広告画像
2022年 刑事訴訟法 早稲田大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2022年 刑事訴訟法 早稲田大学法科大学院【ロー入試参考答案】

3/31/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

早稲田大学法科大学院2022年 刑事訴訟法

設問1

1. Kは、Xから強制的に尿を採取することができるか。
 この点、強制採尿は、身体に対する侵襲を伴い、被疑者に屈辱感等の精神的打撃を与えるものであり被疑者に過大な負担を与えるものであるから、「強制の処分」(刑事訴訟法(以下、略)197条1項但書)としても許容することができないとも思える。
 しかし、同程度の不利益は、身体検査においてもあり得ることであり、強制採尿のみを別異に会する必要はない。また、医師による医学的な方法によれば、身体傷害の危険はほとんどない。
 したがって、強制処分としても絶対に許されないものと解すべきではない。もっとも、その人権制約の高さに鑑み、強要される要件は厳格に解される必要がある。具体的には、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合に限り、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことが許されると考える。
 これを、本件についてみるに、本件被疑事実は、覚せい剤の使用という密行性が高く、検挙が難しい犯罪についてのものである。そして、Xには覚せい剤使用の嫌疑が存在した。また、覚せい剤の使用の有無を確認するためには、疑いのある者の尿の成分を調べる必要があるところ、覚せい剤の成分は覚せい剤の使用から数日で排出されてしまい検出することができなくなってしまうため、現時点でのXの尿を検査する重要性は高い。さらに、Xは尿の任意提出を拒んでおり、強制採尿によって尿を取得する以外に適当な代替手段は存在しなかったといえる。
 以上より、本件で、Kは、Xから強制的に尿を採取することができる。

2. では、Kは、いかなる令状に基づいて、Xから強制的に尿を採取することができるか。
この点について、尿はやがて排出される無価値物であるから「物」と言える。
したがって、その占有を強制的に取得する強制採尿は、捜索・差押えの性質を有するから、捜索差押許可状によるべきであると解する。
もっとも、重要な権利侵害の危険を伴う点で、検証としての身体検査と共通の性質を有する。そこで、218条6項を準用し、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠と解する。

3. よって、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を記載した捜索差押え許可状に基づいて、強制的に尿を摂取することが可能である。

設問2

1. LはYから強制的に血液を採取することができるか。
 この点、強制採血は静脈内の血液を、注射器を用いて採取するものであるから、必然的に身体の損傷を伴い、また、感染症等の健康被害をもたらすおそれもある。しかし、強制採血は、強制採尿と異なり、身体内部への侵襲は比較的軽度であり、生理現象を他人がコントロールするという面も小さく、また、屈辱感等の精神的打撃を与えて対象者の人格の尊厳を著しく傷つけるとまではいえないため、少なくとも医師が少量の血液を注射器で採取する等の態様である限り「強制の処分」として許容されると考える。

2. では、Lは、いかなる令状に基づいて、Yから強制的に血液を採取することができるか。
この点、血液は老廃物たる尿とは異なり、生命維持に重要な機能を果たす身体の一部であるから、「物」とはいえず、捜索差押令状により処分を行うことはできない。
他方、注射器を使用して採血し、血液中の成分を分析する場合、専門技術的知識が必要であるから、鑑定としての側面を有するといえ、鑑定処分許可状の発付により処分を行うことができるとも思われる。
しかし、225条4項が準用する168条6項は、直接強制を認める139条を準用しておらず、225条4項は、139条を準用する172条を準用していないことから、鑑定処分許可状のみでは直接強制できない。そのため、鑑定書分許可状のみでは、対象者が任意に応じなかった場合に採血を行うことができなくなってしまう。
もっとも、身体検査令状によれば、直接強制は可能である(218条1項後段、222条1項本文後段、139条)。そして、血液の採取自体は、その形状、性質を確認するという点で、検証的側面をも有していると言える。
そこで、強制採血を行う場合には、身体検査令状(218条1項)と鑑定処分許可状(225条3項)を併用すべきと解する。

3. 従って、身体検査令状と鑑定処分許可状の併用により、Lは強制的にYから血液を採取することができる。

以上

               

おすすめ記事

ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
ロースクール

弁護士を目指す、フランス留学中の大学生が綴る留学&司法試験挑戦記 Vol.1

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】