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2023年 民法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 民法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2023年 民法

第1問 問1

1. Aは、Cに対して、甲土地所有権(民法(以下、略)206条)に基づき、本件抵当権設定登記抹消登記手続請求を行うことが考えられる。

⑴ Aは、Bとの間で、2021年10月1日、甲土地を目的物とする売買契約(555条)を締結しているため、甲土地所有権は、Aに移転したといえる(176条)。また、甲土地には、C名義の抵当権設定登記が備えられている。
 したがって、上記請求の請求原因事実は存在する。

⑵ しかし、が「第三者」(177条)にあたる場合、Aは甲土地所有権移転登記を備えていない以上、甲土地所有権の取得を自己に対抗することができない(177条)。

ア 同条の趣旨は、物権変動の公示により同一の不動産につき自由競争の枠内にある正当な権利利益を有する第三者に不測の損害を与えないようにする点にある。そこで、「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいうと解する。

イ まず、Cは、上記売買契約の当事者及びその包括承継人とはいえない。
 次に、Cは、Bとの間で、2022年10月11日、1000万円を貸し付ける旨の金銭消費貸借契約(587条)を締結している。加えて、当該貸金債権を被担保債権とする抵当権設定契約を締結し、甲土地上に抵当権の設定を受けている(176条)。そこで、Cは、Aの登記の欠缺を主張するにつき、正当な利益を有するといえ、「第三者」にあたる。

⑶ もっとも、上記貸金債権は時効により消滅(166条1項)しており、Cは「第三者」にあたらないのではないか。
 上記金銭消費貸借契約は、返済時期を2022年10月11日とした上で、締結されているところ、「五年」(同項1号)後たる2027年10月11日は経過している。さらに、その間、上記貸金債権を行使し得ない事情はなく、そのことをCは知っていたといえる。そこで、上記返済時期において、債権者たるCは、「権利を行使することができることを知っていた」(同号)といえる。

ウ したがって、甲土地の「第三取得者」であるAが時効を「援用」(145条)することで、上記貸金債権の消滅時効が成立する。

エ もっとも、Cは、時効の更新(152条1項)があったとして、上記消滅時効の成立の消滅が障害されないか。 Bは、2027年11月1日現在までに、一度100万円を弁済しているところ、当該行為は上記貸金債権の存在を前提とする行為である。そのため、権利の存在を認識し争わない旨を示す行為と評価できる。そこで、上記行為は「承認」(同項)にあたる。
 もっとも、上記時効の更新に係る効力は、「当事者及びその承継人の間においてのみ、効力を有する」(153条3項)ところ、AがBの法的地位を承継したとの事情はない。そこで、上記時効の更新に係る効力は、Aに及ばず、上記消滅時効の成立は障害されない。
 よって、Aによる上記請求は認められる。

第1問 問2

1. Aは、Cに対して、甲土地所有権に基づき甲土地所有権移転登記抹消登記手続請求をすることが考えられる。

⑴ 問1と同様に、Aは甲土地所有権を取得したといえる。また、甲土地上にはC名義の所有権移転登記が備えられている。
 したがって、上記請求の請求原因事実は存在する。

⑵ しかし、Cが「第三者」(177条)にあたる場合は、Aが甲土地所有権移転登記を備えていないことから、甲土地所有権の取得を自己に対抗することができない。

ア 自由競争原理の下、単なる悪意者は「第三者」として保護される。他方で、背信性を有する者については、自由競争の枠を逸脱していることから、「第三者」として保護されないと解する。

イ まず、Cは、本件契約の事実を知っていた。そのため、本件契約につき悪意であったといえる。次に、Cは、Aに対する嫌がらせのためにあえて甲土地への抵当権設定を求めていることから、本件抵当権の設定につき背信性を有していると評価できる。そこで、Cは背信的悪意者といえる。

ウ したがって、Cは「第三者」にあたらない。

2. よって、Aによる上記請求は認められる。

第2問 問1

1. Aは、Cに対して、甲土地所有権(民法(以下、略)206条)に基づき、甲土地所有権移転登記抹消登記手続請求をすることが考えられる。

⑴ Aが、甲土地所有権を有していた事実に争いはない。また、2022年4月10日現在、甲土地上にはC名義の所有権移転登記が備えられている。
 したがって、上記請求の請求原因事実は存在する。

⑵ Cは、Bを代理人とする売買契約(555条)により、Aから甲土地所有権を取得した(176条)ため、上記請求は認められない旨の反論をすることが考えられる。

ア 上記売買契約は、BがAから代理権を与えられた旨を伝えた上で、Aを代理して行われている。そのため、「本人のためにすることを示してした意思表示」(99条1項)といえる。
 もっとも、Aは、Bに対して、2022年1月に、甲土地の売却に関する代理権(以下、本件代理権とする。)を授与していたところ、同年3月7日に、Bに依頼を取りやめたい旨を伝え、Bもこれを了承している(540条1項)。そのため、同日時点で上記代理権は消滅したといえ(111条2項、651条1項)、上記売買契約は、「代理人がその権限内において…した意思表示」(同項)とはいえない。そこで、上記契約締結行為は無権代理であって、その効果はAの追認無しには何人にも帰属しない(113条1項)。

イ したがって、上記反論は成立しない。

⑶ Cは、上記契約締結行為には表見代理(112条1項)が成立し、Aは同契約の責任を負うことから、上記請求は認められない旨の反論をすることが考えられる。

ア まず、上記の通り、Aは、Bに対して、本件「代理権を与え」(同項本文)ているところ、当該代理権は「消滅」(同項本文)している。
 次に、上記売買契約は、同年3月7日に、甲土地をCに売却することを内容とするものであることから、上記「その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為」(同項本文)といえる。
 さらに、代理権の消滅は本人と代理人との間の内部事情であって、相手方がこれを知ることは困難であることから、「代理権の消滅の事実を知らなかった」(同項本文)ことは、推定されると解する。

イ したがって、上記反論は成立する。

⑷ Aは、Cには、代理権消滅の事実を知らなかったことにつき、「過失」(同項但書)が認められることから、上記反論は認められない旨の再反論をすることが考えられる。

ア Aは、上記代理権の消滅に際して、代理権を授与した旨が記載されている委任状、実印及び甲土地の登記識別情報通知書の写しをBから回収していなかった。そして、Cは、Bからこれらを示されたことを受けて、上記売買契約を締結している。そして、実印及び甲土地の登録識別情報通知書の写しは、通常、本人が厳重に保管すべきものであって、代理権が消滅した場合には、委任状と一緒に即座に回収されるべきものといえる。そこで、Aが、Bに上記代理権が存続していると考えることに合理性が認められ、さらにAに対して代理権の存在を確認すべき義務までも負っていなかったと評価できる。

イ したがって、Cには代理権消滅の事実を知らなかったことにつき「過失」が認められず、上記再反論は成立し得ない。

2. よって、Aによる上記請求は認められない。

第2問 問2

1. Cは、Aに対して、甲土地の1平方メートルの評価価格が20万円であることを前提として、契約不適合割合に相当する200万円の返還請求をすることが考えられる。

⑴ 不当利得制度(121条の2、545条等)は、法律上の原因に基づかない財貨の移転を許容しない制度である。そこで、明文の規定は無いが、不適合の程度に応じた代金の返還を請求することができると解する(563条1項、同条2項参照)。そして、当該請求が認められるためには、①財貨の移転及び②当該財貨の移転につき法律上の原因が存在しないこと、すなわち、代金減額請求の要件を充足することを要する。

⑵ 以下、検討する。

ア 問1の通り、無権代理行為による甲土地売買契約が締結されているところ、Cはこれを追認している。そこで、上記売買契約の効力はCに帰属する(113条1項反対解釈、116条1項)。そして、Cは、当該契約に基づき、Bの口座に1000万円の購入代金を振り込んでいる(①充足)。

ア 契約解釈は、契約自由の原則(521条各項)の観点より、契約当事者の合理的な意思を基準として判断すべきと解する。上記売買契約の契約書には、甲土地の面積が100平方メートルであることが記載されており、さらに、甲土地の売却価格は、契約締結時の市場価格が1平方メートルあたり10万円であったことから1000万円とされていた。このような事情に鑑みれば、契約当事者たるA及びCは、甲土地の面積に着目して契約を締結したと評価すべきであって、甲土地の面積が100平方メートルであることは、契約の内容になっていたと評価できる。それにも拘らず、甲土地の面積は、90平方メートルしかなかったことから、甲土地は契約の内容に適合しないものにあたる。そして、面積が100平方メートルの甲土地が現実に存在しない以上、「履行の追完」(563条2項1号)は、取引上の社会通念に照らして「不能」(412条の2第1項、563条2項1号)と評価できる。

イ Cは、現在の甲土地の市場価格が1平方メートルあたり20万円であることから、「不適合の程度に応じて…減額」(同条1項)すべき基準は、これに準ずるべきと主張することが考えられる。

(ア)買主による代金減額請求は、引渡しが為された物を売買の目的物として受領する旨の買主の意思表明としての性質を有する。そこで、減額割合の算定基準時は、引渡し時を基準に決すべきと解する。

(イ)Cは、2022年4月1日に、甲土地の所有権移転登記を備えている。そのため、同日時点で甲土地の引渡しを受けたと評価できる。そして、同日時点の甲土地の1平方メートルの評価価格は、10万円である。

(ウ)したがって、減額されるべき金額は、100万円である。

2. よって、Cによる代金減額請求の意思表示が為されれば、②要件を充足し、上記請求は認められる。

以上

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