7/21/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2024年 刑事訴訟法
設問⑴について、下線部1つ目から2つ目にかけて、訴因変更をすることはできるか。
⑴ 訴因変更は「公訴事実の同一性」(刑事訴訟法(以下略)312条1項)が認められれば、行うことができる。「公訴事実の同一性」は、訴因変更の限界を画するとともに、その裏返しとして、二重起訴や一事不再理効等の及ぶ範囲を画する機能も有する。そこで、「公訴事実の同一性」の有無は、両訴因の基本的事実関係の同一性を基本としつつ、非両立関係の有無を補充的に勘案して判断すべきである。
⑵ 本件では、新旧両訴因は、粘着テープを巻きつけた行為と、暴行・脅迫行為を行った者が特定されているか否かが異なっている。しかし、犯行の日時・場所・両手首に粘着テープを巻き付けるという行為態様は同一であることから、基本的事実関係が同一といえ、「公訴事実の同一性」が認められる。
⑶ よって、下線部1つ目から2つ目にかけての変更に問題はない。
設問(2)について、下線部2つ目から二重下線部にかけて、訴因変更をする場合、訴因変更手続が必要か。訴因変更手続が必要であるにもかかわらず、同手続を経なかった場合、不告不理原則(378条3号)違反になる。
⑴ 当事者主義的訴訟構造の下、裁判所の審判対象は、一方当事者たる検察官の主張する具体的事実である訴因に限られる。訴因制度は、審判対象画定機能と防御権告知機能を有するが、第一次的機能は前者にあり、後者はその裏返しにすぎない。そこで、まず、審判対象画定のために不可欠な事実は変動した場合には、訴因変更が必要であると解する。しかし、それ以外の事項の変動についても、争点明確化の観点から、それが訴因において明示され、一般的に被告人の防御にとって重要な事項である場合には、原則として訴因変更を要すると解する。もっとも、被告人にとって不意打ちとならず、かつ、不利益とならない場合には、訴訟経済の見地から訴因変更せずとも足りると解する。
⑵ 強盗致傷事件において、誰が実行行為のどの行為を行ったかは、審判対象画定のために不可欠な事実とはいえない。しかし、どのような行為を行ったかは訴因に明示されており、甲の量刑に影響するという点で一般的に甲の防御にとって重要な事項である。そして、甲は脅迫行為を行ったことを否定しているため、甲が脅迫行為を行ったとすることは甲にとって不意打ちであり、不利益である。
⑶ よって、二重下線部のような認定をするためには、訴因変更手続が必要である。
以上