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2024年 憲法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2024年 憲法


第1問

1. 本件法律は過去に性犯罪によって有罪判決を受けた者の子供に接する業務を選択する自由を制約し、憲法(以下略)22条1項に反し違憲か。

⑴本件自由は「職業選択の自由」として22条1項により保障される。

⑵本件法律は過去に性犯罪によって有罪判決を受けたことのある者を採用してはならないと定め、そのような者が子供に接する業務に就くことを阻むものであるから、本件自由を制約している。

⑶では、かかる制約は正当化されるか。
 職業は国民の生計のための手段であり、社会の維持・発展という社会的機能分担の性質を有し、また、国民個々人の人格的価値とも不可分な関連性を有する。このような職業の現代的意義に鑑みれば、本件自由は重要である。もっとも、「公共の福祉に反しない限り」という文言に表れているように、職業は社会相互関連性を有することから、自ずと内在的制約に服する。
 薬事法違憲判決では、職業規制において、狭義の職業選択の自由に対する許可制という強力な制限による制約であって、その規制目的が国民の生命身体保護や衛生環境保全といういわゆる消極目的である場合に厳格な合理性の基準(実質的関連性の基準)を採用している。
 本件法律によって上記の者のは子供に接する業務に就くという選択肢が閉ざされることになるであるから、本件法律は狭義の職業選択の自由たる本件自由を制約している。また、たしかに本件法律は許可制を課したものではないが、上記の者らに対して一律に子供に接する業務に就くことを例外なく禁止する点で、許可制に準ずる強力な制限といえる。
 また、本件法律の規制目的は子供の健全な発育や身体の保護を目的とした消極目的である。
 したがって、薬事法違憲判決と同程度の基準を採用すべきである。具体的には①目的が重要で、②手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合に本件法律は合憲となる。

⑷①

 本件法律の目的は子供を被害者とする性犯罪を未然に防止する点にある。青少年の健全な発達を促す上で性犯罪を前科に有する者と子供たちがその教育課程で接することは社会共通の認識として有害になりうるし(岐阜県青少年保護育成条例事件参照)、近年、学校や保健所・認定子供園・ベビーシッターや学習塾その他の習い事といった子どもに関わる業種きおける性犯罪が社会問題となっていることからも、子供への教育ひいては健康や安全に大きな悪影響を及ぼしているものとして、子供を被害者とする性犯罪を未然に防止するという目的は重要な目的といえる(①充足)。

⑸②
 たしかに、本件法律は上記の者らに一律禁止を課す一見して過度な規制にも思える。しかし、法務省の調査によれば、性犯罪で有罪判決を受けた者のうち、5年以内に性犯罪を再び犯した者の割合は13.9%であり、その再犯率は他の犯罪と比べて比較的高いものといえる。だとすれば、性犯罪を未然に防止するにあたって、一律禁止を課す点についてはこのような高い再犯率に鑑みれば妥当かつ有効な手段としてやむを得ないものといえる。また、上記の者らが子どもに接する業務に就いた後に性犯罪が起きた後にその者を処罰しては性犯罪を未然に防ぐことはできないことから、上記一律禁止については必要性がある。もっとも、本件法律は、子供に接する業務を希望する者に自ら子供家庭庁に照会し、性犯罪歴のないことを照明する書類を取得し、求職先にそれらを提出しなければならないところ、性犯罪歴のデータベースは20年間保存されるから、性犯罪を行ったものは少なくとも20年間上記の業務に就くことができない。これに対し、刑の言渡しの効力は10年間で消滅する効力を失ううえ、性犯罪の高い犯罪率を示すデータはあくまで犯罪後5年間のものであるところ、20年間にわたる規制は過度なものといえる。したがって、手段が目的との関係で実質的関連性を有しない(②不充足)。

⑹以上より、本件法律は違憲である。

2. 本件法律は過去に性犯罪によって有罪判決を受けた者の自己の情報をみだりに保有収集されない自由を制約し、13条後段に反し違憲か。

⑴判例は、私生活をみだりに公開されない権利を保障する。しかし、情報化社会において、個人情報が行政機関により集中的に管理されているので、これに対抗する必要がある。そこで、プライバシーの権利とは、自己の情報をコントロールする権利(公権力により自己の情報を強制的に収集・保有されない権利)をいうとすべきである。そして、プライバシー権は、13条後段により保障される。

⑵本件法律は、こども家庭庁に設置されたデータベースに性犯罪歴を提供し保存させ、求職者にその記録を取得させて提出させるものであるから、自己の情報をコントロールする権利を制約する。

⑶では、かかる制約は正当化されるか。
 性犯罪歴は、一般的に人に知られたくない情報であり、知られると個人の平穏な生活に大きく影響しうるものであるから、人の人格的生活に密接に関連するものであり、重要なものである。他方で、本件法律によると、性犯罪者に関するデータは、性犯罪者自身による証明書の発行以外に用いられないものであるから、その制約は必ずしも大きいものとはいえない。
 これらの権利の性質や制約の程度を考慮すると、①目的が重要で②手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合に本件法律は合憲となる。

⑷②について、1の通り、20年という長期間のデータの登録は過度なものであり、違憲である。

 第2問

1.「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)とは、①当事者間の具体的な権利義務関係ないし法律関係の存否に関する紛争であり、②法の適用によって終局的に解決できるものをいう。もっとも、①②を充足し「法律上の争訟」にあたるとしても、政治的色彩が高度に認められる統治行為については裁判所の介入を許すべきではないから、かかる決定についての違憲審査をすることはできない。

2.事件1について、訴えAは甲と衆議院間における衆議院の甲に対する議員歳費の支払義務の存否を争うものであり(①充足)、憲法69条の適用によって終局的に解決できる事柄である(②充足)。したがって、「法律上の争訟」にあたる。
 もっとも、議員歳費の支払い義務は衆議院の解散の可否が前提問題となり、衆議院の解散は、政治的色彩が非常に強い統治行為であるから、かかる解散の有無の審査においては裁判所の介入を許すべきではない。
 したがって、訴えAにおいて、裁判所が甲の求める内容の違憲審査を行うことができない。

3.事件2について、訴えBは乙と参議院間で、参議院が乙に対する損害賠償債務を負うかという具体的な義務の存否についての争訟であり(①充足)、憲法53条は国会議員の権利を規定しているわけではないが、一定数の国会議員の請求により、内閣は国会を開催しなければならないとしている以上、国会議員には内閣に国会の開催を求める権利があるといえ、53条の適用により終局的に解決できる争訟である(②充足)。したがって、「法律上の争訟」にあたる。
 次に本件では、令和Y年6月22日の請求後、10月22日に臨時会が開催されているから、その時点で国会議員としての職務を行うことができ、乙の権利侵害がない。
 したがって、訴えBにおいて、裁判所が乙の求める内容の違憲審査を行うことはできない。          

以上


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