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2023年 刑事訴訟法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 刑事訴訟法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/30/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2023年 刑事訴訟法

設問(1)

1. 甲の現行犯逮捕までの捜査手法はおとり捜査にあたり捜査比例の原則(刑事訴訟法(以下、略)197条1項)に反し違法ではないか。

 ⑴ おとり捜査とは、捜査機関やその依頼を受けた捜査協力者が身分や意図を秘して犯罪を実行するように働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところを現行犯逮捕等によって検挙する捜査手法をいう。本問では、Pは身分を秘して甲に大麻の販売を働きかけて、甲がこれに応じたところを現行犯逮捕しており、おとり捜査に当たる。

 ⑵ まず、おとり捜査は、捜査機関の働きかけがあるものの、行為者は自らの意思により犯罪を実行しているから、個人の意思に反する処分とは言えず、「強制の処分」(197条1項但書)には当たらない。

 ⑶ もっとも、おとり捜査も特定の犯罪の法益侵害を惹起するおそれがあるから、捜査比例の原則が妥当する。したがって、おとり捜査を行う必要性、緊急性を考慮したうえ具体的状況の下で相当とされる限度を超える場合には違法になると考える。
   本問では、Pらが、甲に対する大麻樹脂の有償譲渡の捜査を1年にわたって行ったものの、甲の大麻樹脂の有償譲渡の関与の有無及び大麻樹脂の隠匿場所が明らかにならなかったという事情があり、おとり捜査を行う必要性が高かった。一方で、本問では、甲P間で一度大麻樹脂の取引が破談になった後に、甲からPに大麻樹脂を有償譲渡しようという働きかけが行われており、捜査機関による甲への働きかけの程度はそれほど強くない。また、本件捜査の対象である犯罪は、大麻の売買という直接の被害者がいない犯罪である。

2. 以上より、本件おとり捜査は、相当とされる限度内の捜査といえ適法である。

設問(2)

1. 裁判官は強盗罪につき勾留状を発付できるか。

 ⑴ 捜査の初期段階における拘束の必要性が浮動的であることから、まず短期の拘束である逮捕を先行させ、それでも身柄拘束の必要性がある場合に初めて勾留を認めることで、被疑者の人身の保護を図るべきである(逮捕前置主義)。
   もっとも、すでに別の被疑事実について逮捕がなされており勾留の要件を満たす場合には、逮捕されていない被疑事実について逮捕を先行させなければならないとすると、かえって長期の身柄拘束を強いることとなり当でない。したがって、逮捕された被疑事実について勾留の要件が認められる場合には、他の被疑事実についても勾留の要件を満たしている場合に限り、逮捕を先行しなくても勾留が認められると考える。

 ⑵ 本問では、甲は大麻取締法違反を被疑事実に逮捕されていたが、強盗罪を被疑事実とした逮捕はなされていない。そして、勾留請求時には大麻取締法違反の被疑事実について勾留の要件を欠いていたから、強盗罪について勾留の要件を満たしていても勾留をすることは許されず、強盗罪を被疑事実に逮捕をすべきである。

2. 以上より、裁判官は、本件で強盗罪について勾留状を発付することはできない。

以上

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