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2024年 憲法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

大阪大学法科大学院2024年 憲法

設問1

1. X1のY市立市民会館使用許可申請に対する不許可処分が、X1の集会の自由を制約するとして憲法21条に反し違憲となるか。

2. 「集会」とは多数人が共通の目的をもって一定の場所に集まることを意味するところ、X1の開催する市営火葬場建設反対運動に抗議する目的をもってY市立市民会館をその開催場所とする本件集会は、憲法21条1項により保障される集会といえる。 
 ここで、反論としてY市立市民会館側はX1の本会館使用許可申請という請求権を否定したに過ぎず、X1の自由権を制約したものではないから、本件自由は21条1項によって保障されるものではないとの主張が考えられる。
 たしかに、集会の自由は元来自由権的な性質しか有しないものの、本来的に国民の集会場所として供されるべきパブリックフォーラム的な性質を有する場所においては、その場所の使用不許可は集会の自由の不当な制限につながるおそれがあり(泉佐野事件参照)、そのような場所の使用を禁止されない自由も集会の自由として保障されると解される。
 そしてY市立市民会館は本来的には国民の集会場所として供されるべき場所であるから、本件申請に対する不許可処分もX1の本件自由に対する不当な制限につながるおそれがあるとして、本件自由は21条1項により保障されることになる。

3. 本件不許可処分によってX1はY市立市民会館で集会することを断念せざるを得なくなっていることから、本件不許可処分は本件自由を制約している。

4. 集会は国民の思想や人格を発展させ、また相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための手段として自己統治の価値を有するから、集会の自由は基本的人権として特に尊重されるべきものである(成田新法事件)。そして、X1は市営火葬場建設反対運動に反対するという意見の発表を目的として、Y市立市民会館で集会をしようとしていることからすれば、本件自由は集会の自由の保障の中核部分に属する自由であり、その重要性は高い。
 また、本件不許可処分に際して、Y市の指定管理者はX1のかかる集会の目的に鑑みて当該集会は暴力沙汰に発展しやすい性格を有していると判断している。このことから、本件不許可処分はX1の本件集会の目的に着目して公権力が恣意的に特定のメッセージの思想の自由市場への流出を阻むものとして違憲の推定が働く。そこで本件不許可処分の要件該当性については厳格に解すべきである。具体的には、「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めるとき」(Y市暴力的集会防止条例)とは国民の生命・身体・財産に対する明らかに差し迫った危険の発生が客観的事実に基づき具体的に予見できる場合であると解する。

5. たしかに、Y市では数年前から、市政に対する抗議運動が過激化する例がたびたび見られ、暴力沙汰にまで発展する事件も散見されるようになっており、警察官が駆けつけて騒ぎを静めなければならない事態も何度かあったものの、これは毎回2、3人という少人数による所業であり抗議運動を行う団体が過激化する事例はなく、これらの騒ぎは事前に警察と連絡をとることなどにより容易に収めることができる。
 また、かかる所業を引き起こした当本人らがX1が開催を予定している上記運動に参加する予定もない。、以上の客観的事実に照らせば、X1の集会はたしかに周辺住民の生命・身体への抽象的な危険の発生は考えられるものの、明らかに差し迫った危険でも、具体的に予見されるものともいえない。

6. 以上より、本件不許可処分にかかる「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めるとき」には当たらず、かかる処分は違憲である。

設問2

1. 本件条例がX2の集会の自由を制約し、21条1項に反し違憲となるか。

2. X2はX1と同様の集会を自らが所有するY市内の空き家で開催することを予定していることから、かかる集会は「集会」にあたり、21条1項によって保障される。

3. 本条例に基づいてY市長は、X2の空き家の使用禁止を命じており、本条例はX2の本件自由を制約している。

4. 上記の通り、集会の自由についての現代的意義並びにX1・X2が企図している集会は意見の発表を目的とする集会の自由の中核的保障に属する集会である点から、その重要性は高い。
 また、たしかに本条例は学校や病院等の周辺で開催される集会に関して一定の制約を課すものに過ぎず、それ以外の場所での集会については何ら制約を課すものではないのだから思想の自由市場への流出を阻むものとはいえず、いわゆる表現内容中立規制として厳格な審査基準を採用するべきではないとも思える。しかし、人数収容の便宜や意見発表の実効性を確保する必要性から、学校や病院等の周辺でしか意見発表の実効性を確保できないような集会にとっては本条例によって集会すること自体を断念せざるを得ない事態に発展しかねない。そして、これによって特定のメッセージが思想の自由市場に流出することが叶わないおそれが認められることから内容規制同様の危険を孕むものといえる。したがって、内容規制同様、違憲の推定が働く。
 以上より、①目的が必要不可欠で②手段が必要最低限度の場合を除き、本件条例は違憲である。

5. 本条例の目的は、過激な集会に起因する暴力沙汰の発生とその波及の防止である。
 そして、上記のとおりY市では数年前から抗議運動が過激化し、暴力沙汰にまで発展する事件が散見されるようになっていることから、集会の周辺住民に対する生命身体という重要な利益の保護を究極目的とする本条例の目的は必要不可欠なものといえる(①)。
 しかし、本条例では集会施設の所有者が過去の集会時の暴力行為で有罪判決を受けている場合に限り、使用禁止命令をすることができると規定しているところ、集会施設の所有者が過去に上記のような有罪判決を受けているからといって、かかる集会の性質が過激な集会であると断定することは合理的ではない。また、このような所有者に限って集会への参加を禁ずることによってもその者が集会の中心となって集会が過激化することを防止することができ、本条例の目的達成を促進できることから他の選びうる手段が存在する。
 したがって、手段が必要最小限度とはいえない(②不充足)。

6. 以上より、本条例は違憲である。            

以上

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