5/11/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
大阪大学法科大学院2024年 行政法
第1問
設問1
1. 警察法2条1項が法的根拠とできない理由
法律による行政の原理の一内容として、行政活動には法律上の根拠が必要であるという、法律の留保の原則がある。この原則の趣旨は、自由主義思想に基づき、一定の行政活動について、国民の代表者たる議会の事前承認を義務付け、国民の権利自由を保護する点にある。そうであれば、国民の権利義務に関わる一定の行政活動をするにあたって必要となる根拠規範こそが、ここでいう「法」にあたると解する。
警察法は、行政機関たる警察組織について定めた法規範であり、いわゆる組織規範である。そのため、根拠規範ではないから、それに基づいて行政活動を根拠づけることはできない。
以上より、警察法2条1項を法的根拠とすることはできない。
2. 警職法2条1項が法的根拠とできない理由
警職法2条1項は、周囲の事情等から「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると認めるに足りる相当な理由」がある場合、つまり、いわゆる不審事由要件を満たす場合に、職務質問することができると規定する。
しかし、本件のような、無差別に停止を求める一斉検問は、上記不審事由の有無にかかわらず実施されるため、同法2条1項の要件を満たさない。
よって、警職法2条1項を根拠にすることはできない。
設問2
1. 警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な諸活動は、強制力を伴わない任意手段である限り、一般的に許容される。
2. 本件検問が行われていた場所は、時期的に飲酒運転が多いほか、飲食店の多い場所から帰る者が通る場所であることから、検問に適している場所であった。加えて、飲酒運転はそれ自体が道路交通法違反であるだけでなく、事故が起きた場合に危険運転致死傷罪にも問われる(自動車運転処罰法2条1号)きわめて危険な行為である。加えて、本件検問は相手方の任意の協力を求めているに過ぎないため、強制にわたっているとも言えない。
3. したがって、本件検問を警察法2条1項を根拠に行うことができる。
第2問
1. (ア)ないし(ウ)の概念の内容
行政上の直接強制とは、義務が履行されないときに、義務者の身体又は財産に直接有形力を行使して義務の履行があったのと同一の状態を実現する行政上の直接強制をいう。
行政上の代執行とは、他人が代わって行うことのできる作為義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をなし又は第三者にこれをなさしめ、これに要した費用を義務者から徴収することをいう(行政代執行法2条)。
即時強制とは、行政機関が、行政上の義務の賦課行為をせずに、国民の身体又は財産に実力を加えて、行政上望ましい状態を実現することをいう。
2. 本件保護がいずれに当たるか。
即時強制は、相手方に義務を課して履行を促す時間的余裕がない場合に行われる。
本件保護の場合、X2はアルコールの影響で単独での歩行も困難な様子であった。そのため、行政法上何らかの義務を課して履行を促す時間的余裕がなかったといえる。そして、警察官はX2の抵抗を排して両脇を抱えパトカーに乗せているので、X2の身体に実力を加えて、X2を保護するという行政上望ましい状態を実現している。
したがって、本件保護は即時強制に当たる。
以上