8/11/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2023年 民事訴訟法
設問(1)
1. Yに本件消費貸借契約に基づく400万円の支払いを求める訴えの利益が認められるか。すでにXが同一債権の不存在確認の訴えを提起していることから、Yの給付を求める訴えの利益が否定されないかが問題となる。
2. 訴えの利益とは、本案判決をすることの必要性ないし実効性をいうところ、先になされた訴えと後になされた訴えが同一の機能を有する場合には、後の訴えは訴えの利益を書くことになる。
3. これをみると、本問ではすでに、Xが同一の債権について不存在確認訴訟を提起している。たしかに、XYのどちらの訴えにおいても既判力(114条1項)が生ずるのは、本件消費貸借契約に基づく貸金返還請求権の存否であり、この点では同一の機能を有するといえる。もっとも、給付の訴えについては、確認訴訟と異なり、既判力に加え執行力という機能も認められる。そのため、Yは、不存在確認の訴えが提起されている場合であっても、400万円の支払について執行力を得るために給付訴訟において本案判決を得る必要がある。したがって、Yに給付訴訟において本案判決をする必要性が認められるから、給付の訴えの利益が認められる。
設問(2)
1.Yの本問訴えは、Xの訴えとの関係で重複訴訟にあたり142条に反しないか。
2. 142条の趣旨は、判決の矛盾抵触、応訴を強制される被告の煩、審理重複による訴訟不経済を回避する点にある。そこで、「さらに訴えを提起すること」にあたるかは、①当事者の同一性、及び、②審判対象の同一性の有無から判断すると考える。
3.
⑴ まず、Yの訴えが別訴の場合をみる。これをみるに、Xの訴えをYの訴えの当事者はどちらもXとYであり同一である(①)。また、どちらの訴訟も訴訟物は、本件消費貸借契約に基づく貸金返還請求権の存否であり、審判対象も同一である(②)。
したがって、別訴の場合、Yの訴えは「さらに訴えを提起すること」にあたり、142条に反する。
⑵ 次に、Yの訴えが反訴の場合をみる。この場合も、当事者はどちらもXYであり(①)、訴訟物も同一(②)であるから重複訴訟にあたり142条に反するとも思える。しかし、反訴の場合には本訴と併合審理がなされるので判決の矛盾抵触のおそれは小さく、審理の重複による訴訟不経済や被告の応訴の煩も生じることがない。そのため、Yによる反訴を認めても上記142条の趣旨に抵触することがない。したがって、反訴の場合にはYの訴えは142条に反しない。
以上