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2025年 刑法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 刑法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

6/23/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2025年 刑法

第1問

1. 甲が荷物を受け取った行為に、詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)が成立するか。

2. 60条が「全て正犯とする」として、一部実行全部責任を負わせる根拠は、相互利用補充関係にある共犯者が、一体となって結果に対して因果性を及ぼし特定の犯罪を実現する点にある。そこで、①共謀と②共謀に基づく実行行為が認められれば、「共同して犯罪を実行した」として共同正犯が成立すると考える。

3. まず前提として、AがVに「いますぐ300万円が必要なので、助けてほしい」と噓を言った行為(以下、「本件架電行為」という。)が、「欺」く行為にあたるか検討する。
 「欺」くとは、「交付」行為に向けられ、財物を「交付」するかの判断の基礎となるような重要な事項を偽ることをいう。
 Aは、真実はVの子供ではなく医療ミスも起こしていないのに、Vの子になりすまし、医療ミスをして賠償金を請求されており300万円が必要であると偽って現金の交付を求めておりVは自分の子でなければ交付行為をしないと考えられず、経済通念上もそう言えるから、「交付」するかの判断の基礎となる重要な事項を偽ったとして、本件架電行為は「欺」く行為にあたる。

4. 8月1日、甲がAから、AがVに自身が子供であり、本件架電行為について聞き、D方からAの下に現金を届けるように依頼され、それに応じたことは、かかる詐欺罪の共謀にあたる。

5. ここで、後行者が、自己の関与以前の先行者の行為に因果性を有することはあり得ない。もっとも、法益侵害結果に因果性を有していれば足り、未遂犯の場合には、法益侵害の危険の惹起について因果性を有していれば足りる。加担時点で、先行者の行為の効果が継続して存在し、後行者がその効果を利用して先行者と共同して法益侵害の危険を惹起した場合、当該危険の惹起について因果性を及ぼしたものといえるから、共同正犯の罪責を負うと解する。構成要件は一般人への行為規範であり、一方で帰責範囲の妥当性も図るべきだから、かかる危険性は、行為時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基礎に、一般人を基準に判断する。
 一般人は、現金を宅配便で送るように指示したら荷物の中には現金が入っていないという事情は認識しえない。また、警察官に相談した上だまされたふりをしているという事情も認識し得ない。よってかかる事情を除外して判断すると、Aの「欺」く行為によるVの錯誤が継続しているという状況が継続しているなかで、その効果を積極的に利用して、現金交付の現実的危険を惹起したものと、法的には評価できる。
 よって、甲は、上記危険の惹起について因果性を及ぼした 

6. 故意、不法領得の意思に欠けるところもないから、甲に詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。

第2問

1. 甲の罪責

⑴甲が誤って振り込まれた200万円を自己の借金の一部返済として、Y銀行に有する乙名義の講座に振り込んだ行為に、電子機器使用詐欺罪(246条の2)が成立するか。
 銀行のネットバンキングサービスのコンピュータ及びその関連機器は、「人の事務処理に使用する電子計算機」に当たる。そして銀行実務では、受取人から誤った振込みがある旨の指摘があった場合には、入金処理に誤りがなかったかどうかを確認する一方、振込依頼人に対し、当該振込みの過誤の有無に関する照会を行うなどの措置と組戻しが講じられている。そうすると、受取人においては、銀行との間で継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある。にもかかわらず、かかる義務に違反して誤振込みとして入金された金員を他の口座に振り込むことは「財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供」する行為と言える。これにより、甲は乙という利害関係のある第三者に財産上の利益を得させたといえる。
 よって、甲には、電子機器使用詐欺罪が成立する。

2. 乙の罪責

⑴乙が甲に対して、200万円を振込ませた行為につき、詐欺罪(246条1項)が成立するか。

ア 詐欺罪は交付罪だから、「欺」く行為とは、「交付」行為に向けられ、財物を「交付」するかの判断の基礎となるような重要な事項を偽る行為をいうと解する。
 乙は、真実は私的に費消する目的であるのに、弁済として200万円の振り込みを求めている。私的に費消する目的を有していると知っていれば、甲も甲の立場に立つ一般人も200万円を交付することはない。そのため、一般的な経済取引通念に照らして、取引の安全性・信用性を侵害する行為無価値性の高い行為といえ、「交付」するかの判断の基礎となる重要な事項を偽ったといえる。
 よって、「欺」く行為が認められる。

イ そして、甲は錯誤に陥り200万円を交付しており、故意・不法領得の意思も認められるから、詐欺罪が成立する。

⑵次に、取立てた200万円を自己の旅行の費用として費消した行為につき、業務上横領罪(253条)が成立するか。

ア 「業務上」とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務をいう。
 乙は、Z社の取立て業務担当という社会生活上の地位に基づいて、取立金を占有しているのであるから、乙の占有には「業務」性がある。

イ 「自己の占有する」とは、委託信任関係に基づく濫用のおそれのある事実上又は法律上の支配力をいうところ、200万円は、取立金の一時保管用の口座としてZ社が認めたY銀行に有する乙名義の口座に入っており、Z社の規定では、取立の翌日までにZ社に入金することになっているから、乙には正当な払戻し権限があり、「占有」が認められる。

ウ 「他人の物」とは、他人の所有する財物をいうところ、乙は、Z社の使者であるから、乙が取立てた金銭の所有はZ社にあるといえる。なお、民法上は金銭については占有と所有が一致するが、それは動的安全を保護する趣旨に出たものであり、かかる趣旨は静的安全を保護する横領罪には妥当しない。よって、「他人の物」にあたる。

エ 「横領」とは、委託の任務に背いて、権限なく、所有者でなければできないような処分をする意思、すなわち不法領得の意思を発現する行為をいう。海外旅行費に費消する行為は、終局的処分であるから「横領」にあたる。

オ 故意(38条1項本文)・不法領得の意思に欠けるところもない。

カ 以上より、横領罪が成立する。

3. 丙の罪責
⑴丙が200万円を受領した行為につき、盗品等保管罪(256条2項)が成立する。
 乙が詐取した200万円という「盗品等」を、委託を受けて本犯たる乙のためにその占有を得て管理する行為は「保管」にあたり、故意も認められるからである。

⑵但し、257条1項が適用され、必要的に免除される。同条は、事後従犯的側面に着目し、犯人が親族たる本犯者を保護し、また、本犯者の利益に預かるためにする関与は社会類型的によくみられ、期待可能性が乏しいことを理由に、一身的に処罰を阻却するものと考えられるので、親族関係は、本犯者と盗品等に関する罪の犯人との間に必要であり、かつ、それで足りるところ、本犯乙と丙とは親族だからである。

以上

 

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