広告画像
2025年 商法 早稲田大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2025年 商法 早稲田大学法科大学院【ロー入試参考答案】

3/24/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

早稲田大学法科大学院2025年 商法

1. 手続き規定について

⑴①の手続きについて

ア まず、相続人等に対する売渡請求(174条)は、譲渡制限株式についてしか出来ない。甲株式会社(以下「甲社」という。)は、現在、東京証券取引所のグロース市場に上場しているため、公開会社であるから、上記の請求を行うことは、定款の定めがあったとしても行うことはできない。

イ 次に、①の場合、会社法156条1項の決定内容として、特定の株主から株式を買い取ることの決定及び当該株主への通知又は公告をすることになるが、これについては、株主総会の特別決議による必要があり(160条1項、309条2項2号)、かつ当該特定の株主は、当該決議において議決権を行使することができない(160条4項)。さらに、他の株主は会社に対し、自己の株式の取得議案に自分も売主として加えるように請求することができる(160条3項、会社法施行規則29条)。

ウ 「株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合」には、160条2項及び3項の規定が適用されない(162条本文)結果、自己株式の取得を取締役会で決定できるし、158条による株主への通知または公告も不要である。
 しかし、本件において、甲株式会社(以下「甲社」という。)は、現在、東京証券取引所のグロース市場に上場しているため、公開会社である。したがって、上記の規定の適用除外はされない(162条1号)。
 また、市場価格のある株式を市場価格以下の価格で取得する場合(161条、会則30条)も、これらの規制の適用が除外されているものの、①は市場価格を上回る価格による取得が予定されているため、これにも該当しない。

⑵②の手続きについて
 ②の場合、既述した会社法157条から160条までの手続き規定が適用されない(165条1項)結果、自己株式の取得を取締役会で決定できるし、158条による株主への通知または公告も不要である。

2. メリット・リスク

⑴①について
 ①の場合は、手続き的ハードルが高く、迅速にDからの株式の取得は出来ない。また、①については、そもそもDとの合意が取れないというリスクは内在している。また、160条3項によって、Dの他の株主から、追加請求がされた場合には、D以外の株主からも自己株式の取得をしなければならないというリスクもある。
 決議に関するリスクとしては、①ではDが株式総会に参加できないとはいえ、BD間が親族関係であることに着目すると、Aとの関係で「著しく不当な決議」(831条1項3号)として決議が取り消されるリスクも想定できる。

⑵②について
 ②の場合は手続き的ハードルが低く、迅速かつ確実性のある自己株式の取得ができるというメリットがある。他方で、株主総会を経ないことから、経営判断の透明性を確保できないというリスクがある。

3. 財源規制違反について
 ①②の自己株式の取得はいずれも、461条1項2号、3号により、分配可能額を超えてはいけない。
 そして、分配可能額を超える自己株式の取得は、「効力が生じた日」(463条1項)の文言にもかかわらず、無効となる。なぜなら、無効と解しても、462条1項により不当利得返還義務同士の同時履行関係が排斥されると考えれば不都合はないからである。
 したがって、財源法規制に違反する場合には、自己株式の取得が無効となってしまうというリスクがある。
 また、自己株式取得に関する取締役の責任として、①462条1項に基づく責任、②465条1項2号3号に基づく期末の欠損責任及び③423条1項、429条に基づく任務懈怠責任が考えられる。特に①は市場価格を上回る価格による取得を予定しているため、財源規制違反となる可能性が②より高い。

                                             以上




おすすめ記事

ページタイトル
ロースクール

【最新版】ロースクール入試ハンドブック公開!全34校の説明会/出願/試験日程・入試科目・過去問リンクが一冊に!【2026年度入学者向け】

#ロースクール
ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】