁護士に対する研修制度の内容などは異なります。
そこで「応募理由を書く際には事務所ごとに事務所の特色を理解していると伝わるように具体的に挙げることで、志望度の高さを伝えることができます。同時に、自分の法曹像やキャリアが事務所の方向性と一致していることもアピールできます。
例えば、M&Aを強みとする事務所のESでは自分が将来法曹としてM&Aを専門分野としたい、事務所の特色に対応する形で理由付けを書くことでより説得力のある文章となります。事務所研究をすることで、ESだけでなく、後の面接の段階における自己の考え・論理の一貫性を示すことができます。
応募理由を書く際には「自分の中での事務所選びの軸(方向性)」「なぜその事務所か」「その事務所のどのような点に魅力を感じたか」「事務所に入った後に自分は何をしたいか」の4点を意識することが重要です。
次は、慶應ロー修了生Uさんから提供していただいた応募理由の文章を例に挙げながら、書き方ポイントを見ていきましょう。
※記事掲載にあたり、個人情報保護・文字数等の関係から一部内容を改変しております。
【例文】
①私が貴所へ応募する理由は、国内外の案件を多岐にわたり担い、貴所は時代の変化にいち早く対応することのできる多様性を重んじる点に惹かれたからです。
②国際連合経済社会局によると、日本は少子高齢化が進み、GDPは4位から8位までに順位を下げると予測されています。私はこのような近い将来に危機感を抱いています。そこで日本だけでなく海外事業に関する案件を担っていく必要性を感じており、時代の変化を見越した柔軟性を持つことで、弁護士として日本の産業の発展を支えたいと考えております。
③そして2年次に貴所を訪問した際に、貴所でこそ上記の夢を実現できると確信しました。説明会において◯◯先生が「法律事務所も時代に合わせて変わらなければならない」と確固たる信念を持って説明されており、その言葉に裏付される通り貴所は日本で最初に××という新規分野に着手しています。私はこのように時代の変化に応じた事務所運営ができるのは、貴所において迅速な意思決定ができる機関設計がなされていることの証左だと考えています。また、△△の専門家である◻︎◻︎先生から「〜」という言葉を頂戴し、貴所には多様性を受け入れる土壌があると深く感じました。④このように、私は貴所だからこそ同じ方向性を向き、ともに日本社会に貢献することができると考えています。
【ポイント】
①結論を冒頭に書きましょう。
②公的機関の調査に基づいた具体的な数値を挙げることで、文章に説得力が増します。
③応募先の事務所に所属する弁護士と話したエピソードを盛り込むことで、自分と事務所がどのような点で方向性が一致しているか示すことができます。
④最後に自分のビジョンと結論を示して締めくくります。
法曹を目指す理由を書く際には、「どのような法曹になりたいか」「そのように考えるに至った理由・原因・背景は何か」「自分が抱いた問題意識を解決するために、どのような点で法曹になるという選択肢が必要なのか」の3点を意識することが重要です。
次は、慶應ロー修了生Sさんから提供していただいた法曹を目指す理由の文章を例に挙げながら、書き方ポイントを見ていきましょう。
※記事掲載にあたり、個人情報保護・文字数等の関係から一部内容を改変しております。
【例文】
①私は、法律家という立場でビジネス法務のバックアップをするだけでなく、刑事弁護や憲法訴訟を通してより良い社会の実現に貢献できる弁護士になりたいと考えます。
②私は大学時代、ビジネスの仕組みや潮流を知ることが好きだったので、多くのビジネス分野に触れられる仕事をしたいと考え、総合商社に興味を持っておりました。社員の方々とお会いしたり、インターンシップに参加するなどしましたが、そうした活動を通して、大組織である総合商社の一員となることは数あるビジネス分野のうちごく限られた一商品のエキスパートになることであると知り、ビジネスへの別の関わり方として、企業法務弁護士を志望するに至りました。
③また同時期、私がジェンダー論の講義を受講していたタイミングで、きょうだいから自身のSOGIについての悩みを打ち明けられたことが大きなきっかけとなり、ビジネスだけにとどまらず、社会的に法の支援を必要とする立場の人をもプロフェッショナルとして支えられる存在になりたいと強く思いました。
④そこで、私は将来上記のようなビジョンを実現し、ビジネスでの価値の提供と新しい価値観の後押しを、人生をかけて達成したいと考えています。
【ポイント】
①具体的にどのような弁護士像を志しているかを冒頭で示しましょう。
②なぜ①の弁護士像を志すに至ったかの経験談を書くことで文章が説得的になります。
③①の弁護士像に関するエピソードを複数重ねることで相手に自分の思考過程をダイレクトに伝えることができます。
④最後に弁護士としての将来の方向性を示して締めくくりましょう。
興味のある法分野とその理由を書く際には「その法分野に興味を持つに至ったきっかけ」「その法分野にはどのような特色があるか」「その法分野に法曹としてどのように関わっていきたいか」の三つの観点を意識することが重要です。
次は、慶應ロー修了生Rさんから提供していただいた文章を例に挙げながら、書き方ポイントを見ていきましょう。
※記事掲載にあたり、個人情報保護・文字数等の関係から一部内容を改変しております。
【例文】
①ファイナンス分野です。
②私はビジネスの仕組みや潮流を知ることに興味があります。ビジネスは大きな流れや様々な繋がりの中から生まれてくるものであり、ファイナンスはベンチャーから大企業まで、あらゆる事業の全ての段階で不可欠な分野です。そこで、ファイナンス業務を通してその全体像を俯瞰し、ビジネスの流行や最先端を常に捉え、法務で専門的にサポートできる弁護士になりたいと考えます。
③更に、それらを踏まえて新たな法務・事業分野にいち早くアクセスすることで、案件の獲得だけでなく事務所の業務分野の拡大に貢献することができると考えます。AIやブロックチェーン、VRのような新分野のキャッチアップにとどまらず、法整備や規制に対する新たなニーズを創出することで貴所のビジネス構造全般の底上げに貢献して参りたいです。
【ポイント】
①冒頭に端的に興味のある法分野を回答しましょう。
②その法分野の特徴や、具体的にどのような点に興味があるかを記載することで説得力が増します。
③その法分野に自分が弁護士として携わることで何がしたいかを示しましょう。
ここでは、就活生からよく出る質問について回答していきます。
Q.ESの提出はどのタイミングで出すべきですか(慶應ロー M.Iさん)
A.可能な限り、インターンや個別訪問の募集開始日に提出するのがお勧めです。提出が早ければ早いほど、当該事務所への志望度の高さをアピールすることができます。事務所によっては提出された順番から選考を始めるところもありますので、早期の提出をお勧めします。
Q.趣味・特技欄には何を書いたらいいですか(東大ロー S.Sさん)
A.率直に自分の趣味・特技を記載することをお勧めします。面接の際に聞かれることが多々あるため、関連したエピソードがあるか、自分が熱意を持って話せることを記載するのが良いでしょう。
Q事務所研究はどのように行えばいいですか(早稲田ロー A.Iさん)
A.事務所ホームページに記載されている採用情報ページを熟読したり、株式会社が運営している事務所へのインタビュー記事を読み込むことで、事務所の方針や特色を研究していました。
しかし、自分の興味のある事務所が必ずしもホームページで詳細に情報を記載していたり、メディアサイトで取り上げられているとは限りません。The Law School Timesでは今後、大手からブティック系事務所まで多くの弁護士事務所に関する情報を発信していく予定ですので、ご活用ください!