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2021年 民事系 東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 民事系 東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】

10/16/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東京大学法科大学院2021年 民事系

設問(1) (ア) について

1. Fは、競売により甲土地の所有権を得ていること、またCが丙建物の存在によりこれを占有していることから、Cに対し、所有権(民法(以下法名略)206条)に基づく返還請求権としての丙建物収去及び甲土地明け渡し請求を行っているところ、これに対してCは、丙建物には法定地上権(388条)が成立しCは甲土地の占有権限を有するのであるから収去する義務は無い旨を反論することができないか。

2.

 ⑴ 法定地上権の要件は、①抵当権設定当時に既に建物が存在していたこと、②抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同じであったこと、③土地と建物のどちらか一方または双方に抵当権が設定されたこと、④抵当権実行の結果、土地と建物の所有者が別々になったことである。

 ⑵ 本件では、抵当権設定当時と現在とで存在する建物が異なっており、このような場合にも①の要件を満たし、法定地上権は成立することとなるのか、問題となる。
   法定地上権の意義は社会経済上の不利益の防止と抵当権設定当事者らの合理的意思に配慮する点にある。そのため、土地と建物に共同抵当権が付されていた場合には、抵当権者は建物及び土地の価値の全体を把握する意思であるといえる。その場合、建物の滅失時には土地について法定地上権の負担のない、更地としての価値を把握させることが当事者の合理的意思に適う。また、これを更地としての評価としなければ、容易に執行妨害が可能となり妥当性を欠くことになる。よって、法定地上権の成立は認められない。
   一方、本件のように、土地についてのみ抵当権を付していた場合、抵当権者は通常その時点で建っていた建物を基準とする法定地上権の成立を覚悟するのみで、新たに作られた建物に対する法定地上権の成立までは認識しておらず、これを認めれば抵当権者に対し不測の損害を与えうる。しかし、上述のとおり、法定地上権は当事者の合理的意思に沿うものでもあるから、抵当権者や買受人が新建物の建築を認識し、またこれに基づいた法定地上権の成立を認容していたような場合には、例外的に新建物を基準とした法定地上権の成立を認めることができる。

 ⑶ 本件では、AC間では新築建物の建築を想定した抵当権設定を行っていたものの、この点についてFが認識しえたというような事情はない。

3. 以上より、乙建物についてのみ①を充足していたものとし、乙建物を基準とする法定地上権の成立のみ認められる。したがって、Cの反論は認められない。 

設問(1) (イ)について

1. Cは口頭弁論の期日に出頭しなかったため、民事訴訟法(以下略)158条より、Cの提出した書面記載事項を陳述擬制し、出頭した相手方たるFに対し弁論させることができる。そして、同様に出席をしなかったことで、159条3項の規定より同条1項が準用され、当事者たるFが主張した事実について擬制自白が生じることになる。またFは訴状に甲土地を競売によって手に入れた経緯やCの占有状況を記載しているため、これは準備書面を兼ねたものとなる(民訴規則53条3項)。そのためFはその準備書面記載の範囲についてのみ主張することができ(161条3項)、同範囲に擬制自白がかかる。159条1項及び3項の但し書きに当たるような事情もなく、自白の擬制は免れない。

2. よって、Fの主張する請求原因事実には自白がなされたものと擬制され、弁論主義第2テーゼより裁判所拘束力を生じるという訴訟上の効力を有する。

設問(2)について

1. 本件抵当権設定契約の締結は会社法上の利益相反取引に該当するか。直接取引(会社法(以下略)356条1項2号)に該当するものではないところ、間接取引(356条1項3号)に該当しないか。

 ⑴ 356条1項3号の趣旨は、取締役が会社の利益の犠牲のもとに、自己または第三者が不当な利益を防止することにある。そこで、「利益が相反する取引」とは外形的客観的に見て、会社の利益の犠牲のもと取締役が利益を得る形でなされた行為か否かで判断する。

 ⑵ EはB社の代表取締役であるところ、Eは同時にC社の平取締役でもある。そのため、Eが本件抵当権設定契約に関わることで、通常C社の利益にはならない抵当権設定契約によって、EがC社の犠牲のもとB社代取としての利益を追求する可能性が客観的に認められる。なお、本件契約はDによりなされたものではあるが、それはEの依頼によるものであり、結論に影響しない。

 ⑶ 以上より、本件抵当権設定契約の締結は間接取引に該当する。

2. もっとも、利益相反取引規制の趣旨は取締役が会社の利益を犠牲にする形で自ら利益を得ることを防ぎ、もって会社の利益を保護する点にある。そうだとすれば、かかる規制に違反した取引の効力は原則として無効であるが、取引の安全との調和の観点より、間接取引の相手方等の第三者との関係ではその者の悪意を証明した場合のみ無効主張することができると考える。よって、本件では、Aが利益相反である点及びそれにつき取締役会決議がないことにつき悪意であれば、本件抵当権設定契約の無効について主張することが可能である。

以上

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