4/22/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
京都大学法科大学院2025年 憲法
設問1
1. 本件規則は議会の撮影を事前許可性としているところ、かかる規定は、Xの取材の自由を制約し、違憲ではないか。
⑴報道は民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであるから、憲法(以下略)21条1項により保障される。そして報道の自由は、取材・編集・発表という一連の行為により成立するものであり、取材は報道にとって不可欠の前提をなすから、取材の自由は21条1項の精神に照らし十分に尊重されると解する。
⑵ここで、Xは報道機関ではなく、取材の自由が保障されないようにも思える。しかし、Xはドキュメンタリー映画の制作者であり、これまで様々な社会問題に関するドキュメンタリー映画を制作し、あるドキュメンタリー映画祭で賞を受けた実績も有するものである。そうすると、Xの活動には報道機関と同等の影響力が認められ、かつ公共性を有するものであるため、取材の自由が保障されると解するべきである。
したがって、Xにおいて、ドキュメンタリー映画を作成するための取材として、Y県の県議会においてビデオ撮影することは、取材の自由として保障されているといえる。
⑶もっとも本件規則は事前許可制を採用しており、撮影を伴う取材の自由が制約されている。
⑷取材の自由は、上述した通り、極めて重要な権利である。また、Xの作成するドキュメンタリー映画は様々な社会問題を題材とするものであり、その公共性は高く、保障の必要性が認められる。そして、本件規則による規制態様は、記者クラブなどの例外を除いて、原則撮影・録音・情報通信機器類を禁止する、事前的規制であり制約態様は厳しい。そこで、立法目的が必要不可欠で手段が必要最小限度でなければ、違憲であると解する。
⑸本件規則の目的は、議事妨害への対処、発言取消命令があった場合の対処、撮影機材が議場に投下される危険性への対処、他の傍聴人の肖像権・プライバシー権の侵害防止、無条件で撮影を認めた場合には撮影者の人数や撮影方法によっては審議・採決に対する一種の圧力となりうることの防止である。法規性を有する条例の制定の場である議会の秩序を保つ必要性は大きく、発言取り消し命令の実行性を確保する必要性も認められる。また、議会の中心人物たる議員の安全性は確保されなくては、条例制定の審理はままならず、撮影による審議への圧力防止は、必須である。プライバシー権の侵害防止も、必要性が認められる。したがって、かかる目的は必要不可欠であるといえる。
もっとも、議長は議場の秩序保持権を有している(同法104条、129条、130条 )ところ、事前に撮影を不許可とするのではなく、撮影を許可した上で、議会の進行に支障をきたすと認められる場合には事後的に撮影を制限する、という手段によっても上記目的は達成できる。したがって、他に選びうる手段があるのだから、手段の必要性を欠く。よって、手段が必要最小限度とはいえない。
2. 以上より、本件許可制は21条1項に反し、違憲である。
設問2
1. 本件法律改正は、政党の代表権を有する者の選出方法を決定する自由を制約し、違憲ではないか。
⑴政党は一定の理念の下、国会議員が継続的かつ自主的に集まった団体であるから、「結社」(21条1項)といえる。そして、党内の代表を選出すること、及びその方法を決定することは、結社した団体の活動の根幹をなすものだから、結社の自由として保障される。
⑵したがって、政党の代表権を有する者の選出方法を決定する自由は結社の自由により保障される。
⑶次に、本件法律改正により、政党が法人格付与法4条1項の規定による法人になるためには、その党則等において代表権を有する者の選出手続を定めること、及びその選出手続は党員の選挙による必要があるため、本件自由は制約される。
⑷政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であり、公的機能を有するものである。そうすると、政党における内部的規律については高度の自律性が認められると解するべきであり、代表の選出に関する手続を制限することは上記結社の自由に対する強度の制約にあたる。一方で、本件法律改正は、民主主義を支える政党に関して、政党交付金を国家から受給する適格を定めるものであるところ、その制定については国会の裁量が一定程度尊重されるべきである。
そこで中間基準によって判断すべきである。具体的には立法目的が重要で手段が目的との間で実質的関連性を有していなければ、違憲であると解する。
⑸法律改正案の目的は、政党交付金の交付を受ける政党の組織及び運営を民主的かつ公正なものとすることにある。上述した政党の公的機能からすれば、政党助成金の運営の健全化を図る必要があるから、目的の重要性は認められる。
しかし、民主主義の概念は多義的であって、選挙という一態様のみを条件とすることは、相当性を害する。訓示規定ならともかく、その強制は自律性を著しく害するといわざるをえない。よって手段の必要性がない。
2. したがって、本件法律改正は21条1項に反し、違憲である。
以上