10/17/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2021年 憲法
第1 憲法13条
1. 規制①、②についての規制は憲法13条に反し違憲か。
2.憲法13条は、人格的生存に不可欠な権利を保障していると解するべきである。なぜなら、憲法13条が広く権利の保障をしていると解すると、真に不可欠な権利の保障が疎かになってしまい、妥当でないからである。
本問規制①は昆虫採集、植物採集の禁止をしており、規制②はボール遊び、球技を禁止している。これらは、かかる行為を通して人格の発展が認められないでもないが、人格的生存に必要不可欠とまではいうべき社会的事実や、人格形成へ直結する特別重要な行為であるという根拠もない。よって、規制①②の行為は、憲法13条で保障される自由権ではない。
3. もっとも、自由権として認められずとも、国家権力の行使は合理的な範囲にとどめなければならず、これを逸脱した不合理な公権力の行使は違憲となる。
本問では、規制①及び②は、共にP公園の適切な管理運営のための規制であると解することができ、かかる規制の目的は正当である。
そして、①については、昆虫や植物の採集を許すと、P公園内の生態系の維持が困難になり、一部芝生が禿げたり、害虫が発生したり、これの是正のために費用がかかったりする。かような弊害が生じない範囲で採集を許すなど、個人毎の採集量のコントロールをすることは、P公園が1ヶ所しかない出入りにて氏名の管理をしていることを加味しても、困難である。したがって、これを禁止し、二度違反した者の入場を禁止するという手段は、合理性がある。
また、②については、ボール遊びや球技を許すことで、公園内の利用者への怪我や、器物の破損が想定でき、塀を超えて外に出たボール等による被害も観念できる。これらを防止するために、一律にかかる行為の禁止をし、二度違反した者の入場を禁止するという手段は、合理性がある。
4. したがって、規制①、②は合憲である。
第2 憲法21条1項
1. 規制③についての規制は、憲法21条1項の集会の自由に反し違憲か。
2. 「集会」とは、多数人が共通の目的をもって一定の場所に集まることを意味する。そのため、多数人が、宗教的目的、あるいは政治的目的という共通の目的をもって、公園という一定の場所に集まることは、憲法上保障される。
3. 規制③は公園での宗教的集会、政治的集会を禁止しているため、上記権利を制約している。
4. もっとも、かかる権利は消極的自由である。しかし一般公衆が自由に出入りでき、伝統的に表現活動の場として利用されてきた場所はパブリックフォーラムとしての性格を認めるべきである。また、P公園は公立公園であるところ、これは「公の施設」(地自法244条1項)に該当し、「正当な理由」無くしてその利用拒絶ができない(同2項)ため、公園の表現の場としての性質を加味すると、その積極的利用請求権があるとまでいえないが、P公園の平等な利用を妨げられない自由として憲法上保障されるべきであると解する。
5. そして、規制③の禁止により、利用者は宗教的集会、ヘイトスピーチを含む政治的集会というP公園の平等な利用が妨げられているという制約を受けている。
6.
⑴ 集会の自由とは、精神的自由に属する重要な権利であり、集会の場での情報交換等を通じて自己の人格を発展させ(自己実現の価値)、また、対外的に意見表明ができる点で民主主義に資する(自己統治の価値)点でも重要な権利であると言える。特に、宗教的集会は自己の信条に深く関わる情報の発信等による自己統治の価値が高く、政治的集会は自己統治の価値が極めて高いため、その制約は一層慎重にすべきである。また、その規制態様は、集会を事前に禁止する点のみを見れば強度の態様である。もっとも、P公園は集会のために設けられた施設ということはできないため、施設管理者の裁量は大きいし、塀に囲まれているため、集会をする者の数にも限度があることから、かかる禁止は強度な規制とまでは言えない。
そこで、❶目的が重要で❷目的と手段に実質的関連性がある場合には、かかる規制も合憲となる。
⑵ 本問では、規制③の目的は集会に触発されてP公園が適切な管理運営をすることができなくなることを防止し、過激な行為によって生命身体に生じる侵害を防止することと解することができ、かかる規制の目的は重要である(❶充足)。そして、その手段は、かかる集会を禁止し、二度違反した者は入場自体を禁止するというものである。
たしかに、ヘイトスピーチのような集会が開催されることによって、公園周辺で混乱が生じる恐れがある。そのため、集会を禁止すればかかる混乱を防止することにつながるといえ、手段適合性は認められる。しかし、公園周辺の警備を強化することに加え、過激な言動を伴う集会のみを禁止すれば、混乱を防止できる。そのため、一律に集会を禁止するのは手段必要性を欠くといえる。
7. したがって、規制③についての規制は合憲である。
以上