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2022年 憲法 筑波大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 憲法 筑波大学法科大学院【ロー入試参考答案】

12/28/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

筑波大学法科大学院2022年 憲法

1. Xは、本件検索結果が、本件事実という個人のプライバシーに属する事実を本人の同意なく公表するものであり、プライバシーを侵害するとして、人格権ないし人格的利益(憲法13条)に基づき、本件検索結果の削除を求める仮処分命令の申立てをすることが考えられる。
 前科等は人の名誉・信用に直接かかわる事項であるから、プライバシーに属する事実であり、これをみだりに公表されない利益は、法的保護に値する利益であるといえる。本件事実は、前科等にかかわる事実であり、プライバシーに属する事実であるから、本件事実をみだりに公表されない利益は、法的保護に値する利益である。

2. そして、検索事業者による検索結果の提供行為は、プライバシーを侵害する記事が掲載されているサイトに、氏名等を検索することにより簡単にアクセスできるようにすることで、プライバシー侵害を招来させるという側面がある。
 もっとも、検索エンジンの情報処理手順は、検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように設計作成されたものであるから、検索事業者による検索結果の提供行為は、検索事業者自身の表現行為(憲法21条1項)といえる。また、検索事業者による検索結果の提供は、現代社会において、インターネット上の情報通信の基盤として大きな役割を果たしており、インターネットの利用者の知る権利を実効化する機能を持つ。
 このような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると、検索事業者による検索結果の提供行為がプライバシーを侵害して違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該U R L等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する情報が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、記事等の目的や意義、記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該U R L等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較考量して判断すべきであり、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該U R L等情報を検索結果から削除することを求めることができると解すべきである。

3. 本件事実は、児童売春により罰金刑に科せられた事実であり、他人にみだりに知られたくないプライバシーに属する事実であるものの、児童売春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また、本件検索結果は、Xの居住する県の名称及び同人の氏名を条件として検索した場合に提供されるにすぎず、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。これらの事情からすると、Xが本件事実につき深く反省し、その後は妻子とともに生活し、犯罪を犯すことなく民間企業で働いているという事情を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。
 したがって、XのYに対する本件検索結果の削除を求める仮処分申立ては認められない。

以上

*出題趣旨は、「憲法21条1項に直接照らして憲法判断する場合」について明示的に言及しており、これは表現の自由について保護範囲、制約、正当化(違憲審査基準)で書く答案を想定しているものと思われるが、それ以外の書き方(判例が採用する比較衡量)を排斥するものではないと考え、比較衡量で書いた。

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