11/20/2023
The Law School Times【ロー入試参考答案】
慶應義塾大学法科大学院2021年 刑事訴訟法
第1 設問1
憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項
第2 設問2
自白はそれだけで有罪であることの心証を与えることできるほど強力な証拠である。したがって、自白偏重による誤判の危険性も高く、補強法則はそれを防止する趣旨である。また、自白獲得のために違法な取り調べが行われかねないので、かかる違法な取り調べを防止するとともに、自白以外の証拠の収集を行わせる趣旨もある。
第3 設問3
1. ①の供述は、建造物侵入及び窃盗事件を自己がおこなったこと認める供述であって、自白に該当する。したがって、②③④がかかる自白の補強証拠となるかが問題となる。
2. まず、証拠②③④が補強証拠適格を備えているか。これについて、❶厳格な証明に要求される資格(証拠能力を備え、適式の証拠調べを経ること)❷自白からの独立性で判断すべきところ、❶については設問上要求されていないため、❷について検討する。本問では、証拠②③④は被告人の供述証拠ではないため、自白から実質的に独立しているため(❷充足)、補強証拠適格を備えている。
3. そして、補強が必要な範囲と程度につき、自白の真実性を担保するに足りる範囲でよいと解するべきである。
本問では、窃盗罪につき、②のパソコン販売についての証拠、④の被害届によって、窃盗の客観的構成要件要素たる「他人の財物」の「窃取」をXが行ったことが推認できる。また、住居侵入罪につき、③のようにXの指紋がないものの、④の被害届により、窃取されたパソコンが甲大学に存在していたことから、Xによる管理者の意に反した立ち入り、すなわち「侵入」があったことが推認できる。よって、自白の真実性が担保されているといえる。
4. 以上により、住居侵入・窃盗の控訴事実で有罪とすることは認められる。
第4 設問4
1. 検察官は、訴因の追加(312条1項)をするべきである。これが認められるか。
2. 訴因変更制度とは、一個の訴訟手続の中で解決を図るべき範囲の問題であり、一事不再理効による再訴禁止の範囲と統一的に理解すべきである。そうであるとすれば、両訴因間の事実の共通性を前提にして、訴因を比較すれば、両訴因が別訴において共に有罪とされるとしたら二重処罰になる関係にある場合には「公訴事実の同一性」が認められると解する。すなわち、「公訴事実の同一性」の判断は、公訴事実の単一性及び狭義の同一性で判断し、後者については、基礎的事実の共通性があるかを、変更前後の非両立性を補助的に加味しつつ検討する。
3. 本問では、検察官は盗品等有償処分あっせん罪を、予備的に追加するものと考えられる。本問では、窃盗の正犯による盗品の処分行為は不可罰的事後行為に当たるから、単一性が認められる。そして、法益侵害が甲大学のパソコンと言う財物に対するものである点で共通しており、その日時も同日であり、港区と品川区という近接した場所で行われていることから、狭義の同一性も認められる。そして、窃盗罪の成立が認められる場合に盗品等有償処分あっせん罪は不可罰的事後行為となり、犯罪が成立しないため、非両立関係にもある。
4. したがって、検察官はかかる訴因の追加をするべきである。
以上