【加藤ゼミの司法試験解説つき!】「LSTimes司法試験演習会powered by 加藤ゼミナール」イベントレポート
後で読むアイコンブックマーク

【加藤ゼミの司法試験解説つき!】「LSTimes司法試験演習会powered by 加藤ゼミナール」イベントレポート

4/22/2024

The Law School Timesでは、司法試験・予備試験やロースクール入試などの試験対策イベントを主催しています。

2024年3月14日〜16日には加藤ゼミナールのご協力のもと「LSTimes司法試験演習会powered by 加藤ゼミナール」を開催。 会場・Zoomで合計30名の方にご参加いただきました。

講師

加藤ゼミナール代表・加藤喬


加藤ゼミナール専属・深澤直人


当日は、加藤ゼミナール代表・加藤喬講師が、70分版にアレンジした司法試験過去問を参加者全員で起案。その後、参加者はグループに分かれて「自主ゼミ」形式でお互いの答案を輪読し、最後に加藤講師と深澤直人講師の解説講義を受講しました。講義終了後も、両講師が参加者の質問に応えるなど、熱気あふれるイベントとなりました!

今回は、本イベントで加藤講師・深澤講師が行った「科目別の特徴」の解説を抜粋してお届けします。

記事の最後には、本イベントで使用した問題と解説のダウンロード方法を記載してあります。参加できなかった方もぜひ一度ご覧ください!


イベント参加者の声

  • 解説講義を受け、しっかりとした復習ができること。他者の答案を見て相場を感じることができ、モチベーションとなった。また、司法試験受験者の方から勉強の方針やロースクールの授業の受け方などについてお話を伺えて、今後の指針となった。
  • 実際に時間を測って起案でき、自主ゼミを通して色んな方の考えが分かり、解説も丁寧だった点が良かった。
  • 様々な人と交流して起案をすることによって、モチベーションがとても上がった。
  • 起案をする機会、お互いの答案を批判する機会を作ってもらえた点が良かった。
  • 講義もさることならレジュメも充実していて、復習の役に立った。
  • 演習、自主ゼミ、講義が非常に有意義だった上、講師の方と直接お話しできた。
  • 私と同時期に司法試験を受ける方々のレベル感を知ることができたこと。司法試験の問題を解けるようになるために自分に足りない部分を知ることができたこと。科目ごとの答案の書き方がよくわかったこと。



◇科目解説◇

憲法(担当:加藤喬講師)
Point

1.人権ごとのフレームをおさえる

2.人権ごとのフレームの解像度を高める

3.判例を答案のどこで使うのかを意識して学習する


1.人権ごとのフレームをおさえる

憲法の答案にも、フレームがあります。受験生がまず勉強するべきことは、答案のフレームです。

例えば、表現の自由を制約する法令の違憲審査であれば、保障→制約→正当化という違憲審査の基本形を用いることになります。一方で、財産権や生存権など、違憲審査の基本形が妥当しない人権もあります。

憲法に限ったことではありませんが、基本的に、個々の条文、判例、学説などは、答案のフレーム(骨格)の肉付けとして使うものですから、答案のフレームに乗せる形で勉強する必要があります

民事系と刑事系では、特に意識することなく、答案のフレームに乗せて個々の法律知識を勉強することができていると思いますが、公法系では、答案のフレームを意識しないまま判例・学説を勉強してしまいがちです。しかし、それでは、判例・学説に関する知識は身に付いても、論文試験で使える知識は身に付きません。


2.人権ごとのフレームの解像度を高める

人権ごとのフレームをおさえるといっても、単に「保障→制約→正当化」という大まかな流れを表面的に知っているだけでは、中身のある答案を書くことはできません。

答案のフレームに正しい肉付けをするためには、答案のフレームの解像度を高める必要があります。これは、判例・学説に関する知識を身に付けることよりも遥かに重要なことです。

例えば、「保障→制約→違憲審査基準の定立→目的手段審査による当てはめ」という違憲審査基準の基本的な枠内みがあり、違憲審査基準を定立する際には、一部の人権を除き、人権の性質と制約の態様を考慮するということは、ほとんどの受験生が理解していることだと思います。

もっとも、適当に人権の性質と制約の態様を考慮して違憲審査基準を定立すればいいわけではありません。人権の性質と制約の態様については論述のルールとコツがあり、特に、制約の態様については、どこまで具体的なことに言及していいのかという点に気を付ける必要があります。

また、違憲審査基準の厳格度を決する際には、人権ごとの違憲審査基準のベースラインと上限・下限を守る必要があります。例えば、表現の自由では、違憲審査基準のベースラインは中間審査の基準ですから、違憲審査基準の上げ下げについて論じる際には、そのことに留意する必要があります。また、表現の自由では、違憲審査基準の下限は合理的関連性の基準ですから、(よほど特殊なケースでない限り)明白の原則を用いることはできません。反対に、職業規制では、違憲審査基準の上限は厳格な合理性の基準(中間審査の基準に相当します)ですから、厳格審査の基準を用いることはできません。

さらに、目的手段審査においては、違憲審査基準ごとの目的審査と手段審査の中身を深く正しく理解していることが重要です。そうしないと、的外れな当てはめを展開することになってしまいます。例えば、手段適合性においては、規制対象が保護法益を侵害するという因果関係が前提要件として必要とされ、厳格審査の基準や中間審査の基準を採用した場合には、その因果関係について観念上の想定ではなく、立法事実による裏付けが必要とされます。また、立法事実として「科学的証明」や「高度の蓋然性」レベルのことまで要求されるのか、それとも「社会共通の認識」や「相当の蓋然性」で足りるのかは、厳格審査の基準と中間審査の基準とで異なります。

以上は、違憲審査の枠組みを使いこなすために必要とされる知識の一例です。こうしたことをちゃんと理解しておくと、問題文のヒントを答案のどこでどう使うべきかを把握しやすくなりますし、答案に紐づいた使える判例・学説知識を身に付けられるようにもなります。


3.判例を答案のどこで使うのかを意識して学習する

ロースクールの授業では、判例について深く学習することになります。

判例を第一審から読み込んで主張展開も含めて事案の詳細を把握したり、判例理論について深く考察することもあるでしょう。

もっとも、学術的観点から判例を深く勉強することは、必ずしも論文対策に繋がるわけではありません。どんなに深く正しい知識を身に付けたとしても、それを答案に反映できなければ、点数には繋がりません。さらに言うと、中途半端に深く正確に理解しようとすると、硬直的で汎用性のない、使い勝手の悪い判例知識になってしまいがちです。

判例理論について深く勉強することよりも、判例理論を答案のフレームに落とし込んで理解することのほうが遥かに重要です。

例えば、岐阜県青少年保護育成条例事件判決は、「本条例の定めるような有害図書が一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながるものであって、青少年の健全な育成に有害であることは、既に社会共通の認識になっているといってよい。」と述べています。

判例を学説の違憲審査基準論に引き直して整理するならば、上記の判示は、手段適合性における因果関係を認めたものだと理解することができます。すなわち、本判決は、有害図書規制の憲法21条1項適合性の審査において中間審査の基準を採用しており、手段適合性の前提要件である「有害図書が…青少年の健全な育成に有害である」という因果関係について、「社会共通の認識になっている」という程度で立法事実をもって肯定しているわけです。このように、本判決が因果関係を支える立法事実として「科学的証明」や「高度の蓋然性」を要求していないのは、厳格審査の基準ではなく、中間審査の基準を採用しているからです。これは手段適合性の審査に関する知識として非常に重要であり、これを理解しておかないと、問題文冒頭に書かれている立法過程に関するヒントを正しく使うこともできません。

また、手段適合性における因果関係が問題となった判例としては、薬事法判決も挙げられます。薬事法判決は、「競争の激化ー経営の不安定ー法規違反という因果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、薬局等の段階において、相当程度の規模で発生する可能性があるとすることは、単なる観念上の想定にすぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたいといわなければならない。」と述べています。これは、厳格な合理性の基準を採用したうえで、因果関係の一部について立法事実による支持がないとして、手段適合性を否定しているわけです。

このように判例を整理すると、異なる人権に関する複数の判例が、共通する争点や考え方を介して繋がります。

答案で使うことを意識しながら、判例を学習しましょう。

人権ごとの答案のフレームを頭に入れて、それに落とし込んで判例を学習することにより、答案で使うために必要とされる判例知識の「形」「範囲」「水準」が自ずと見えてくるはずです。


民法(担当:深澤直人講師)

Point

1.思考フローをおさえる(①訴訟物(請求)→②法的根拠→③要件→④効果)

2.応用問題の解法(「判例の射程」・「条文の射程」)をおさえる

1.思考フローをおさえる:①訴訟物(請求)→②法的根拠→③要件→④効果

民事訴訟手続では訴訟物が認められるか否かが問題となるため、試験における民法でも訴訟物が認められるか否かが究極的には問題とされます。そのため、少なくとも問題文を読むときには、①訴訟物(請求)→②法的根拠→③要件→④効果を意識します。そして、問題文に特段の指示がない限り、上記①から④の流れに従って答案を作成することになります。

・たとえば、問題が、「AがCに土地に返してもらいたい。どうするべきか?」であった場合、

①は、所有権に基づく返還請求権です。

②は、民法206条です。

③は、A所有とC占有です。

④は、返還請求権の発生です。

大枠が訴訟物にあるという思考は必ずおさえる必要があります。令和5年司法試験の採点実感においても、訴訟物から出発してほしい旨が述べられています。

また、③の要件検討も重要です。特に、「全」要件を検討することが重要です。「全」要件を充足していないと効果は発生しません。すなわち、1つでも要件を充足しなければ、当該条文の効果は発生しないのです。そのため、ある効果が発生するというためには、当該条文の「全」要件を充足することを必ず明示していただきたいと思います。


2.現場思考問題の解法を抑える

民法の現場思考問題のほとんどは、「判例の射程」・「条文の射程」を問うものです。

応用問題では、判例の事案が少しひねられます。そこで、判例とは事実関係が異なるが、判例の判断枠組みがそのまま妥当するのかという点(判例の射程)が問題になります。また、試験問題の事実関係を条文にあてはめていくと、あてはまるのかが一義的にはわからない条文文言にぶち当たることがあります。この場合、拡大解釈や類推適用を検討することになります。特に、条文文言の意味をどんなに押し広げてもその文言に当たるとはいえない場合、類推適用を検討します(条文の射程)。

判例も条文も「ルール」なのですから、判例の射程・条文の射程の検討手順はいずれも同じになります。まず、判例・条文といったルールを指摘して、それを答案に示します。次に、本件では当該判例・条文と違う点があるから、判例法理・条文を直接適用することはできないことを示します。その上で、判例・条文といったルールを支えている根拠ないし趣旨を考えます。そして、趣旨が本件に妥当するかを考えます。当該趣旨が本件に妥当するのであれば、本件の具体的事実関係を抽象化した規範を定立し、抽象論として展開していくことになります。なお、趣旨は、覚えている場合もあれば、その場で自分で考える場合もあります。自分で考えるコツは、当該条文がなければ、だれがどのような不利益を被ることになるのか、を考える点にあります。その不利益を防止するのが当該条文の趣旨です。これは、多少間違っていても、点数になります。ポイントは、この思考過程をたどり、それを答案に示すことです。

〈書き方〉

STEP1:条文・判例の指摘

STEP2:直接適用の否定

STEP3:条文・判例の趣旨

STEP4:趣旨が妥当するかの検討

STEP5:STEP3及びSTEP4を踏まえた抽象論(趣旨・規範)の定立


刑法(担当:深澤直人講師)

Point

1.思考フローを抑える(①構成要件→②違法性→③責任→④処罰阻却事由)

2.全構成要件の検討

3.定義を示す

4.できる限り論点を落とさない

1.思考フローを抑える:①構成要件→②違法性→③責任→④処罰阻却事由

刑法の思考フローは、①構成要件→②違法性→③責任→④処罰阻却事由です。

①は、①‐1客観的構成要件(実行行為、結果、因果関係)、①‐2主観的構成要件(故意、不法領得の意思、行使の目的など)の順で検討します。①‐2については、故意を認定した後に、他の主観的構成要件を認定します。

②の典型は正当防衛です。ここでも、客観→主観の順に認定します(防衛の意思は最後に検討)。


2.全構成要件の検討

①構成要件は、全て検討する必要があります。これに対して、②以降は必要があるときのみ(問題文中に該当する事実があるときのみ)検討します。
故意の認定を忘れないように注意しましょう。


3.定義を示す

基本的には、検討する犯罪のすべての構成要件を検討する中で、その全ての定義を答案上明示すべきです。この定義の明示がなされていない答案は評価がされません。たとえば、窃盗罪の場合、「他人の物」、「窃取」、故意、不法領得の意思について、定義を示して当てはめるべきです。ただし、タイムマネジメントの観点、紙幅の観点から、問題にならない要件については、あてはめで定義の理解を示すこともあります。このメリハリ付けは意識してください。


4.できる限り論点を落とさない

大前提として、1から3までが重要であることは言うまでもありません。すなわち、刑法においても条文が何よりも重要なのであって、4は論点主義を採ることを推奨する趣旨ではありません。刑法は、受験生のレベルが高いため、論点を落としてしまうと他の相対的に沈んでしまいます。そのため、論点落としをしないように気を付けるべきです。対処法としては、論点を条文文言との関係で正確におさえること、普段のインプットにおいて当該論点が問題になる具体的な場面をおさえておくことが考えられます。

特に、ロースクールでは判例について深く学ぶことになると思います。その判例学習においては、①今学んでいる論点がどのような場面で問題になるのか(問題となる場面を意識したインプット)、②判例は当該論点についてどのような理由でどのような規範を定立しているのか(いわゆる論証の内容のインプット)、③判例は具体的事実をどのように評価して規範に当てはめているのか(あてはめの仕方のインプット)を意識することが大切です。

どの科目にも共通ですが、この①から③を意識したインプットをしていれば論点落としの可能性を限りなくゼロにすることができますし、当該問題についての正しい処理ができるようになります。インプットにおいて、②のみならず、①および③を重視してみてください。実力が必ず伸びます。



◇問題と解説を無料配布中!◇

The Law School Timesの公式LINEで、今回のイベントで使用した問題と解説を無料でプレゼント中!

友だち追加後の初回アンケートにお答えいただくと、今回使用した加藤講師作成の問題・解説のPDFを受け取れます。
今回のイベントに参加できなかった方で、司法試験過去問のレベル感を知りたい方や、加藤ゼミナールの司法試験過去問対策教材を見てみたい方は、ぜひ活用してみてください!

The Law School Timesでは今後も、試験対策イベントや弁護士キャリア座談会など、司法試験受験生を対象としたイベントを開催予定です。イベントは公式LINEでも告知しますので、見逃さないようぜひこの機会に友だち追加を!

The Law School Times公式LINEはこちら

加藤ゼミナールのHPはこちら

加藤ゼミナールによる司法試験過去問講座2024はこちら


【記事変更】2024年4月21日午後9時54分 文章のレイアウトを変更しました。

【記事修正】2024年4月22日午後5時30分 解説の受け取り方に関する記述を変更しました。文中に写真を追加しました。

おすすめ記事

ページタイトル
司法試験・予備試験

【加藤ゼミの司法試験解説つき!】「LSTimes司法試験演習会powered by 加藤ゼミナール」イベントレポート

ページタイトル
司法試験・予備試験

【令和5年・司法試験合格体験記 Vol.4】刑事系14位で合格 ONとOFFの切り替えをハッキリと 棚橋さん(慶應ロー修了)

#勉強法#司法試験
ページタイトル
司法試験・予備試験

司法試験・予備試験 全年度分析【出題論点表付】

#司法試験#予備試験#勉強法