7/22/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
神戸大学大学法科大学院2024年 商法
設問1
Xは、本件申立ての理由として、本件定款規定の内容が会社法(以下略)362条2項3号に反しており、本件総会決議の内容は法令に違反しており、無効であると主張する(830条2項)と考えられる。
すなわち、362条2項3号の趣旨は、代表取締役に対する取締役会の監督・監視を実効的なものにするという点にある。その趣旨を重視すれば、代表取締役は取締役会以外の機関において選定・解職することができない。そうすると、代表取締役を取締役会のみならず株式総会においても選任できる旨の定款規定は同号に反する。
よって、本件定款規定は無効である。そうすると、株主総会に代表取締役の選任権限はないから、Y2を代表取締役に選定した株主総会決議は法令に違反しており、無効である。設問2 本件定款規定は、取締役会の代表取締役選定解職権限(同号)を否定するものでない以上、有効であると考える。
取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社(327条1項1号参照)が、その判断に基づき取締役会を置いた場合、株主総会は、法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(295条2項)、法にお いて、この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして、法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが、取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても、代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(362条2項3号)が否定されるものではなく、取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。そうすると、取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解される。
よって、本件定款の定は有効であり、本件株主総会決議も有効である。
設問3
「当会社の代表取締役は株主総会決議のみによって定められ、取締役会決議によっては定めることができないものとする。」という定款規定は有効か。
たしかに、代表取締役の選定を株主総会の専権とすれば、解職も株主総会の権限となり、取締役会の監督権の実効性は弱まるが、取締役会は代表取締役解職を議題とする株主総会の招集を決定することもでき、その監督権自体が失われるわけではない。そうすると、定款により、代表取締役の選定を株主総会の専権とすることができると解する。
よって、上記定款規定は有効なので、設問2における私見と変わらない。
以上