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2022年 民事訴訟法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民事訴訟法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/20/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

慶應義塾大学法科大学院2022年 民事訴訟法

問1

1. Yは,Xを被告として,Xに販売した輸入家具の未収代金 400 万円の支払いを求める訴え(以下、この訴えを「後訴」という。)を提起している。上記の代金債権は、XがYを被告として提起した、工事請負代金債権 600 万円の支払いを求める訴え(以下、これを「前訴」という。)の口頭弁論において相殺の抗弁に供された代金債権である。
 そこで、後訴における輸入家具の未収代金400万円の請求は前訴確定判決の既判力によって認められないのではないかが問題となる。

2. では、前訴においてどのような既判力が生じているのか。
 そもそも、既判力とは前訴の判決の内容に生じる後訴に対する通有性ないし拘束力をいう。その根拠は、紛争の蒸し返しの防止の必要性と手続保障による正当化にある。
 そして、114条1項は既判力の生じる範囲について、「主文に包含するもの」つまり訴訟物の存否についての判断に生じることを原則としている。もっとも、114条2項は訴訟において相殺の主張がされた場合、その「請求の成立又は不成立」の判断にも「相殺をもって対抗した額」について既判力が生じるとしている。これは、反対債権の不存在について既判力が生じるとすることで紛争の蒸し返しを防止する趣旨である。
 本件において、前訴においてYは輸入家具の未収代金400万円を自働債権として主張しており、裁判所は400万円の対等額で相殺の成立を認めている。すなわち、裁判所は自働債権400万円全額の成立を認めて全額が対抗した額とされているのであるから、前訴の既判力は、基準時において代金債権400万円が存在しないとの判断に生じるといえる。

3. では、上記既判力の効力は後訴に及ぶのか。
 これについて、既判力は後訴の訴訟物が既判力の生じた前訴の反対債権と同一、矛盾、先決の関係にある場合に作用すると解する。そして、既判力が作用すると、後訴裁判所は既判力の生じた判断を前提として裁判をしなければならない。(積極的作用)。
 本件において、前訴の反対債権は輸入家具の未収代金債権400万円であり、後訴の訴訟物も輸入家具の未収代金債権400万円である。したがって、これらは同一である。
 よって、前訴の既判力が作用し、後訴裁判所は既判力の生じた判断である未収代金債権400万円の不存在を前提に判断しなければならないから、Yの訴えは棄却される。

問2

1. 第2回口頭弁論期日におけるXの陳述は権利自白に当たらないか。権利自白に当たる場合、撤回が制限される場合があるため問題となる。

2. 自白とは、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述をいう。
 そして、権利自白は、当事者双方が法的評価について一致した供述をした場合に成立する。
 本件ではXの主張は相殺が法的に有効であるという法的評価についての陳述であるから、いわゆる権利自白が成立する
 たしかに、法的効果の存否の判断は裁判所の専権であり、権利自白に裁判所拘束力を認めることはできないようにも思える。しかし、処分権主義のもと当事者は請求の放棄認諾ができる以上、権利自白にも口頭弁論期日又は弁論準備手続における陳述であって両当事者の陳述の一致があれば証明不要効(179条)が認められるべきである。そして、相手方には証明が要らないことについて信頼が生じ、この信頼保護の必要がある。そこで、権利または法律関係が日常生活概念として受け入れられている限り、具体的な事実関係を陳述しているといえるから、事実の自白と同様に撤回制限効を認めるべきである。
 そして、相殺は通常、日常的に行われるものであるから日常的法律概念であり、相殺をしたという事実の自白と同視できるといえる。
 したがって、Xの陳述には権利自白として撤回制限効が認められる。

3. 自白の撤回は、①相手方の同意、②刑事上罰すべき行為によって自白がなされた場合、③錯誤に基づいている場合に限り、認められる。そして、③の場合、証明責任は自白した者が負うため、自白の反真実性を証明する必要がある。
 本件では、Xは法的に重大な瑕疵があると述べているものの、反真実性を証明したとは言えない。したがって、③の要件も充足しない。

4. したがって、Xの主張は認められない。

以上


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