5/11/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
大阪大学法科大学院2024年 民事訴訟法
設問1
1. まず、裁判所が本案判決をなすには訴訟要件を具備していることが必要である。
⑴X社は売買契約に基づき甲土地の所有権を有しているところ,YまたはCの乙建物の占有によってかかる所有が妨害されているため,これを排除する必要があり、履行期は到来しているため、現在給付の訴えの利益が認められる。
⑵被告はYであるが、裁判所はYが乙を所有したことがないことを認定できる場合、Yには訴訟物たる特定の権利又は法律関係について、当事者として訴訟を追行し本案判決を求め得る資格たる当事者適格が認められないとして訴訟要件を欠くのではないか。
当事者適格の判断基準が問題となる。
ア 当事者適格は、原則として訴訟物たる権利関係についての法的利益の帰属者に認められると考える。なぜなら、これらの者が訴訟の結果に最も強い利害・関心があり、十分な訴訟追行が期待できる上、敗訴判決を受けることは保護される利益を処分したのと同じ効果をもたらすことから、その帰属主体を当事者として訴訟手続に関与させるべきだからである。
イ 本件では、Cが現実に乙を所有して甲土地を占有し、甲土地所有権を侵害しているため、乙の所有権の帰属主体はYではなくCである。したがって、Yには当事者適格が認められない。
⑶そして、訴訟要件は本案判決の要件であって手続の明確性・画一性の観点から、訴訟要件の具備を調査した上で本案判決をすべきである。よって、裁判所は訴訟要件の欠缺なしとして請求に対する本案判決をすることはできない。
設問2
1. Xは株式会社であり、その訴訟上の会社代表者は、包括的代理権(会社法349条4項)を有する代表取締役である。訴え提起時と訴訟委任時の代表取締役が異なることから、いずれの時点を基準に代理権授与の適法性を判断すべきかが問題となる。
⑴まず、訴訟委任に基づく訴訟代理人は、本人保護と手続きの円滑な進行を図るべく、原則として弁護士でなければならない(弁護士代理の原則、民事訴訟法(以下略)54条1項本文)。いったん適法に訴訟代理権が授与された場合には、訴訟の追行は専門家たる弁護士の専門的裁量に委ねられることになる。訴訟代理権の適法性が、訴え提起時まで確定しないとすれば、訴訟の方針を立てて訴えを提起するという一連のプロセスを、適法に訴訟代理権限を有する者が行うという関係が認められなくなり妥当でない。そこで、訴訟委任時を基準に訴訟代理権授与の適法性をみる。事後的に法人の代表者が訴訟代理権授与権限を失ったとしても、いったん適法に授与された訴訟代理権が消滅することはない。
⑵本件では、Lは弁護士であり、代理権授与当時の代表取締役であるAから適法に代理権が付与された以上、Lの訴訟代理権を適法に取得しこれが消滅することもない。
2. よって、Lには有効な代理権が認められ、Lによる訴え提起は有効である。
以上