広告画像
2024年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2024年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/21/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2024年 民法

設問1
1. ①について

CはAに対して、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項本文)をすることが考えられる。

⑴ まず、AC間で賃貸借契約(601条)が締結されており、賃貸人たるAは賃貸物たる甲の修繕義務(606条1項)を負う。そして、甲の屋根が毀損して雨漏りが生じており、これはAによる甲の管理の懈怠によるものであるため、同項ただし書きの場合に当たらない。したがって、「債務の本旨に従った履行をしないとき」に当たる。

⑵ また、Aの債務不履行により乙が毀損し50万円の価値を損失しているため「損害」があるところ、債務不履行と損害との間に因果関係が認められるか。416条の損害の範囲が問題となる。
 ここで、416条2項は、1項が定める相当因果関係の原則の例外を定め、当事者間の公平を図るものである。そこで、特別事情の予見可能性については、債務不履行時までに債務者がその事情を予見すべきであったことと解する。本件では、甲はアトリエとしても使用されることが契約の内容であったことから、美術品である乙が甲の室内に保管されていることは通常事情といえる。また、甲の屋根が毀損して雨漏りが生じたのは、台風という自然災害によるものであって、これは特別事情といえる。もっとも、これはAが、補修・修理する債務を負った時点で、Aが予見すべき事情であったといえる。したがって、乙の毀損は通常生じうる損害(同条1項)といえるため、因果関係が認められる。

⑶ 帰責事由は、「債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断する。本件の「債務の発生原因」たる賃貸借契約では、甲を住居兼アトリエとして使用することとされていた。賃貸人が広く修繕義務を負う社会通念に照らすと、台風に伴う雨漏り等によって甲の中に置かれていた高価値な美術作品が損傷するリスクは、修繕義務を負うAの側で全面的に引き受けられていたと評価できる。よって、Aに帰責事由が認められる。

⑷ よって、Cの上記請求は認められる。

2. ②について
CはAに対し、608条1項に基づき、β債務相当額の償還請求をすることが考えられる。

⑴ 本件契約1は甲の屋根の修繕に関する契約であるところ、上述のようにかかる修繕義務は「賃貸人」たるA「の負担に属する」し、同義務の履行は、甲を建物として利用するのに欠くことができないからそのための支出は「必要費」にあたる。
 また、607条の2の定める要件を満たさない場合に、求償が妨げられ得るとしても、Aは2023年9月初めに甲の屋根の毀損について認識したにもかかわらず、同月22日に本件契約1を締結するまで「相当の期間内に必要な修繕をし」ていおらず、CはAに対し甲の屋根の修繕を求めているため、「賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知」したといえ、607条の2第1号の要件を満たすから、この点は問題とならない。
 したがって、本件契約1は有効である。

⑵ 上記から、「賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出した」といえ、上記請求は認められる。

設問2

1. Eは甲を占有するCに対して、所有権(206条)に基づく返還請求としての甲の引渡を請求すると考えられる。かかる請求が認められるためには、Eが甲を所有すること、Cが甲を占有すること、Cの占有が権原に基づかないことが必要である。

⑴ Eは抵当権(369条)の実行により甲を買い受けているから甲の所有権を有する。また、Cは甲を占有している。

⑵ これに対し、Cは、本件の占有は賃借権に基づくものであり,自己に占有権原があると反論(①の反論)している。
 たしかに、Cは、当時甲を所有していたAから甲を賃借しているから、占有権原を有する。もっとも、それをEに対抗できるかは別問題である。
 ここで、抵当権設定登記がなされる前に当該建物の引渡し(借地借家法31条)を受けた建物賃借人は、その後抵当権実行による競売で建物を買い受けた取得者に対しても賃借権を対抗できる一方、抵当権設定登記後に当該建物の引渡しを受けた建物賃借人は、賃借権を対抗できないと解する。抵当権は抵当権設定登記により公示されているので、その後に建物を賃借する者は、その建物が抵当権の実行によって競売され第三者に移転するリスクを承知の上で賃貸借関係に入っているといえるからである。
 したがって、①の反論は認められない。

⑶ 次に、Cは、Aに対する乙の価値相当額支払い請求権とβ債務相当額支払い請求権を被担保債権として留置権の抗弁を主張する(②の反論)。
 上記両請求権は、建物甲の賃貸借契約から生じているから「その物に関して生じた債権」といえ、留置権は物権であり絶対的効力を有するからEに対してもその効力を有する。

⑷ したがって、Cの反論②が認められる。

2. よって、Eの上記請求は認められない。

以上


おすすめ記事

ページタイトル
ロースクール

【最新版】ロースクール入試ハンドブック公開!全34校の説明会/出願/試験日程・入試科目・過去問リンクが一冊に!【2026年度入学者向け】

#ロースクール
ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】