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2024年 憲法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】

12/13/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

慶應義塾大学法科大学院2023年 憲法

1. C自治会による金銭徴収は、構成員の思想良心の自由(憲法19条)との関係で過大な負担を課すものとして、公序良俗に反し、特別会費の納入義務を負わない旨を回答すべきである。以下、その回答に至った理由を示す。

2. まず、C自治会は、団体の目的の範囲内において権利能力を有する(地方自治法260条の2)。そして、団体活動の実効性確保の点から、団体の目的の範囲内の行為には原則として構成員の協力義務を肯定すべきであるもっとも、法人の構成員に対して不当な負担を負わせることの無いよう、公序良俗(民法90条)に反するような態様の協力を求めることはできないと解するべきである。

そこで、①目的の範囲内か、②公序良俗に違反しないかを検討し、これを充足する場合には協力を求めることも許されると考える(南九州税理士会事件)。憲法が保障する人権価値に加え、本件団体の性格、本件寄付の目的、構成員の負担の程度等を総合考慮して判断する。

3. C自治会規約(以下規約)第4条では自治会の目的を会員相互の親睦とし、第5条ではその目的達成のために親睦に関することや住民相互の連絡に関する行為を行うなどとしており、他の自治会との関係については何ら記載がない。また、地方自治法260条の2第2項1号は、「その区域」の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とすることを認可の要件としており、自治会に寄付のような近隣の他の自治体の援助・連携が必ずしも求められているものとはいえない。
 しかし、良好な地域社会の維持のためには、近隣の自治体との連携や関係の維持が重要となることもあり、災害を受けた近隣自治体を援助し、連携を図る行為が間接的に上記の目的達成のために必要となることも否定しえないから、近隣自治体への寄付も目的の範囲内にあると考える(①充足)。

4. 次に、本件C自治会は強制加入団体ではなく、Xが自治会から脱退することでこれを免れることも不可能ではないとも思える。しかし、B 地区の全世帯の約95%が 自治会に加入し、その活動は、公共機関からの配布物の配布、災害時等の協力、清掃活動、防犯パトロール、各種行事の実施、集会所の管理・提供等、極めて広範囲に及んでいる。加入者が自治会を脱退すると、これらの活動の対象外となり、防犯や円滑な居住生活一般に多大な悪影響を及ぼすことが確実である。そのため、実質的にはC自治体を辞めることは不可能であることから強制加入団体と同視することができ、C自治体では様々な考えを持つ者が入り交じって存在していることが予定されている。
 そして、特別会費の徴収額は100円と低額であり、構成員への金銭的負担は小さいものの、本決定は規約第6条第2項の特別会費として使途を特定して徴収を行い、寄付をするものであるから、Xのように寄付をすることを望まない構成員は自己の意に反して寄付をすることを余儀なくされる。この点、思想良心の自由は、広範な保障によりその価値の低下を防ぐため、世界観・人生観・主義・主張などの個人の人格的な内心的精神作用に限定して保障しているところ、Xの寄付の決定はXの主義に基づくものであり憲法上の保障を受ける。
 したがって、本決定は、同条1項の一般会費から支出する場合と異なり、Xが自由に決定すべき、寄付をするか否かを決する思想信条の自由を直接的に制約するものである。以上より、C自治会が上述のような強制加入団体に準ずる性質や様々な思想を有する者の存在を予定していることや、近隣自治会との協力・連携はC自治会の目的達成のために主要な活動とはいえず、あくまで周辺的な活動に過ぎないこと等を踏まえれば、他の自治会や町内会への寄付のための特別会費を徴収する本決定は、構成員の寄付の決定に関する自由を害し、Xに過大な協力義務を課すものとして、公序良俗に反し許されないと考えるべきである(②不充足)。

5. よって、以上のような説明をもってXの相談への回答とする。

以上

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