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2024年 公法系 東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 公法系 東京大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/21/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

東京大学法科大学院2024年 公法系

第1  問1 

1 . 本件処分はXのたばこ事業法22条1項に基づく小売販売業の許可申請に対する不許可処分であり、「申請」(行手法2条3号)に対する不許可処分については理由提示が要求される(8条)。では、本件処分の通知書に記載されている本件処分の理由提示の程度が不十分であり手続の瑕疵があるとして、実体法上の違法を構成するか。

⑴ 理由提示の趣旨は申請者の不服申立ての便宜を図るとともに、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保し、恣意を抑制する点にある。そこで、理由提示の程度としては、原則としていかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたかを申請者が記載自体から了知し得るものである必要がある。そして、理由提示が不十分であるという瑕疵は手続上重大な瑕疵であるというべきであるから、直ちに処分の違法を導くと解する。判例においてもこの点について同様に解している。

⑵ たしかに、「たばこ事業法23条3号及びたばこ事業法施行規則20条2号の規定により」と本件処分の根拠法条が示されており、また、「Xの申請に係る予定営業所と、最寄りの小売販売業者の営業所との距離が、45メートルであり」と処分の原因となる事実が示されている。しかし、Xのように営業所の所在地の地域区分が「指定都市」であり、申請に係る予定営業所と最寄りの販売業者の距離が45メートルである場合、環境区分が「繁華街(B)」に該当し、かつ財務大臣が定める事項の2(1)にも該当することで初めて許可される。そうすると、環境区分及び2(1)のそれぞれの適用関係が示されなければ、環境区分と2(1)の事由のいずれが認定されなかったことにより不許可とされたのかを判別することができない。     それにもかかわらず、本件処分の理由提示ではかかる適用関係が示されていない。

⑶ したがって、本件処分の理由提示は不十分といえる。

2. よって、本件処分には理由提示の手続的瑕疵があり、かかる瑕疵は違法事由となることから、裁判所はかかる違法事由に基づき本件処分を取り消すことができる。

第2 問2

1. 法23条3号・規則20号2号(本件規定)がXの製造タバコの小売販売業を選択する自由を制約し、憲法22条1項に反し違憲となるか。

2 . 本件自由は「職業の自由」として22条1項により保障される。

3 . ここで、本件規定は環境区分に応じて既存薬局と新設薬局との間の距離を確保する距離制限規定であるところ、本件処分はXが東京都A区内で小売販売業を営むことを許可しないものであり、Xはかかる区域以外で小売販売業を営むことができるのであるから、本件規定はXの小売販売業者を営業する自由を制約するに留まるとも思える。もっとも、小売販売業者は種々の経理上の採算や消費者の往来を考慮した開設場所を勘案して当該開設場所に営業所を設置するものである。だとすれば、XがA区内での小売販売業を営むことができなければ、小売販売業を営むことを断念せざるを得ない事態となるといえる。したがって、本件規定は実質的にはXが小売販売業を選択する自由を制約するものといえる。

4 . 職業は国民の生計の手段であるだけでなく     、社会の維持・発展に寄与する社会的分担たる機能を有し、また、個々人の人格的価値とも不可分の価値を有するという現代的価値を有する。もっとも、「公共の福祉に反しない限り」という文言に表れている通り、職業は社会的相互関連性を有し、本件自由は公共の福祉のため一定の制約が課されることを内在的制約とするものである。ここで、本件規定の目的はA区内で小売商を営む経済的弱者を過当競争激化から保護するという社会経済政策に向けられたものといえ、いわゆる積極目的である。そこで、小売市場判決では距離制限規定による職業規制において規制目的が積極目的である場合は明白性の基準を採用していることから、本件でも同判決と同様の基準を採用すべきとも思える。しかし、本件では職業選択の自由そのものが制約されており、小売市場判決のように営業の自由が制約された事案とは異なる。したがって、本件では明白性の基準を採用することはできないから、規制目的・制約態様を通して立法府の裁量の広狭を決するべきである。

 本件では薬事法違憲判決が判示しているように許可制という強力な制限であり、制約態様は強い。たしかに、積極目的規制においては立法府の専門技術的な判断を尊重すべく、立法府に広範な裁量があるとも思えるが、本件自由が狭義の職業選択の自由という重要な権利であり、上記の強度な制約態様に鑑みれば、かかる立法府の裁量は減縮されるものといえる。

 したがって、①目的が重要で②手段との間に実質的関連性が認められる場合は本件規定は違憲となる。

5 . 本件規定の目的は上記の積極目的であるがタバコの小売販売業は比較的小規模な事業であり、かかる業により生計を維持するものは、近隣に同業者が参入することによりその事業の存続が困難になることもありうる。もっとも、タバコは嗜好品に過ぎず、生活必需品や医薬品のように過当競争により国民の生活に与える悪影響は少ない商品であることからすれば、これらの事業者を保護する目的は特に重要なものとはいえず(①)、市場の競争に任せることで十分である。                         

6 . 以上より、本件規定は違憲である。                    

以上


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