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2022年 民法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】

10/17/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

大阪大学法科大学院2022年 民法

第1問

設問1

Cは過失相殺(722条2項)による賠償額の減額を主張することが考えられる。通行量の多い道路側のドアから降車すれば車等と衝突することが予測できたが、Aは周囲の確認を怠り、BもAに対する指示や周囲の確認を怠ったため、AはCの運転する自転車と衝突した。自己危険回避義務を課すには事理弁識能力があれば足り責任能力を要しないため、Aが9歳であった場合、Cの主張は認められる。また、Aが4歳であった場合でも、損害の公平な分担という過失相殺の趣旨から、Aと身分上・生活上の一体の関係にあるBの過失を考慮できるため、Cの主張が認められる。

設問2

1. Bは、甲につき抵当権の設定を受けている。乙は、甲から取り外すことが容易であり、甲との物理的一体性は認められないものの、甲の担保価値を高めており、甲との経済的一体性が認められる。そのため、乙は甲に「付加して一体となっている物」にあたり、甲に対する抵当権が乙に及ぶ(370条)。

2.(1)について、Bは、乙に対する強制執行において、配当を受けることはできない一方(民事執行法87条1項4号参照)、これにより甲の担保価値が毀損されることから、第三者異議の訴えを提起できる(同38条)。

3. (2)について、Aによる乙の分離・搬出は通常の使用の範囲外であるため、乙は甲の付加一体物としての性質は失わず、なお甲の抵当権の効力が及ぶ。そのため、Dに乙の即時取得(192条)が成立しない限り、Bは、Dに対し、抵当権に基づく妨害排除請求権に基づき、乙に甲を戻すよう請求できる。

第2問

設問1

1. XのYに対する代金減額請求(563条1項)は認められるか。 

2. 代金減額請求が認められるには、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」こと(562条1項)が必要である。
 2021年3月にXY間で甲の売買契約(555条)が締結され(以下、本件契約)、本件契約に基づき、同年7月にYは甲をXに引き渡しているため、甲は「引き渡された目的物」にあたる。
 そして、本件では土地の面積という数量についての契約不適合性が問題となるが、数量に関する契約不適合性の判断は、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、一定の面積、容積、重量、員数又は尺度があることを売り主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められているか否かで決すべきである。
 本件をみるに、本件契約の締結にあたり、Xは、Yに対し、スポーツクラブの施設を建てるための土地を探していること、施設には25メートルの標準サイズのプールを敷設できることが重要であることを伝えており、Xが目的物の面積を重視していたことが表示されている。また、Yは、Xに対し、測量図と登記を示して甲の登記簿上の面積は測量図の面積と一致し200坪であると説明しており、XYともに甲が200坪であると認識していたものと考えられる。そして、本件契約における甲の売却価格1億円は、1坪あたりを99万円として甲の面積を基礎に計算されている。以上から、本件契約の目的物は200坪の甲であり、甲が200坪であることは本件契約の「内容」と認められる。
 しかし、甲の実際の面積は180坪であり、計画どおりのスポーツクラブの施設を用の上に建設することができず、施設を建設するとしても、25メートルのプールを施設内に設けることはできないことから、甲は「数量」に関して本件契約の「内容に適合しない」ものと認められる。

3. Yによる「履行の追完」は「不能」である(563条2項1号)。また、甲の契約不適合は、Xの「責めに帰すべき事由によるもの」ではない(同条3項)。

4. 代金減額請求権は形成権であるため、行使の意思表示を要するところ、Xは2021年9月にYに対して代金の減額を主張している。

5. よって、Xの主張は認められる。

設問2

1. Xの請求は契約不適合に基づく損害賠償請求(564条、415条1項)である。かかる請求は認められるか。 

2. 契約不適合に基づく損害賠償請求権の発生要件は、① 契約の締結、② ①に基づく目的物の引渡し、③ ②の目的物が契約の内容に適合しないこと、④「損害」の発生・額、⑤ ③と④の因果関係である。前述の通り、XY間で本件契約が締結され(①充足)、Yは本件契約に基づき甲を引き渡したが(②充足)、甲は本件契約の内容に適合しないものであった(③充足)。そして、これによりプール設備を欠くことによる経営の減収が生じた場合には、その減収分は「損害」にあたる(④充足)。

3. もっとも、上記損害は、Xがプール設備のないスポーツクラブ施設を甲の上に建設して経営を開始したという「特別の事情によって生じた損害」(416条2項)であるため、賠償範囲に含まれるか、すなわち因果関係が認められるかが問題となる。
 「特別の事情によって生じた損害」が損害賠償の範囲に含まれるには、債務者が「その事情を予見すべきであった」ことを要する。
 本件契約の締結にあたって、Xは、Yに対し、プール付きのスポーツ施設を甲の上に建設することを説明していたことから、Xがプール設備のないスポーツクラブ施設を甲の上に建設して経営を開始したという特別の事情を予見することができた。そして、スポーツクラブ施設の敷地の売買を目的とする本件契約の趣旨からすると、Yは、上記事情を「予見すべきであった」といえる。
 したがって、プール設備を欠くことによる経営の減収分も因果関係が認められ損害賠償の範囲に含まれる(⑤充足)。

4. よって、Xによるプール設備を欠くことによる経営の減収による損害の賠償請求は認められる。

以上

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