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2021年 商法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2021年 商法 慶應義塾大学法科大学院【ロー入試参考答案】

11/20/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

慶應義塾大学法科大学院2021年 商法

第1 問1

1. XはY社に対して、本件契約の未払い代金を請求することができるか。以下、財産引受け(28条2号)につき検討する。

 ⑴ 本件契約締結時に、未だY社は設立されていなかった点で、Y社とXの法的関係が問題となる。発起人とは、会社の定款に発起人として署名・押印したものを言い、会社設立の責任の所在を明らかにするために、形式的に判断する。そして、発起人は、会社設立を目的とする発起人組合を形成し、一定の範囲で設立後の会社へその効果が帰属する。

 ⑵ 本件契約は、発起人AがXと行った、会社の設立を停止条件とする財産の譲受であるため、財産引受けに該当する。財産引受は開業準備行為に含まれる行為であるが、かかる行為は設立後の会社に効果が帰属するか。
  これに関して、会社法28条2号の趣旨は厳格な要件を規定することで設立後の会社財産の基礎が害されることを防止する点にあるから、会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為は発起人といえどもこれを成し得ず、28条2号の要件を満たした財産引受のみが例外的に許容されると解する。
   本問では、本件契約について28条2号の要件を満たす定款記載がない。したがって、本件契約の効果はY社に帰属しない。

3.

 ⑴ もっとも、28条2号の制度趣旨が成立後の利害関係人の保護という点にある。そして、法律関係を安定させる必要もある。よって、利害関係人の保護と関係のない理由で残債務の履行を拒んでいる場合や長い期間無効を主張していなかった場合には、信義則違反として無効を主張することは許されないと解するべきである。

 ⑵ 本問では、Y社が高級日本酒を客に提供した行為は、本件契約から1ヶ月程度が経過しているに過ぎない。また、X社が本件契約の効果が会社に帰属することを認識しつつY社に一部弁済するなどの事情がない。そのため、株主・債権者等の利害関係人の利益保護以外の意図に基づく無効主張であると評価することはできない。したがって、かかる主張が信義に反するとはいえない。

4. 以上により、XはY社に対して本件契約の未払い代金を請求することはできない。もっとも、不当利得返還請求権(民法703条)の行使は妨げられない。

第2 問2

1. AはXに対し、無権代理人責任(民法117条1項)を負うか。

2. 民法117条は、他人の代理人として契約を締結した無権代理人の相手方保護のために、その選択に従い、債務の履行か損害賠償の責任を規定したものである。よって、会社が未だ存在しない設立中に会社の代表者として発起人が行った行為も、相手方保護の必要性はあるから、かかる規定を類推適用できると解するべきであるそして、発起人名義で取引をした場合も、行為の結果を発起人でなく成立後の会社に帰属させることが当事者双方の意思であったとする特段の事情がない限り、発起人が自己のためにした取引とみなし、相手方は発起人個人に対して責任追及できると解するべきである。
本件では、Aは「Y社 発起人A」名義で本件契約を締結している。そして、たしかにY社の設立を条件として本件契約を締結している者の、XとAの双方で本件契約の効力をY社に帰属させることを同意しているわけではない。
よって、X社はAに対して責任追及ができる。したがって、Aは無権代理人としての責任を負う。

3. 本問では、Aは会社の代表などの肩書きではなく、設立中の会社の発起人として本件契約を締結している。よって、XはAにかかる契約の権限がないことを認識していると言えるから、民法117条2項1号により、Aは無権代理人責任を負わない。

以上

 

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