6/26/2025
ついに始まった四大法律事務所内定者に秘訣を聞く「四大内定者インタビュー」!
四大法律事務所とは、①西村あさひ法律事務所 ②森・濱田松本法律事務所 ③長島・大野・常松法律事務所 ④アンダーソン・毛利・友常法律事務所の4つ。優秀層が目指すTOP4とも言えるこれらの事務所は、内定取得の激戦区。
第1弾は森・濱田松本法律事務所の内定を取得した、加奈さん(仮名)に、内定の取得方法や事務所の選び方をお聞きしました。
(ライターj/The Law School Timesディレクター)
森・濱田松本法律事務所内定者 加奈さん(仮名)
令和7年度司法試験合格 2021年4月慶應義塾大学法学部法律学科に入学し、学部3年次に予備試験合格、翌年司法試験合格。
✅四大法律事務所全てから内定を取得
✅自己アピールを意識してウィンタークラークに臨む
✅事務所は人や組織風土で選ぶべき
✅四大法律事務所に限らず、様々な規模・分野の事務所も検討を!
◇目次◇
・法曹を志したきっかけ
・なぜ四大を選んだのか
・なぜ森・濱田松本法律事務所を選んだのか
・内定取得の秘訣は
・四大法律事務所を目指す人へのメッセージ
ーー加奈さんが法曹を志した時期や経緯を教えてください
私が法曹を志したのは、かなり消極的な理由です。大学に入った当初は官僚になりたいと思っていました。そして法律を作る官僚になるには、法律系の資格があると就職に有利であるという話を聞き、司法試験の予備校に入りました。
しかし予備校の勉強が思ったよりも大変で、官僚の就活と並行して行うことが困難だと感じるようになり、結局予備試験受験を優先することになりました。結果として、法曹になるしか道が残されていませんでした。本末転倒ですね(笑)
ーーたくさんの事務所がある中で四大事務所を中心に就活したと伺っています。なぜでしょうか?
社会に大きな影響を与えたいという点と、子育て支援の制度がしっかりしている点の2つが理由になります。
四大法律事務所が扱っている案件はどれも規模が大きく世間の耳目を集めるようなものばかりです。そのような案件を主導的に動かせる立場になれば、自分が仕事を通じて社会に大きな影響を与えることができると考えました。これは官僚になりたいと思っていた自分の価値観の実現にもつながると考えています。
ーー制度を重視した理由は何ですか?
私は女性なので将来的には出産や育児を考えています。その際に休養の制度や復帰の制度がしっかり整っていないと全力で仕事に打ち込めないと考えました。色々な事務所の女性のパートナーに話を聞く中で、育児休業などの制度が整っているのは中堅以上の比較的規模の大きい事務所だという印象を受けました。制度として整っていると、罪悪感や不安なく出産、育児に専念できると思ったので、制度が充実している事務所かどうかを重視しました。
ーー四大法律事務所の中でも森・濱田松本法律事務所を選んだ理由を教えてください。
弁護士の先生方が伸び伸びと働いている組織風土に惹かれました。私は、裁量をもって自分が効率の良いと思う方法で仕事や勉強を進めたいタイプなので、それを許容してくれそうな事務所が合いそうだと考えました。森・濱田松本法律事務所は個性的な先生方がお互いに過度に気を使うことなく、自身の個性を存分に生かして伸び伸びと仕事をしている印象で、とても魅力的に写ったのです。
ーー給与体系や制度面などは検討しなかったのですか?
確かに、給与体系や、研修制度、休暇の制度などは法律事務所の中でも違いがあると思いますし、重要なファクターだと思います。しかし、私が調べた限りでは、四大法律事務所の間には、大きな違いはなさそうでした。
むしろ、組織風土や働かれている先生のカラーなど、「人」にまつわる部分が一番の差別化ポイントのように思いました。これから四大法律事務所を検討する人もぜひ「人」を軸にして、比較検討するといいかなと思います。
ーー四大法律事務所は内定をもらうのは難しいと言われていますが、Aさんが内定を取得できた秘訣は何でしょう。
大前提として、学部で予備試験に合格していたというのは大きいと思います。学部で予備試験に合格しているのが優秀であることの証になるかどうかは分かりませんが、少なくとも真面目にコツコツ勉強を進められる人間であるとして一定の評価を貰うことができるのではないかと思います。
しかし、学部で予備試験に合格していた友達でも内定を取得できなかった人も一定数いたので、それ以外の部分も重要だと感じました。
逆を言えば、予備試験に合格しなくてもそれ以外の部分で良い評価を貰えば、四大法律事務所の内定を取得することができるのではないかと考えます。実際に私の先輩でも、ロースクール出身で四大法律事務所に内定が出た人も多数いらっしゃいます。
ーーそれ以外の部分とは具体的にどのような部分でしょう?
クラークでの立ち回りですね。私はクラークでは、思考力とコミュニケーション能力の両方が評価されていると考えています。
まず思考力についてお話しします。クラークでは法的問題の絡む課題が出されるのですが、その課題に取り組む姿勢を通して能力面が見られると思っています。また、それ以外の時間、例えば食事を食べるタイミングなどで弁護士の先生方とお話しする機会があるのですが、その時間でコミュニケーション能力を見られていたように感じました。
ーー課題ではどのように自分の能力をアピールしましたか?
前提として、課題では知識量ではなく思考力が見られていると思いました。予備試験合格者はロースクール生に比べると、そもそもそんなに法的知識があるとは言えませんし、知識で比べるのは公平ではないように思いますから。
私が意識していたのは、現場でリアルタイムで考えて発言することです。弁護士の先生や他の学生と課題について議論する中で、自分が考えてもいなかったような新しい論点が出てくることがあります。そうしたタイミングでは皆、思考や発言が停止しがちです。そんな中でも何とか、自分の中で考えを巡らせて、一定の結論を捻り出すところまで持っていく。そして間違いを恐れずに、どんなことでも発言するという姿勢を大切にしました。そういったことを意識した結果、頭の回転が早いという評価に繋がったのかなと思います。
ーーコミュニケーション能力についてはどのようにアピールしたのでしょう
私が意識したのは、弁護士の先生に志望する業務分野を話す際に、自分の経験を絡めて話すようにしたことです。例えば、私は高校で海外研修に行った経験があり、そこでは大勢の人を巻き込んで物事に取り組みたいという自分の性格が現れ、大使館の人や学者の方にたくさん話しかけて、学を得て、充実した研修にすることができました。このような経験から自分はたくさんの人と話しながら物事を進めることが好きだと気づき、危機管理という多数の利害関係者とコミュニケーションをとることが必要な業務分野を志望するに至りました。
このように自分の経験と志望する業務分野を絡めると、本当にその分野をやりたいと思っていることが伝わりますし、自分の人間性・長所もさりげなくアピールすることができ、一石二鳥だと思います。
その他にも、クラーク中、空いた時間があれば担当のメンターの先生に、自分の興味関心がある分野に詳しい先生を紹介してもらい、お話を伺いました。今となってはそれが積極性やコミュニケーション力の評価につながったのかと思います。
ーー最後に、四大法律事務所を目指している学生に向けてメッセージをお願いします。
一度は四大法律事務所以外の事務所を見ることをお勧めします。四大法律事務所は知名度も高く、素晴らしい事務所であることは間違い無いのですが、それが故に志望者はそれ以外の事務所に目を向けることを忘れてしまいがちです。私も実際に情弱すぎて四大法律事務所以外のクラークに参加しなくて後悔しました。四大法律事務所以外にも魅力的な事務所がたくさんあることを後から知ったので。
四大法律事務所のいいところや自分に合わないと思う部分は、他の中小の事務所と比較することで初めて見えてくるものです。もしかしたら、自分の理想の事務所が四大法律事務所ではないかもしれません。あるいは、理想の事務所が四大法律事務所であったとしても他の事務所と比較することで、四大法律事務所がなぜ自分にとって理想と言えるのか言語化でき、説得的な志望理由を構成できるかもしれません。ぜひ、規模も分野も色々な事務所を見てからご自身の進路を決めてほしいですね。