社会人からロースクール生へ 〜鼎談編〜
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社会人からロースクール生へ 〜鼎談編〜

10/23/2023

初めまして。The Law School Times編集部の山内です。

今回は、社会人経験を経てロースクールに入学した3名の方に、インタビューを実施しました!

法曹を目指したきっかけから、予備試験ルートとの比較、実際の勉強方法まで、様々なことをお聞きしました。この記事が、現在社会人でロースクールへの進学を検討されている方の参考になれば幸いです。

それでは、早速スタート!


◇参加者のプロフィール


健人さん


慶應義塾大学法科大学院既修2年

年齢:30代

前職:事務職

卒業学部:法学部

一言:休日は友人とお酒を飲んだりして過ごしています。今日はよろしくお願いします!


あゆみさん


慶應義塾大学法科大学院既修2年

年齢:25歳

前職:総合職

卒業学部:法学部卒

一言:健人さんとは同じクラスですね!(笑)よろしくお願いいたします。


紗奈さん

中央大学法科大学院既修2年

年齢:24歳

前職:商社の一般職

卒業学部:法学部卒

一言:趣味はコスメ集めです。よろしくお願いします!



◇法曹を目指そうと思ったきっかけ

健人さん

一言でいうと「自由に生きたかったから」ですね…!

大学生の頃からぼんやりと、誰かに指示された通りに動くのではなく、自分で舵をとって仕事をしたいと思っていたんです。伊藤塾には大学の時から通っていたのですが、当時は講座を受けただけで、ロースクールに進学しようとか、司法試験を受験しようとかは考えていませんでした。

大学卒業後はそのまま就職したんですけど、実際に社会に出て働いてみると、サラリーマンは大きな企業の中のイチ労働力でしかないなと実感して、将来的にはもっと自分で仕事をコントロールできるような職業に就きたいと思うようになったんです。

そんなふうに考えていた時に、ちょうど2019年の3月ごろ、2023年度から司法試験がロースクール在学中に受験できるようになるというニュースを見まして。これだ!と思い、昔の教材を見返したり、友人に助けてもらいながら、ロースクール入試の受験対策を始めたという感じです。


紗奈さん

そうなんですね!私も少し似ているところがあります。

私は、自分には会社員適正がないと体感したこと、会社員として得られるスキルに疑問を感じたことがきっかけです。就職活動の時には、特にやりたいことが無かったので、惰性で一般職になりました。しかし、いざ一般職として働いてみると「言われたことを言われた通りにやる能力」や「空気を読んで周りに合わせる能力」が求められることを窮屈に感じ、仕事に違和感を覚えるようになりました。そこで、自己の責任の下で裁量を持って仕事ができること・組織に囚われず、柔軟性のある人生が送れることの2点が両立できる仕事は何か?と考えた際に、自由業である弁護士に魅力を感じ、弁護士を目指すに至りました。


あゆみさん

なるほど。確かに、自由業である弁護士の働き方は魅力的ですよね!

私が法曹を目指した理由には、コロナの影響も大きかったです。

元々法学部に在籍していて、法律の勉強は好きだったのですが、「せっかくの大学生活、楽しもう!」と思い、サークル活動や企業の長期インターンを週4でやっていたりして、ほとんど勉強というものをせずに過ごしていました。大学4年生の5月にとある企業から内定を頂いたんですけど、当時は2020年でちょうどコロナが猛威を振い始めた時期で、内定を頂いた会社がちょうどコロナの影響を直接的に受ける業界だったので、「入社前に会社潰れたりしないかな…?」と不安になったんです。結局無事に入社はできたんですけど、入社後もコロナでかなり経営が厳しい状況が続いていて、「こういう有事の時に、会社に依存することなく、専門的なスキルを身につけて自由に働きたい」と思うようになりました。万が一内定取り消しになっても生きていけるようにというのと、当時のゼミの教授や友人の勧めもあって、大学4年の5月から伊藤塾に通い始めていたので、就職後も勉強を続けて、会社を2年間勤めた後にロースクールに入学しました。

健人さんと同様に、働きながらの予備試験ルートを選ばず、ロースクールへの進学を決めたのは、在学中受験制度が始まったことが大きかったですね。



◇なぜ予備試験ルートではなく、ロースクールへの進学を選んだのですか?


あゆみさん

社会人で予備試験に合格している人って、令和4年だと1.4%で、かなり厳しい数値なんです。(法務省 『司法試験予備試験の結果について』令和4年度参照)なので、毎年受験すること自体はできるものの、正直いつ合格できるかはわからない、っていう状況になるんですね。働きながらの受験勉強は体力的にも精神的にもかなりキツいので、受かるまで予備試験を何年も受け続けるというのは、私にとっては現実的ではなかったです。あとは先ほどもお話ししたとおり、2023年度から在学中受験が可能になったので、予備試験を合格して法曹になるのと、ロースクール既修コースで入学して在学中受験をして法曹になるのとで、必要な期間が3年間と、同じになったんです。今までは、予備試験だと3年、ロースクール既修コースだと4年かかるというので、予備試験に期間的なメリットがあったんですけど、それが無くなりました。また、ロースクールによっては、司法試験の合格率が60%を超えるところもある(京都大学法科大学院『司法試験合格実績』令和4年度参照)ので、予備試験の1.4%と比較すると断然高い確率で法曹になれるという点にも魅力を感じて、ロースクールへの進学を選びました。


紗奈さん

初めはロースクールのことを知らず、予備試験で受かることを考えていました。しかし、私もあゆみさんと同じように、勉強開始から3か月くらいして「自分の能力では、働きながら勉強するとなると10年以上かかるのでは?」と考えるようになり、色々と調べた結果、ロースクールという選択肢に辿り着きました。そして、(進級問題はあれど)司法試験受験の切符を確実に得られる点・在学中受験ができる点に魅力を感じ、ロースクール進学を決めました。


健人さん

お二人とほとんど同じです。ただ、働きながら受験できる予備試験とは異なり、ロースクールは日中に出席必須の授業があるので仕事ができず、会社を退職する必要があるので、未修であれば3年分、既修であれば2年分の学費と、在学中の生活費が必要になります。この点に関しては、国が学費を補助してくれる制度や、奨学金を借りる制度もあるので、そのようにして金銭面のハードルさえ乗り越えられるのであれば、ロースクールへの進学がおすすめですね。



◇ロースクール入試まではどのように勉強していましたか?


紗奈さん

コロナ禍でリモートワークだったこと、また、繁忙期を除いて基本的には18〜19時までに終業できる職種だったこともあり、仕事と勉強の両立は他の方と比べて容易だったと思います。平日は3〜4時間、土日は7〜8時間程度勉強しました。2022年2月に勉強を開始し、同年5月末までに、民法・商法・民訴の予備校の基礎講義を聞き、当該科目の問題集を2〜3周しました。そして、ロー入試受験を決めたタイミングで会社を退職し、同年6月中旬から専業受験生になりました。専業受験生の期間は、6月中旬〜7月末までは毎日8時間、直前期は10〜12時間ほど勉強しました。6月から7月末は、民法・商法・民訴の問題演習を続けながら、憲法・刑法・刑訴の基礎講義を聞き、刑法・刑訴の問題集を2〜3周しました。途中で間に合わなそうだと悟ったため、憲法は合格思考憲法を読むのみにしました。8月からは問題集の周回を続けながら、過去問演習と論証暗記に取り組み、8月末のロー入試になんとか間に合わせました。


健人さん

毎年8月末からロースクール入試が始まるんですけど、僕は入試の3〜4ヶ月前に会社を退職して、勉強に本腰を入れました。結局、勉強時間は毎日2〜3時間と退社前と退社後で変わらなかったんですけど、精神的な面で、何か行動しないと変わらないなと思い、退職の決断をしたという感じです。僕は結構追い込み型だったので、入試直前の3週間くらいからは睡眠と食事の時間以外は一日中勉強していましたね。僕は伊藤塾を利用していたんですけど、個人的にロースクール入試・司法試験受験において、予備校は必須だと思います。基本書でイチから勉強するのは膨大な時間がかかりますし、初学者の方だと何をどこまで勉強すべきかわからないと思うので、予備校でメリハリをつけて学習することが重要だと思いますね。


あゆみさん

私はまず、大学4年生の時に半年かけて伊藤塾の講座654時間分(呉コース)を受講しました。この時はとにかく早く一周することを目標にしていたので、2倍速で、1日あたり4コマくらい見ていましたね。正直なところ復習は全然追いつかないんですけど、予備試験に早期合格した同期から、「復習は一生終わらないから、とにかく早く一周して全体像を掴むことが重要だ」とアドバイスをもらっていたので、これでいいんだと言い聞かせてやっていました。全部聴き終わった頃には、テキストが重要度別にS・A+・A・B+・B・Cとランク付けされていて、重要なところがマークされている状態になるんですけど、自分の理解度としては2割くらいだったと思います。でも、このランク付けとマークの作業が本当に重要で、これさえ終えてしまえばあとは必要なところを覚えるだけになるので、後々本当に楽になりました。実際のロースクール入試の試験や司法試験も割とそのランク通りに論点が出るので、本当にありがたかったです。独学でも不可能ではないと思いますが、少しでも時間を短縮するために、ランク付けとマーカーが既に入っている予備校本を利用することをお勧めします。私は呉・基礎本を使用していたのですが、この呉・基礎本シリーズは、ランク付けとマーカーが入っているうえ、初学者用でわかりやすいので、非常におすすめです!

あ、話がそれてしまいましたね…(笑)そんなこんなで大学4年生の時に講座を一周したものの、記憶にはほぼ残ってない状態でした。しかも入社してから1年間は仕事が忙しく全く勉強できなかったんです。そこで、結局ロースクール入試の3ヶ月前から仕事を休職して、1日14時間ほど勉強してラストスパートをかけました。3ヶ月で一応なんとかなったのは、事前に半年かけて法律全科目の全体像をさらっていたことが大きかったと思います。



◇実際にロースクールに入学してみて、どうですか?


紗奈さん

ロー入試合格に必要最低限の知識を詰め込んでギリギリ合格に滑り込んだため、学部時代からしっかり勉強してきた方と比べると基礎が不安定だと感じることが多々あり、授業や定期テストで苦労している感は否めません。しかし、ロースクールでは、教授や同期に質問したり起案を見てもらうことができるので、勉強の方向性を誤らず、少しずつ成長できていると感じています。


あゆみさん

全く同じです…!私も直前詰め込み型だったので、ロースクールの定期試験では自分の知識の少なさや理解の甘さを実感することが多く、勉強面が今1番の課題ですね。勉強は確かに大変なんですけど、自分の夢に進めているという感覚が何より嬉しいです。前職では「何のために働いてるんだろう…」と、目標を見失ってしまうことも多かったのですが、今は司法試験に合格して法曹になるという確固たる目標があって、それに向けて日々努力できているので、つらい中でもやりがいを感じています。

入学前は「歳の違う社会人経験者がロースクールに入学したら浮くんじゃないかな…?」と不安もあったのですが、入学してみると、歳の差関係なく同期として受け入れてくれて、すごく嬉しかったです。一緒に飲みに行ったりBBQをしたり、仲の良い同期ともう一度学生生活を謳歌できているのがなんだか不思議な感覚でもあり、とても楽しくて、貴重な日々を噛み締めながら過ごしています。


健人さん

同期は僕より年下なんですけど、みんな優しくて優秀で、毎日楽しく過ごせています。昼はクラスメイトと食堂でご飯を食べて、お互いの勉強の悩みを愚痴ったりしていますね(笑)

ロースクールの勉強に関しては、2年生の前期は必修の科目数が多く凄く大変だったんですけど、多くの授業が司法試験の勉強に直結するようなためになる内容なので、授業の予習・復習をしっかりやることで自分の実力が伸びていることを実感できて良かったです。あと、ロースクール入学前は一人で勉強していたので、わからないことがあっても解決できない事が多かったのですが、入学後は同期はもちろんのこと、教授にも信頼して質問しに行ける環境があるので、すごくありがたいなと感じています。



◇最後に、ロースクールへの進学を検討している方へ一言お願いします。


健人さん

もし法曹になりたいという強い思いがあって、金銭面が許すのであれば、ロースクールに進学することを強くお勧めします。先ほどもあゆみさんのお話にあった通り、社会人の予備試験合格率はかなり低く、例え何年もかけて予備試験に合格したとしても、社会人経由の場合、その後の就活で「予備試験だから」という理由で特段有利になるという事も少ないそうです。なので、確実に法曹になりたいのであれば、ロースクールへの進学が一番良い選択肢だと思います。ただ、少し厳しいことを言うと、周りの人から「やめたほうがいいんじゃない?」と言われて気持ちが揺らいでしまうのであれば、この道に来ないほうがいいかもしれません…。決して脅しているわけではなく、キャリアを一度中断して、経済的にも多くの投資をしなければならず、しかも司法試験に合格する保証は無いという世界なので、そのくらいの覚悟が必要だと思いますし、その覚悟を持ち続けているかは自分にも常に言い聞かせています。法曹になる強い気持ちと覚悟がある方には、ぜひロースクールの受験をしてほしいと思います!


紗奈さん

様々な経歴の人が集まれば、法曹界はもっと盛り上がるのではないかと思っています。仕事や家庭との両立等、事情は人それぞれですが、法曹になるという同じ目標に向かって頑張る仲間が増えると嬉しいです!


あゆみさん

ロースクールに入学してから、数多くの弁護士・検察官・裁判官の方と仕事に関するお話をする中で、法曹という職業の魅力をひしひしと感じています。法律を使い困っている誰かを助けられる、知的好奇心を満たし続けられる、自分の名前で仕事ができるというのは、世の中に数ある職業の中でも、法曹しか無いのではないかと思います。もし、今この記事を読んでくださっている方の中で、「人生でいつかは法曹になってみたい」という想いがあるのであれば、今が行動すべき時です。私は社会人を2年間経験してこの道に進みましたが、早い段階で挑戦をして本当に良かったと思っています。在学中に受験が始まり、司法試験合格率も高い今がチャンスだと思います。同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨しながら学ぶ日々は、とてもやりがいがあって楽しいですよ。紗奈さんと同じように、今後もっと社会人経験のある法曹が増えていくと嬉しいなと思っています。これから司法試験に向けて勉強を始めるという方も、そうでない方も、皆さんの新しい挑戦を全力で応援しております!




◇おわりに

いかがでしたでしょうか?

この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

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