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2023年 行政法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2023年 行政法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

大阪大学法科大学院2023年 行政法

1. 主張の骨子
本件訴訟において、本件処分が違法であるというために、Xは、①サービス基準は審査基準であるのにもかかわらず公開がなされていないこと、②本件処分には裁量の逸脱・濫用が認められることを主張すべきである。

2. ①について

⑴ 「一般旅客定期航路事業を営もうとする者は、航路ごとに、国土交通大臣の許可を受けなければならない」(法3条1項)とされ、「許可を受けようとする者は、国土交通省令の定める手続により」「申請書を国土交通大臣に提出しなければならない」(法3条2項)とされる。したがって、本件処分は、申請に対する不許可処分であり、行政手続法(以下、当該法令名を「行手法」という。)第2章以下の規定が問題となる。

⑵ 許可の申請をする者は、指定区間を含む航路において当該事業を営む場合にあっては、申請書に当該指定区間に係る船舶運行計画を併せて記載しなければならない(法3条3項)とされ、国土交通大臣は、一般旅客定期航路事業の許可をしようとするときは、「指定区間を含む航路に係るものにあっては、当該指定区間に係る船舶運行計画が、当該指定区画に係る離島その他の地域の住民が日常生活又は社会生活を営むために必要な船舶による輸送を確保するために適切なものであること」(法4条6号)という基準に適合するかどうかを審査するものとされる。また、A地方運輸局長は、法4条6号が定める事業許可の基準に適合するかどうかを判断するための内部的な基準として、サービス基準を定めている。サービス基準とは、法2条11項所定の指定区間を含む航路にあって、運行日程や運行時刻などにつき、法4条6号が定める事業許可の基準に適合すると認められるために必要な条件を具体的に定めたものである。したがって、サービス基準の性質は、審査基準(行手法5条1項)である。
 そして、審査基準は、行政上特別の支障があるときを除き、公表することが義務づけられる(行手法5条3項)ところ、サービス基準は、それを公表することで行政上特別の支障が生ずるといえないにもかかわらず、公表されておらず、また、事業許可を申請する者に対して個別の示すということもされていない。したがって、手続上の瑕疵が認められる。

⑶ 行手法上の手続を履践せずになされた処分の効力について、行手法は規定を置いていない。そこで、手続上の瑕疵が取消事由となるかが問題となる。
 確かに、手続は実体的に正しい処分を生み出すための手段にすぎないとすると、処分が実体的に正しいかどうかが重要であって、手続違反は当然には処分の効力に影響を及ぼさないとも思える。しかし、行手法が審査基準の公表を明確に行政庁の行為義務として定めているのは、適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を国民に保障する趣旨と考えるべきであるから、審査基準の公表に違反する場合には国民の権利侵害として処分の取消事由となると解すべきである。行手法制定前の判例は、手続の瑕疵は結果に影響を及ぼす可能性がある場合にのみ取消事由となるとするが、行手法制定後においては、正しい手続によってのみ正しい処分が生み出されるという考え方を徹底すべきであり、また、手続規制の担保手段を確保するという観点からも、軽微ではない手続規制違反は、当然に取消事由になると解すべきである。
 本件では、A地方運輸局長は、審査基準であるサービス基準を公表すべきであるにもかかわらず、これをしておらず、また、事業許可を申請する者に対して個別の示すということもしていない。したがって、軽微な瑕疵に当たらず、重大な瑕疵といえる。よって、処分の取消事由となる。
 以上により、本件処分は違法であり、本件処分は取り消されるべきである。

3. ②について

⑴ 行政規則は、国民の権利義務にかかわらない行政の内部基準にとどまる規範であるから、国民に対する直接の関係において法的拘束力を有しないため、行政庁の裁量権の行使を当然に拘束するものではない。サービス基準は、法の委任に基づかない行政の内部基準たる行政規則だから、国民に対する直接の関係において法的拘束力を有しない。
 したがって、サービス基準を満たすことをもって、当然に本件処分が違法になるわけではない。

⑵ もっとも、行政庁の裁量判断について、裁量権行使の逸脱・濫用が認められる場合には、違法となる(行政事件訴訟法30条)。

ア 法は、事業許可について、法4条柱書において国土交通大臣又はこれの委任を受けた地方運輸局長(法45条の4第1項)による審査を経て行われることを定め、法4条6号において許可基準を定めている。法4条6号の趣旨は、指定区間(法2条11項)を含む航路に係る一般旅客定期航路事業の公共性ないし公益性に鑑み、地域住民の日常生活・社会生活に必要な船舶の輸送を確保することにあるところ、同号の基準は抽象的・概括的なものであり、この基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、要件裁量が認められる。したがって、サービス基準は、裁量権行使の準則たる裁量基準に位置付けられる。

イ そこで、裁量基準に裁量権行使に対する拘束力が認められるかが問題となる。

 確かに、裁量基準は法の委任に基づかない行政規則であり法的拘束力を有しないから、行政庁は常に裁量基準に従って裁量権を行使しなければならないわけではない。しかし、裁量基準が存在する場合には裁量権行使における公正・平等な取り扱いの要請がある。そこで、裁量基準は外部規範である平等原則(憲法14条)等を媒介として国民に対する関係でも行政庁を拘束し、裁量基準と異なる取り扱いを相当と認める特段の事情がない限り、裁量基準に従った判断をしなければ裁量権の逸脱・濫用になると解する。

ウ 本件では、これまで、船舶運行計画がサービス基準を満たす事業許可の申請に対して、供給過剰というサービス基準に定めのない理由で不許可処分が行われた例はないことからすると、船舶運行計画がサービス基準を満たすのにもかかわらず、供給過剰との理由でXに対して不許可処分をすることは、平等原則(憲法14条)に反する。
 そして、サービス基準は合理性を有すると考えられる。また、法改正によって、需給調整規定が事業許可の基準から削除された経緯からすると、そもそも、供給過剰という事情を裁量判断に際して考慮に入れることは許されないと考えられる。これらの事情からすると、裁量基準と異なる取り扱いを相当と認める特段の事情も認められない。

エ よって、本件処分には裁量の逸脱・濫用が認められ、違法である。

以上

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