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2023年 憲法 千葉大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 憲法 千葉大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

千葉大学法科大学院2023年 憲法

1. 改正薬事法2条は、第I医薬品(改正薬事法1条)を薬局又は店舗において薬剤師に直接対面で販売させ又は授与させなければならないこと、同法3条は、第I医薬品を薬局又は店舗において販売又は授与する場合には、薬剤師は需要者にその適正な使用のために必要な情報を、薬局又は店舗において直接対面で提供しなければならないこと、同法4条は、これらの規定に違反した場合には、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金を科すことを定めている。そのため、医薬品を郵便で販売する行為(以下、本件行為とする。)が規制されているところ、違憲とならないか。

2. 本件行為が憲法上保障されれば、上記規制は憲法上の制約にあたる。

⑴ 憲法(以下、略)22条1項は、職業選択の自由を保障しているところ、自らが選択した職業を遂行することまでも同項により保障されなければ、職業選択の自由を保障したことが無に帰する。そこで、同項は職業選択の自由のみならず、営業の自由までも保障しているものと解する。

⑵ 本件行為は、医薬品販売業を遂行する一態様として、郵便での販売を行うものである。そのため、営業行為にあたり、22条1項により憲法上保障される。

⑶ したがって、上記規制は憲法上の制約にあたる。もっとも、かかる保障は無制約のものではなく、「公共の福祉」(13条後段)による制約に服する。そこで、上記制約が「公共の福祉」によるものとして正当化されないか。

ア まず、職業は、各人が自己の持つ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。他方で、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、精神的自由に比較して、公権力による規制の要請が強く、それ自身のうちに何らかの制約の必要性が内在する社会的活動でもある。
 次に、規制目的が消極的又は積極的なものかで二分する見解もあるが、両者が混在する場合も多々あることから、単純な二分論を採用することはできない。そこで、規制目的が裁判所の判断に馴染まない性質である場合に限り、立法府の裁量を尊重すべきであると解する。上記薬事法の改正に際して設置された有識者会議では、医薬品はその本質において副作用を伴うものであることから、国民に医薬品に関する適切な情報提供をすべく、原則として店頭での対面販売を行うべきとの意見が出されている。このような事情に鑑みれば、上記規制の目的は、国民を薬品被害から保護するという消極的なものであって、その適否が裁判所の判断に馴染むものである。そこで、正当化の判断に際して、立法府の裁量を尊重すべきではない。
 また、確かに、上記規制は第Ⅰ医薬品の郵便販売を規制にすぎず、医薬品の郵便販売それ自体の規制でないことから、規制の態様が強くないとも評価し得る。しかし、第Ⅰ医薬品が医薬品全体の約87%を占めている事情をも考慮すれば、上記制約は医薬品の郵便販売業それ自体の断念に繋がるものと評価することができる。そこで、上記規制態様は、強いものといえる。
 以上の事情に鑑みれば、上記制約は、①規制目的が正当かつ重要であり、②手段が目的との関係で実質的関連性、すなわち、目的との関係で適合性及び必要性を有する場合に限り、正当化されると解する。

イ まず、規制の目的は上記の通りであるところ、同目的は国民の幸福追求(13条参照)に資するものであるから、国家が追求することを許容される目的といえる。そこで、上記目的は正当、かつ、重要なものといえる(①充足)。
 次に、上記有識者会議では、郵便による医薬品販売が対面販売に比して安全性に劣るとの知見が確立されていたとの事情はなく、また、改正前に行われていた郵便販売が原因で、国民の健康が害されたとの事情もない。加えて、郵便による医薬品の販売は、消費者の利便性やセルフメディケーションの促進に大いに役立つであろうとの指摘も為されている。このような事情に鑑みれば、上記規制は目的達成に資するものとは評価し難く、却ってその目的達成を妨げるものといえる。そこで、上記手段は目的との関係で適合性に欠ける。さらに、改正薬事法第4条は、上記の通り拘禁刑及び罰金刑を定めているところ、段階的な指導を定めず、違反した場合に直ちに刑罰を科すことは、上記目的達成との関係で過度な手段といえる。そこで、上記手段は目的との関係で必要性にも欠ける。したがって、上記手段は目的との関係で実質的関連性に欠ける(②不充足)。

ウ よって、上記規制は「公共の福祉」によるものとして正当化されない。

3. 以上より、改正薬事法1条、2条、3条及び4条は、22条1項に反し、違憲である。

以上

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