4/4/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
千葉大学法科大学院2024年 刑法
1. 甲の罪責について
⑴まず、Vを後ろから蹴り飛ばし、手拳で何度か顔面を殴打した行為は、人の身体に対する不法な有形力の行使たる「暴行」に当たり、かかる行為に暴行罪(208条)が成立する。
⑵次に、Vを殴る・蹴るなどした行為に、強盗致傷罪の共同正犯(60条、236条1項、240条前段)が成立するか。
ア まず、「暴行」(236条1項)とは、相手方の反抗を抑圧するに足る程度を要する。甲は上記1(1)に続けて執拗にVに殴る蹴るの暴行を加えており、相手方の反抗を抑圧するに足るといえ、「暴行」が認められる。
イ そして、後述する通り他の共犯者の乙による現金100万円という「財物」の奪取があるため、上記暴行を用いて財物の占有を第三者の占有下に移したといえるから、「強取」したといえ、 甲は 「強盗」に当たる。
ウ そして、甲の顔面殴打によりVは顔面骨折を負っており、「負傷」している。
エ したがって、上記行為に、強盗致傷罪が成立し、後述のように強盗罪の限度で乙と共同正犯となる。
⑶よって、上記各行為に暴行罪と強盗致傷罪が成立し、両者は同一の法益を侵害しており、包括一罪となり、甲は強盗致傷罪の罪責を負う。
2. 乙の罪責について
乙が、V の寝室の押入れから現金100万円を持ち去った行為に、強盗致傷罪の共同正犯が成立するか。
⑴乙は、甲の強盗行為の途中から加功しているが、「強盗」に当たるか。いわゆる承継的共同正犯の成否が問題となる。
ア この点について、 60条が「すべて正犯とする」として一部実行全部責任を定めるのは、 他の共犯者によって引き起こされた法益侵害と因果性を有するためである。
そこで、 共謀前の他の共犯者による行為の効果を利用することで、 結果について因果性を有する場合には、 共同正犯となる。
イ 本件では、共犯者である甲の先行行為によってVが反抗を抑圧され100万円のありかを聞き出せたことで、100万円の奪取は容易に行えたといえる。よって、先行行為の効果を利用することによって、犯罪の結果について因果性を有するといえる。
ウ したがって、乙は「強盗」に当たる。
⑵もっとも、乙は、関与前の甲の傷害結果を利用したわけではないから、承継的共同正犯によって乙に致傷の結果を帰責することはできない。
⑶よって、乙の上記行為に強盗罪が成立し、強盗罪の限度で甲と共同正犯となり、乙はかかる罪責を負う。
以上