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2021年 憲法 筑波大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 憲法 筑波大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/26/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

筑波大学法科大学院2021年 憲法

1. 営業の自由(憲法22条1項)

⑴ 改正法は、外食営業禁止地域の外食業者の営業の自由(憲法22条1項)を不当に侵害し、違憲無効ではないか。

⑵ 職業は、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己の持つ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有する。このような職業の性格と意義に照らすと、職業の遂行自体も保障すべきである。したがって、憲法22条1項は、職業「選択」の自由のみならず、職業活動の自由も保障していると解する。
 よって、外食営業禁止地域で外食業者が営業する自由は、職業活動の自由として保障される。

⑶ そして、改正法は、行政庁が一定地域につき外食営業を禁ずる命令を発することができるとしており、一定地域における職業活動の自由が制約されている。

⑷ 職業は、上述のように、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、公権力による規制の要請が強い。また、職業の種類等、職業の規制目的、方法等も様々である。そこで、規制措置の憲法22条1項適合性は、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較衡量した上で慎重に決定すべきである。また、この比較衡量を行うのは第一次的には立法府であるから、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められるのであれば、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性に係る立法府の判断が上記の合理的裁量の範囲にとどまる限り、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきである。さらに、この合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるため、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきである。そして、立法府の合理的裁量の範囲の検討に当たっては、許可制などのように、職業活動の自由を制約するにとどまらず、職業選択の自由をも制約するものであり、消極的、警察的措置である場合などには、立法府の合理的裁量の範囲は狭くなると解されるが、職業選択の自由そのものに制約を課すものではなく、職業活動の自由に一定の制約を課すにとどまる場合には、これが消極的、警察的措置であったとしても、直ちに立法府の裁量の幅が狭くなるものではないと解する。
 改正法は、感染拡大防止のために外食営業を禁止するところ、これは国民の生命・安全を確保するための規制であり、消極目的の規制といえる。この目的が公共の福祉に合致することは明らかであるところ、当該目的のためにどのような規制措置が適切妥当であるかについては専門技術的な判断を必要とするため、立法府の裁量を尊重すべき程度が大きい。そして、改正法は、飛沫感染の契機となりうる外食営業に限定して禁止し、持ち帰りのための飲食物の提供は可能である点で職業選択の自由そのものに制約を課す許可制等とは異なり、職業活動の内容及び態様に一定の制約を課すにとどまる。したがって、本件において、立法府の合理的裁量の範囲を狭く解すべき事情は見当たらず、立法府の合理的裁量の範囲は広いといえ、裁判所は基本的にはその裁量的判断を尊重すべきものといえる。
 そこで、改正法については、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が、その政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であることが明白な場合でない限り、憲法22条1項の規定に違反するものということはできないと解すべきである。
 改正法は、Aウイルス感染拡大を防止するための措置として、行政庁が一定地域につき外食営業を禁ずる命令を発することができるとすることから、重要な公共の利益のための規制だといえる。そして、未だほとんどの人々が免疫を獲得しておらず、有効なワクチンも開発されていないAウイルスに感染したことによる疾病で、日本でも多くの人々が死亡する事態に至っていること、Aウイルスは、微細飛沫の飛散等により感染を広げるが、空気感染はしないため、感染拡大防止のためにはマスクが有効であるところ、食事の際はマスクをつけないため外食が感染の機会となりうることからすると、感染拡大の状況に応じて外食営業を規制する必要性は認められる。また、改正法は飲食店の営業を全面的に禁止するものではなく、外食営業のみが禁止され、持ち帰りのための飲食物の提供は禁止されないことからすると、命令に違反した者には罰金または科料を科すこととされていることを考慮しても、規制の合理性は認められる。以上からすると、改正法について、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が、その政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるということはできない。
 したがって、改正法は憲法22条1項に違反しない。

2. 損失保障(憲法29条3項)

⑴改正法及び関連法において営業禁止期間中の経済的損失を補償する旨の規定がないことから、憲法29条3項に違反し違憲無効ではないか。

⑵「私有財産は、正当な補償のもとに、これを公共のために用いることができる」(憲法29条3項)とされる趣旨は、社会公共の利益のために個人が被った特別の犠牲を国民の一般的負担に転化させることにある。そこで、「補償」が必要な場合とは財産権に対して特別の犠牲を課す場合であり、侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度を超えて財産権の本質的内容を侵すほど強度のものであるときに、特別の犠牲が認められると解する。その判断においては、規制目的、侵害行為の個別性、侵害の強度、財産権の性質・価値を考慮する。
 規制目的は消極目的であり、一定地域における飲食店に対して広く一般に適用され、外食営業のみが規制されることからすると、侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度を超えて財産権の本質的内容を侵すほど強度のものであるとまではいえない。したがって、特別の犠牲は認められない。

⑶ 仮に、特別の犠牲が認められるにもかかわらず、改正法等において損失補償が定められていない場合、憲法が保障する損失保障請求権を侵害するものとして、憲法29条3項に違反するとも思える。しかし、改正法等に損失補償規定が存在しないとしても、それが一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されない場合には、直接憲法29条3項を根拠にして補償請求をする余地があるため、憲法29条3項には違反しないと解する。
 改正法等において、特別の犠牲があるにもかかわらず一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されないから、損失補償規定がないことをもって憲法29条3項に違反するとはいえない。

⑷ したがって、改正法等において損失補償規定がないとしても、憲法29条3項には違反しない。

以上

 

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