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2025年 民事訴訟法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2025年 民事訴訟法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

5/12/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2025年 民事訴訟法

問(1)について

1. 本件送達は補充送達(106条1項)として行われているため、まずその要件充足性を検討する。本件送達書類の交付の際、被告であるBは不在だったから、「送達を受けるべき者が不在の場合」に当たる。では、実際に交付を受けたCは「相当のわきまえのあるもの」に当たるか。 

⑴補充送達は、「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」に対し書類を交付することで効力を生じる(同項)。「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」に、送達書類を交付すれば、速やかに受送達者にその書類が伝達されることが通常期待できるからである。そこで、「相当のわきまえのあるもの」とは、送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することができる程度の能力を有する者をいう。

⑵本件では、Bと同居する子であって、23歳という、一般的に訴状を受領すれば受取人本人に渡すべきことを理解している年齢のCに書類が交付されており、送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することができる程度の能力を有する者として、要件を満たしているとも思える。

2. もっとも、CはBの名義で本件貸付を受けており、Bが敗訴すれば貸金債務を事実上免れることができるため、BとCとの間で事実上利害関係がある。そのようなCも「相当のわきまえのあるもの」と言えるか。その判断基準が問題となる。

⑴通常、送達実施機関に事実上の利害対立の有無を察知させることは困難であり、この存否によって補充送達の効力の有無が左右されるとすると、手続の安定、迅速な手続進行が図れない。そのため、受送達者と同居人とのあいだに事実上の利害対立があった場合でも、「相当のわきまえ」は否定されないと考える。

⑵したがって、事実上の利害対立のあるCも「相当のわきまえのあるもの」として、受領権限を有する。

3. よって、本件送達は要件を充足するから、有効である。

問(2)について

1. 口頭弁論の再開は裁判所の裁量に委ねられる(153条)が、判例は、口頭弁論終結後に重要な新事実が判明した場合、手続的正義の観点から、裁判所に再開義務を課すことを認めている(最判昭和56年9月24日)。

2. 本件において、Bは口頭弁論終結後、名義冒用があったという重要事実を裁判所に主張している。このような事実は審理の根幹にかかわる重要性を有するから、弁論を開して当事者にさらに攻撃防御の方法を提出する機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところである。したがって、手続的正義の観点から、裁判所には口頭弁論を再開する義務があると解すべきである。

問(3)について

1. 裁判所が口頭弁論を再開し、Bを被告として手続が進められる場合、Bは本件貸付の事実を否認することができるか。本件では、CがBの名義を冒用して答弁書を提出し、その中で「Bが本件貸付を受けたことを認める」旨を記載している。このような訴訟行為が冒用者Cによる裁判上の自白(179条)として当事者拘束力を生じ、Bが後に本件貸付の事実を否認することを制限するか否かが問われる。

⑴まず、本件貸付の事実に当事者拘束力が成立するか。

ア 裁判上の自白は、当事者が訴訟において相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める訴訟行為である。そして、裁判上の自白に当事者拘束力が成立するのは、裁判所に対する拘束力によって異なる事実が認定される可能性がなくなる以上、撤回を認めれば相手方にとって不利益となるから、信義則(2条)上、当事者はその事実に拘束され、その後の争いを許されないためとされる。そうだとすれば、 裁判所拘束力が発生する範囲と当事者拘束力が発生する範囲は同一であると考えるべきである。したがって. 当事者拘束力も主要事実についてのみ発生すると解する。

イ  本件では、名義を冒用したCがBの名義で提出した答弁書において、Bが本件貸付を受けた旨の記載があり、これは原告Aの主張と一致する自己に不利益な事実を認めたものであるから、形式的には裁判上の自白に該当する。また、本件貸付は本件訴訟の請求原因事実であるから、主要事実に当たる。

ウ よって、上記答弁書により本件貸付の事実には当事者拘束力が成立し、撤回できないのが原則である。

2. もっとも、上記答弁書はCがBの名義で提出したものであるところ、当事者拘束力を発生させることは不当でないか。

⑴裁判上の自白は訴訟上の行為であるため、その効力は本来的に名義を使用された本人(被冒用者)が有効に訴訟行為をした場合にのみ認められるものである。他人が本人の名義を無断で冒用してなした訴訟行為は、本人がその効果を承認・追認しない限り、本人に対して効力を生じさせることはできないというのが原則である(59条、34条2項)。

⑵本件では、BはCによる名義冒用を承認・追認しておらず、かつ本件貸付の存在を知らず、後に明確に否定する態度を示している。

⑶したがって、Cが行った裁判上の自白の効果が当然にBに帰属することはない。 

2. よって、本件貸付の事実について裁判所が口頭弁論を再開した後に、自由に否認することが可能である。

以上



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