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2022年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 民法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

10/2/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2022年 民法

設問1

1. Bは、Aに対して、本件売買契約に基づき、契約の内容に適合する地盤を備えた乙を引き渡すよう請求することが考えられる。
 これに対してAは、履行不能(民法(以下略)412条の2第1項)を理由にBの請求を拒むことが考えられる。かかる反論は妥当か。

2. 412条の2第1項は、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるとき」に、債権者が債務の履行を請求できないとしている。同条の趣旨は、債務者に多大な負担を課することを防ぐ点にある。そのため、履行自体は可能であるものの、債務の本旨に従った履行をするのに多大な負担を債務者に課すことになり、債権者による履行の請求を認めることが不相当と言える場合には、履行不能にあたると考える。
 本件において、債務の本旨に従った履行をするには、5億円以上の工事費用がかり、甲の全区分を完売してもまったく利益がでず、乙の売買代金は工事費用の1割にも満たない。そのため、Bによる債務の履行の請求を認めるとAに多大な負担を課すことになると言える。

3. よって、履行不能にあたり、BはAに対して、本件売買契約に基づき、契約の内容に適合する地盤を備えた乙を引き渡すよう請求することはできない。

設問2

1. Bの主張は、541条に基づく丙クラブ会員権契約の解除である。

 ⑴ 催告による解除の要件は、①債務不履行②履行の催告③催告後相当な期間履行がないこと、④解除の意思表示である。

 ⑵ 甲の広告、案内書には、2020年12月末には屋内プールが完成予定であると記載されていたのであるから、2020年12月末までの屋内プールの完成は丙クラブ会員権契約の債務の一部であったと言える。しかし、屋内プールは2022年12月末には完成せず、Bが、Aに対し、屋内プールの建設を再三請求したにもかかわらず、未だ着工もされていないのであるから、債務不履行(①充足)にあたる。そして、Bは相当期間を定めて履行を催告している(②充足)。そして、Aは屋内プールの着工すらしていないので、相当期間経過後の履行がなかった(③充足)。そして、2021年8月1日到達の書面により、解除する旨の意思表示をした(④)。

 ⑶ よって、解除が認められると考えられる。

2. これに対し、Aとしては、屋内プールは丙クラブの施設の1部に過ぎずテニスコートなどの他の設備は完備済みであるし、屋外プールを完備しているのであるから、「債務の不履行が・・・軽微」(541条ただし書)であり解除は認められないと反論する。
 しかし、屋内プールの利用希望者からすれば、テニスコートなどの他の施設は代替性がなく、屋内プールを補完するようなものではない。また、屋外プールについては一定の代替性が認められるとも思えるが、屋内プールと違い屋外プールは天候の影響を強く受けるため屋内プールを補完するには不十分であると考える。よって、屋内プールの未完成は要素たる債務の一部の不履行であるといえ、「債務の不履行が・・・軽微」とは言えない。

3. よって、Bの丙クラブ会員権契約を解除通知は有効である。

設問3

1. Bは、541条に基づき、本件売買契約を解除すると主張する。
 これに対し、Aは、丙クラブ会員権契約に関する債務不履行を理由に本件売買契約を解除することができないと反論すると考えられる。かかる反論は妥当か。原則として、丙クラブ会員権契約と本件売買契約は別個の独立した契約であるため、丙クラブ会員権契約の解除を理由に本件売買契約を解除することはできない。もっとも、目的が相互に密接に関連づけられていて、社会通念上、いずれかが履行されるだけでは、契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、一方の契約の債務不履行を理由に、他方の契約を解除できると考える。そう解することが当事者の合理的意思に合致するからである。

2. 本件売買契約書の記載と丙クラブ会則によれば、甲の区分所有権の購入者は購入と 同時に丙クラブの会員になるとされ、丙クラブ会則には、甲の区分所有権を他に譲渡したときは丙クラブの会員資格は消滅することが明記されている。また、甲の広告、案内書および売買契約書の表書きには、「丙クラブ会員権付」という記載がある。そのため、本件売買契約の目的物たる甲の区分所有権と丙クラブの会員資格は相互に密接に関連しているといえる。
 そして、甲の区分所有権は丙クラブの利用ができることが広告や契約書に明記されていることを踏まえれば、甲の区分所有権の購入者としては、甲の区分所有権を得るのと同時に丙クラブの利用ができることを前提として両契約を締結していると考えるのが社会通念上妥当である。そのため、本件売買契約が履行されるだけでは、契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる。

3. よって、Bの主張は認められる。

以上

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