6/26/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
大阪大学法科大学院2025年 憲法
1. Aの考え
Aの裁判所は本件処分の当否を司法審査の対象から除外すべきであるという考え方は、旧判例に基づくものである。その根拠は以下のとおりである。
司法権とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用であるが、かかる司法権には限界がある。具体的には、自律的な法規範を持つ社会ないし団体においては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも司法審査の対象とするのが適当でないものがある。
これを本件についてみると、地方議会はその施策を住民の意思に基づいて行うべきものとする住民自治の原則を採用しており、地方議会は憲法にその設置の根拠を有する議事機関(憲法93条1項)として、住民の代表である議員により構成され、所定の重要事項について当該地方公共団体の意思を決定するなどの権能を有する。そして、議会の運営に関する事項については、議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく、その性質上、議会の自律的な権能が尊重されるべきである。そこで、確かに地方議員の除名処分は議員の身分の喪失に関する重大事項であり、単なる内部規律の問題にとどまらないといえるものの、地方議員の出席停止は議員の権利行使の一時的制限にすぎないものであるから当該自治団体の自治的措置に委ねるのが適当であり、司法審査の対象から除外すべきである。
2. Xの考え
Xの裁判所は本件処分の当否を司法審査の対象に含めるべきという考え方は、新判例に基づくものである。その根拠は以下である。
司法権の定義とその限界、地方議会の自治権については上述の通りであるが、地方議会の議員は当該地方公共団体の住民の投票により選挙され(憲法93条2項)、議会に議案を提出することができ、議会の議事については出席議員の過半数でこれを決することができ、住民の代表としてその意思を当該地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負う。出席停止の懲罰は、これが科されると当該議員はその期間、会議及び委員会への出席が停止され、議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる。このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。よって、地方議員の出席停止は司法審査の対象に含めるべきである。
3. 現下の裁判所は本件処分の当否を司法審査の対象とすべきか
新判例は、旧判例を判例変更し、地方議員の出席停止を司法審査の対象に含めるべきとしている。よって、現下の裁判所は本件処分の当否を司法審査の対象とすべきである。
以上