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2021年 刑法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 刑法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/20/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

慶應義塾大学法科大学院2021年 刑法

第1 問題1

①60条、181条2項、177条 (強制性交等致傷罪/現在は不同意性交等致傷罪)
引き摺り込む時点で実行の着手があり、基本犯に随伴する行為において致傷結果が発生しているから。

②60条、65条1項、252条1項、(横領罪)
真正身分犯の共同正犯が成立し、既遂に至っているから。

③60条、199条(殺人罪)
積極的加害意思があり、急迫性がないため。また、積極的加害意思という主観的事情は、共同正犯者間で個別に判断するため。

④235条(窃盗罪)
(自動車という価値の高い物を数時間もの間利用する目的で乗り出しているため、)権利者を排除して所有権者として振る舞う意思があったといえるから。

⑤199条、235条(殺人罪、窃盗罪)
財物奪取への暴行でないため。行為者が被害者を死亡させ、致死行為と財物取得の時間的場所的近接性が認められる場合は現金についてAの占有が認められるため。

⑥130条前段、238条、235条(事後強盗罪)
住居から離れておらず、なお窃盗の機会が継続しているため。

⑦253条(業務上横領罪)
代表理事は当該土地を処分できるから、当該土地を法律上の「占有」が認められるため。

⑧60条、110条1項(建造物等以外放火罪)
110条は器物損壊罪の結果的加重犯であるから、「公共の危険」の認識は不要なため

⑨235条、159条1項、161条1項、246条1項(窃盗罪、 有印私文書偽造罪、 同行使罪、詐欺罪)
カード名義人であると錯誤に陥っているため。一般に手段結果の関係にないため

⑩203条、199条(殺人未遂罪)
自殺を強制する行為も殺人の実行行為たりうるため。

 

第2 問題2

1. Xが果物ナイフでAの腰付近を突き刺した行為つき、殺人罪(199条)が成立するか。

2. Xは、果物ナイフという鋭利な刃物でAの腰付近という身体の枢要部を突き刺し、Aを死亡させているから、「人を殺した」といえる。かかる行為時に、Xは未必的殺意を有していたため、殺人罪の故意もある。

3. もっとも、かかる行為に正当防衛(36条1項)が成立しないか。

 ⑴ 「急迫不正の侵害」とは、法益侵害が現に存在しているか、差し迫っていることをいう。
   本問では、AはBを汚い言葉で詰る等していたが、暴力を振るってはいなかったため、法益侵害状況が客観的には存在しておらず、急迫不正の侵害は存在しない(①不充足)。

 ⑵ よって、「急迫不正の侵害」が認められないため、正当防衛は認められない。

4. では、誤想防衛として責任故意が阻却されないか。

 ⑴ 違法性阻却事由の存在を認識している場合、規範に直面しておらず反対動機の形成可能性がないから、事実の錯誤として責任故意が阻却されると解するべきである。

 ⑵

  ア Xは、AがBに暴力を振るおうとしていると考えていたことから、Bの身体という法益の侵害が間近に迫っていたと誤信していた。そのため、「急迫不正の侵害」があると誤信していた。

  イ 「防衛するため」は、急迫不正の侵害を認識しつつ侵害を避けようとする単純な心理状態をいう。

たしかにXは憤激していたものの、Bを守らなければならないと考えて実行行為に及んでいる。よって、急迫不正の侵害を認識しつつ侵害を避けようとする単純な心理状態にあったといえ、防衛の意思が肯定できる(②充足)。

  ウ 「やむを得ずした行為」とは、防衛手段として必要最小限であることを意味し、行為者の能力や周辺状況を加味しつつ、防衛効果が期待できる手段かつ侵害がもっとも軽微な手段であるかで判断する。
    そして、Xは体格、腕力でAを上回っていたため、Aを制止する、ないし羽交い絞めにするなどの他の手段によってもBへの暴行を防ぐことはできたと考えられる。よって、果物ナイフで人体の枢要部たる腰付近を突き刺す行為は、侵害がもっとも軽微な手段であるとはいえず、「やむを得ずにした行為」とはいえない(。そして、Xも過剰性については認識できたといえるから、その限度で規範に直面していたといえる。

 ⑶ よって、誤想防衛として責任故意は阻却されない。

5. 誤想過剰防衛の場合にも36条2項を準用できるか。

 ⑴ 36条2項の趣旨は、過剰防衛は緊急状況に際し恐怖などの異常な心理状態に陥った際の行為であるため、避難可能性が責任減少にある。そして、誤想過剰防衛の場合も異常な心理状態に陥ることが認められる。

 ⑵ そのため、36条2項を準用できる。もっとも、刑の免除をすることは、過剰性の認識がある場合に過失犯が成立する可能性があることとの均衡から、許されない。

6. 以上により、Xに殺人罪が成立し、その刑は任意的に減軽される。

以上

 

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