3/31/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
早稲田大学法科大学院2021年 刑事訴訟法
1. 本件では、荷物①及び荷物②のエックス線検査をしているところ、かかる捜査が「強制の処分」(刑事訴訟法(以下、法令名省略)197条1項ただし書)に該当する場合、当該処分が法定されていること(強制処分法定主義)及び当該処分をするにあたり令状を備えていることが必要(令状主義)となる。
⑴ 荷物①及び荷物②のエックス線検査は、「強制の処分」に当たらないか。
ア 「強制の処分」はその要件、手続が令状主義を踏まえて厳格に規定されているから、そのような保護を与える必要のある重要な権利利益を実質的に制約する処分であることを要する。したがって、「強制の処分」とは、個人の明示または黙示の意思に反し、重要な権利利益を実質的に制約を加える処分をいうと解するべきである。
イ 宅配業者は宅配便の内容物を開封することはないため、荷送人及び荷受人が内容物を占有しているといえる。そのため、宅配便業者の承諾を得ていても、占有者である荷送人及び荷受人の承諾なく処分を行うことは、個人の黙示の意思に反する。
また、E空港内の税関のエックス線検査装置は、内容物の射影まで観察できるくらいの精度がある。そうすると、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能である。そのため、内容物に対する荷送人及び荷受人のプライバシーを大きく制約するものであり、「所持品」という私的領域(憲法35条1項)への侵入といえる。したがって、重要な権利利益を実質的に制約している。
ウ したがって、「強制の処分」に当たる。
2. エックス線検査は、警察官らがエックス線検査装置を用いつつ視覚により宅配便の内容物を観察するものであるから、「検証」(218条1項)に当たる。刑訴法に規定している処分であるため、強制処分法定主義には反しないが、処分に際しては検証令状が必要である。そして、本件では検証令状が発布されていないため、令状主義に違反しており、違法である。
以上