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2025年 商法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 商法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2025年 商法

(1)について

1. Q銀行はP社に対して、貸し付けた300万円の返済を請求することができるか。

⑴代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を有しており、代表取締役であるAのQ銀行からの300万円の借り入れ行為は、原則有効である(349条4項)。
 しかし、本件では、P社の取締役会規則には、200万円を超える取引を行うには取締役会の承認が必要である旨が定められていた。Aの上記行為は、取締役会の承認を得ずに行っているため内規違反しているから、無権代理行為として無効なのが原則であるが、349条5項により、Q銀行が善意であれば有効である。

2. したがって、Q銀行が、取締役の権限が制限されていることについて善意であれば、本件取引は有効となり、300万円の返済を請求することができる。

(2)について

1. P社がQ銀行に対して、300万円の返済を免れない場合、P社はA、B、Cに対して、Aが費消した300万円を「損害」として損害賠償請求することはできるか(423条1項)。

⑴会社に対する任務懈怠責任の要件は①「役員等」②任務懈怠③損害の発生と数額④任務懈怠と損害との因果関係⑤428条の反対解釈より帰責性である。

ア Aは、代表取締役、B、Cは取締役であるから、いずれも「役員等」(423条1項)にあたる(①)。

イ (ア)Aに任務懈怠は認められるか。
 本件でAは300万円を、P社のためではなく、自己の遊興費として使用している。そのため、Aは300万円を会社のために使用すべきという善管注意義務を負っていたにも関わらず、自己の利益を図る目的で費消していることから、かかる費消行為は、会社法330条、民法644条に反する。よって、任務懈怠が認められる。

(イ)Bの任務懈怠について、取締役会は個々の取締役の職務執行を監督する義務を負うところ(362条2項2号)、取締役会は取締役で組織される(362条1項)ため、取締役は他の取締役の業務執行について監視監督義務を負う。また、取締役会は取締役によって招集されるのであるから(366条1項)監視監督義務の範囲は取締役会の上程された範囲に限られない。
 本件で、取締役Bは、監視監督義務を負っているところ、Aの上記費消行為について職務上の注意を尽くしたもののそのことには気づかなかった。そのため、任務懈怠は認められないとも思える。もっとも、Aが無断で借り入れを行おうとしていることについて何の対策も取らずにこれを放置した。そのため、Bは、Aが内規違反の借り入れを行うことについて、監視監督義務があったにもかかわらず、これを放置した。
 よってBについても任務懈怠が認められる。

(ウ)Cの任務懈怠については、Aの独断行為に全く気付かず、気付かなかったことは不注意によるものではなかった。そのため、監督義務違反はなく、任務懈怠は認められない。

ウ そして、P社は、Aが自己費消した300万円を返済しなければらないため、300万円という損害が発生している(③)。

エ 因果関係について、Aの上記費消行為という任務懈怠行為によって、P社は、300万円の損害を負っているため、Aの行為と損害の間に因果関係は認められる(④)。
 もっとも、Bの監督義務については、Aの借り入れ行為について監督義務をつくしていたとしても、Aの費消行為について気付くことはできないため、Bの監督義務には損害との間の因果関係は認められない。

オ そして、Aについて、帰責性についても当然に認められる(⑤)。

2. 以上より、Aのみ、P社に対し、423条1項の任務懈怠責任を負う。

(3)について

1. Dは、AのP社に対する責任(423条1項)を株主代表訴訟により追及することができるか(847条)。

⑴P社は非公開会社であるから「株主」(847条2項、1項)であれば、訴えを提起することができる。本件でDは、P社の株式を保有するため「株主」にあたる。

⑵Dは「株式会社」であるP社に対して、「役員等」(423条1項)である代表取締役AのP社に対する責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
 また、P社が、Dによる請求から60日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合、Dが訴えを提起することができる(847条3項)。

⑶そして、上記の通り、AはP社に対し423条1項の責任を負うが、847条1項の「責任」に含まれるか。
 847条の趣旨は会社と役員の間での馴れ合いによる訴訟懈怠の防止にある。そして、少なくとも423条のような会社法上の法定責任についてはかかる趣旨が妥当する。そのため「責任」には423条による損害賠償責任も含まれると考えられる。

2. よって、Dは株主代表訴訟による責任追及をすることができる。

以上

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