6/29/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2024年 民事訴訟法
設問1
1. XのYに対する甲建物所有権の確認を求める訴えは適法か。確認の利益の判断基準が問題となる。
⑴確認の訴えは、確認対象が無限定となるおそれがあり、また、確認判決は執行力を有しないため、確認の訴えの利益は、真に紛争解決の必要性・実効性が認められる場合に限定する必要がある。
そこで、確認の利益は、紛争解決の実効性の観点から、①対象選択の適否、②即時確定の利益の有無、③方法選択の適否により判断されると考える。
⑵①について、訴訟物はXのYに対する甲建物の所有権であり、自己の現在の、権利・法律関係の、積極的確認請求である。そのため、対象は適切である(①)。
②について、Yは甲建物の所有権の存否を争い、Y名義の登記を有することから、Xの甲建物の所有権に対する危険ないし不安が生じており、これの除去のため確認判決を得ることが必要・適切であるといえる。そのため、本件訴訟には即時確定の利益が認められる(②)。
➂について、XはYに対して所有権に基づく明渡請求・登記抹消請求などの給付請求が可能であり、かかる訴えは所有権確認の訴えと異なり執行力を有するから紛争解決の実行性が高い。他方で、所有権確認の訴えと異なり、所有権に基づく明渡請求・登記抹消請求では、判断理由中の判断であるXの甲建物の所有権の存否について、既判力(民事訴訟法(以下略)114条1項)が生じないという難点がある。そのため、所有権確認の訴えを提起するほうが、甲建物の権利関係についての紛争を抜本的に解決しうる。特に本件ではYが甲建物の所有権を主張しており、Xの所有権に基づく明渡請求権・登記抹消請求権のみならず所有権自体の存否について判断をする必要性が高い。したがって、方法選択も適切である(③)。
⑶したがって、上記訴えに確認の利益が認められる。
2. よって、上記訴えは適法である。
設問2について
1. 中間確認の訴え(145条)は、それによって拡張された請求とそれまで継続していた請求とは、単純併合(136条)の形で併合され審判される。単純併合については、裁判所は口頭弁論を分離することができる(152条1項)。しかし、同時に係属している複数の訴訟について、①争点が共通する場合には、弁論を併合して行う方が当事者の負担が少なく、また、訴訟経済の観点からも望ましい。さらに、②弁論を分離すると、事実上判断が矛盾抵触するおそれがある場合には、紛争の一本的解決の観点から、弁論の分離を禁止するべきである。以上から、①②の観点から、弁論の分離が禁止されるかを判断する。
2. ①について、本件訴えと本件の中間確認の訴えの主たる争点は、いずれもXの甲建物の所有権の存否であり、共通する。
②について、本件訴えと本件の中間確認の訴えの弁論が分離され、本件訴えについてXの明渡請求が認められる一方で、本件の中間確認の訴えが棄却されると、事実上、Xの甲建物の所有権の存否の判断が矛盾抵触する。
3. 以上から、本件訴えと、本件の中間確認の訴えの弁論を分離することは許されない。
以上