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2021年 民法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 民法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/20/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

慶應義塾大学法科大学院2021年 民法

第1 設問1

1. BはAに対し、本件請負契約(632条)について、契約不適合責任に基づく追完請求(559条、562条1項)として適切な設置を求めることができるか。

 ⑴ 契約不適合責任に基づく追完請求の要件は、①目的物の引き渡し②種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと である。

 ⑵ 本問では、Aは本件請負契約に基づいて本件機械を制作し、2020年8月17日にα工場に設置した。よって、目的物の引き渡しがあったと言える(①充足)。そして、修理業社Cの報告によると、設置に不備があることで、異常振動および異常音が生じていることが判明している。本件請負契約は、本件機械の適切な設置までもがその契約内容となっていると解すべきであるため、不適切な設置がなされているかかる履行は、品質に関して(②充足)契約内容に適合していない(③充足)。

 ⑶ なお、不適合が買主Aの責めに帰すべき事由であること(562条2項)について、BはAの操作ミスによる故障を疑ってはいるが、予想に過ぎず、これを肯定すべき事情もない。

 ⑷ 以上により、Aの契約不適合責任に基づく追完請求として適切な設置を求めることができる。

2. BはAに対し、本件請負契約について、契約不適合責任に基づく代金減額請求(559条、563条2項2号)をすることができるか。

 ⑴ 代金減額請求は、追完請求に対して追完がなされなかった場合に認められるところ、563条2項各号該当事由があれば、Bとしては直ちに形成権としての代金減額請求を取得でき、救済に資するため、これを検討すべきである。

 ⑵ AはBに対して修理であれば有償となる旨を伝えている。かかる意思表示は確定的な意思表示と捉えることができるため、「履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した」といえる。

 ⑶ したがって、Bの契約不適合責任に基づく代金減額請求は認められない。

3. BはAに対し、本件請負契約について、契約不適合責任に基づく損害賠償請求(559条、564条、415条1項)として、500万円の支払い請求が認められるか。

 ⑴ かかる請求の要件は、①債務の本旨に従った履行の不存在②損害の発生③①と②の因果関係 である。

 ⑵ 本問では、既述の通り、本件機械の設置について債務の本旨に従った履行がなく(①充足)、Bは機械の再設置代200万円及び、本件機械の稼働停止による10日あたり300万円の営業損失の合計500万円の損害が生じている(②充足)。
   ①と②の因果関係について検討する。本問において、Aは産業機械の製造販売をする会社であり、Bは電子部品の製造販売を業とする会社である。そして、本件機械を用いて電子部品を制作することが予定されていた。そのため、本件設置の不備を原因とする同機械の稼働停止によって生じた300万円の営業損失は、「通常生ずべき損害」(416条1項)として認められるべきである。また、再設置費用の200万円については、本件機械の設置不備によって直接生じる損害であるから、これも「通常生ずべき損害」(416条1項)として認められる。したがって、①と②に因果関係が認められる(③充足)。そして、本件機械の設置はBが行っており、その時の設置のバランスが適切でなかったことから上記の損害が生じているため、「債務者の責めに帰することができない事由」によるものではない。

 ⑶ 以上により、Bは契約不適合責任に基づく損害賠償請求として、500万円の支払い請求が認められる。

5. BはAに対し、本件請負契約の解除(559条、564条、541条)ができるか。

 ⑴ 催告による解除の要件は、①債務不履行②履行の催告③催告後相当な期間履行がないこと である。

 ⑵ 本問では、既述のとおり債務不履行の事実が存在する(①)。よって、Bが履行催告をし、相当な期間履行がなければ、解除が認められる。

 ⑶ そして、前述のとおり、履行の追完の拒絶する意思を明示しているため、542条1項2号に基づく無催告解除も認められる。

第2 設問2

1. DはBに対して、賃貸借契約に基づく修繕請求(606条1項)として本件機械の修理請求ができるか。

 ⑴ かかる請求の要件は、①賃貸人に対する請求②修繕の必要性 である。

 ⑵ 本問では、DとBは本件賃貸借契約を締結しており、Bは賃貸人にあたる(①充足)。そして、本件機械はα工場の稼働に必要であるから、本件賃貸借契約の目的物に含まれており、その使用として稼働をさせるためには修繕が必要である(②充足)。

 ⑶ なお、修繕の必要性は、部品の欠陥によるものであって、賃借人の責めに帰すべき事由によって生じたものではない(同項但書)。

 ⑷ 以上により、DはBに対して、賃貸借契約に基づく修繕請求として本件機械の修理請求ができる。

2. DはBに対して、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項)として9月15日から修補まで1日30万円の請求ができるか。

 ⑴ かかる請求の要件は①債務の本旨に従った履行の不存在②損害の発生③①と②の因果関係④免責事由の不存在 である。

 ⑵ 本件において、既述の通り修繕義務が存在するところ、Bはこれを怠っているため、債務の本旨に従った履行がない(①、④充足)。そして、Dは9月15日から1日あたり30万円の営業損失を受けている(②充足)。そして、かかる損害は、Bが本件機械を含むα工場を賃貸していることからすれば、本件機械の稼働が不可能になったことで生じる営業損失も、「通常の損害」として認められる(③充足)。

 ⑶ 以上により、DはBに対して、債務不履行に基づく損害賠償請求として9月15日から修補まで1日あたり30万円の請求ができる。

3. DはBに対して、賃料減額請求(611条1項)ができるか。

 ⑴ かかる請求の要件は、①賃借物の一部の使用及び収益不可能②賃借人の責めに帰すべき事由によるものではないこと である。

 ⑵ 本問では、本件機械が使用できなくなっているおり、賃借物の一部の使用が不可能である(①充足)。そして、既述の通りDの責めに帰すべき事由によるものではない(②充足)。

 ⑶ したがって、DはBに対して、賃料減額請求ができる。

4. DはBに対して、債務不履行に基づく解除ができるか。

 ⑴ 催告による解除の要件は、①債務不履行②履行の催告③催告後相当な期間履行がないこと である。

 ⑵ 本問では、既述のとおり債務不履行の事実が存在する(①)。よって、Bが履行催告をし、相当な期間履行がなければ、解除が認められるとも思える。

 ⑶ しかし、信頼関係に基づく継続的契約である賃貸借契約においては、信頼関係が破壊されたといえる事情のない限り、「軽微」(541条但書)な債務不履行であるとして、解除は認められないと解する。本問では、Dは自ら本件機械を修繕して費用償還請求をすれば容易にかかる債務不履行状態は解消できるのであるから、信頼関係が破壊されたとまではいうべきでない。(要添削)

 ⑷ よって、Bの債務不履行は「軽微」であるため、DはBに対して、債務不履行に基づaく解除はできない。

以上

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