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2025年 商法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 商法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

6/23/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2025年 商法

第1問⑴

1. Q社はSに対し、譲渡の承認がされていないことを理由に本件売買契約が無効であるとして、代金の返還を請求する。

⑴まず、P社は非公開会社(2条17号)であるから、株式の譲渡につきP社の承認が必要である(139条1項)。P社は取締役会設置会社であるから、承認機関は取締役会である。
 P社では本件売買契約につき、取締役会決議による承認がなされていないから、承認なき株式譲渡の効力が問題となる。
 定款による譲渡制限の目的は会社の閉鎖性維持にあることから、取締役会決議を欠く株式譲渡は、少なくとも会社に対する関係では無効と解する。
 一方、会社経営にとって好ましくない者が株主となるのを阻止するという139条の趣旨は、会社との関係でのみ譲渡の効力を否定すれば達成される。譲受人からの承認請求を認める137条1項や138条2号も、当事者間においては有効であることを前提としている。そこで、会社との関係では無効だが、当事者間では有効であると解する。

⑵よって、Q社はSに対し、本件売買契約が無効であると主張することはできない。

2. 次に、Q社は本件売買契約がQ社の取締役会決議と株主総会決議を欠いているから、そのような取引は無効であるとして、代金の返還を請求する。
 Q社の取締役会規則によると、2000万円以上の財産の処分・譲受けは取締役会承認事項である。
 したがって、取締役会の決議を経ることなく、本件株式を3000万円で買い取った行為は、会社内部の制限に反しているため、無権代理行為にあたり、本人たるQ者に効果帰属しないのが原則である。そのため、原則として、Q社の請求は認められる。
 もっとも、349条5項により、Sが善意の場合には、Q社は内規の存在を対抗できないから、Q社の請求は認められない。。

3. また、Q社の行った本件売買契約が「重要な財産の処分」(362条4項1号)にあたり、取締役会決議の承認を経ていないか取引が無効であるとして、代金の返還をすることも考えられる。

⑴「重要」か否かは、当該財産の額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様、従来の取り扱い等を総合的に考慮して判断する。
 Q社の総資産は3億円で、資本金が2億円なので、3000万円の取引は重要とはいえないとも思える。しかし、営業利益が2000万円であるから、3000万円の取引は高額であるといえる。また、取締役会規則には2000万円以上の財産の処分・譲受けは取締役会承認事項であり、このような運用からしても、本件売買契約のQ社に対する影響の大きさが看取できる。
 したがって、本件売買契約は「重要な財産の処分及び譲受」といえる。

⑵そして、取締役会決議の承認を得ていない。

⑶取締役会決議は、会社内部における意思決定の重要な一要素にすぎず、取引の相手方は決議の有無を容易には知り得ないから、取引の安全を重視すべきである。そこで、原則有効と解する。ただし、相手方が取締役会決議を経ていないことを知り、又は、知らないことに過失がある場合、会社財産の保護を優先すべきなので、民法93条1項但書を類推適用し、取引は無効となると解する。

⑷以上より、SがQ社の取締役会決議の欠缺について悪意・有過失である場合には、本件売買契約の効力は否定され、その場合には代金の返還請求が認められる。

第1問⑵

1.Bが行った自己株式の取得は財源規制違反として、無効でないか。
 P社のその他資本剰余金は0円、その他利益剰余金は3000万円であるから、Q社から自己株式を4500万円で買取ることは、461条1項3号に反する。

2. では、財源規制に違反した自己株式の取得の効果をいかに考えるべきか。明文がなく問題となる。
 財源規制違反の自己株式取得を決定した株主総会決議は、決議内容の法令違反(830条2項)に当たり無効であり、取得手続きにおける重大な違法がある。また、これを有効とすれば、もはや会社債権者は保護できない。そこで、財源規制違反がある場合には、自己株式取得は無効と解する。

3. では、財源規制違反の場合にかかる取引を行った役員はいかなる責任を負うか。P社はBに対して、任務懈怠責任(423条1項)を追及すると考えられる。

⑴Bは、「取締役」であり、本件買取りには、財源規制違反があり、Bには「法令」違反(355条)の任務懈怠がある。また、これについて「責めに帰することができない事由」(428条1項)も認められない。

⑵そして、「損害」を、自己株式の取得価額と売却価額との差額とみると、会社が株式を売却していない場合に損害を算定できない支障がある。そこで、原則として、取得価額と取得時の時価との差額及び売却価額と売却時の時価との差額の合計であると解する。よって、これらを計算した額を「損害」と解すべきである。

4. したがって、Bは423条に基づき、前期金額につき賠償責任を負う。

第2問⑴

1. BはQ社に対して、847条、120条3項に基づき利益の返還請求をする。

2. その前提として、P社が株主BのためにQ社に1億円を支払った行為(以下、「本件行為」)が、利益供与(120条1項)にあたるか検討する。

⑴甲は、反社会的勢力と関係のある会社に株式を譲渡されたくなければ、Q社から商品αを1億円で買い取るよう要求しているから、Q社に2億円を支払えば甲が株主であるという意味で「株主の権利の行使に関し」といえる。

⑵そして、実際に1億円を口座に振込んでいるから、株式会社の計算において「財産上の利益の供与」をしたといえる。

⑶よって、本件行為は利益供与にあたる。

3. そして、Q社は1億円の払込を受けているから、「当該利益の供与を受けた者」といえる。したがって、BのQ社に対する請求は認められる。

第2問⑵ 略

以上


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