7/21/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
中央大学法科大学院2021年 刑事訴訟法
設問(1)
1. 刑事訴訟法が伝聞法則を採用している理由は、供述証拠は知覚・記憶・表現・叙述の各過程を経ることで誤りが介在する恐れが高いことから、偽証罪(刑法169条)の威嚇、裁判官の観察、反対尋問(憲法37条2項)等でその信用性を吟味する必要があるためである。従って、伝聞証拠とは、公判外供述の内容の真実性を立証するために用いられる証拠をいう。
2. 本件実況見分調書はPが店主Nの指示説明により、M時計店のドアの破壊や被害商品等を確認した結果を記載したものである。そして、本件実況見分調書の要証事実は、窃盗事件という犯罪事実の存在自体であると解されるところ、これは実況見分調書通りの犯罪事実の存在を立証するものである。よって、本件実況見分調書は、公判外供述の内容の真実性を立証するために用いられる証拠であるから、伝聞証拠である。
3. したがって、本件実況見分調書の証拠能力が認められるためには、伝聞例外に該当する必要がある。そこで、321条3項の要件を満たすか検討する。
⑴ 321条3項は、作成者が書面で報告する方が、記憶に頼って供述するよりも正確性が担保される一方で、検証において被疑者の立ち会いが保障されていない点で、作成者への尋問を行い、真正な作成の供述を得られることを要件としている。そして、実況見分調書は、検証そのものではないが、五感の作用で観察した結果を記載した書面であるから、かかる文書に当たる。
⑵ よって、Pが公判廷にて尋問を受け、真正な作成の供述をすることで、本項要件を充足し、証拠能力が認められる。
設問(2)
1. 訴因変更の可否について問題となる。
2. そもそも、訴因変更制度とは、一個の訴訟手続の中で解決を図るべき範囲の問題であり、二重起訴の禁止や一事不再理効による再訴禁止の範囲と統一的に理解すべきである。そうであるとすれば、両訴因間の事実の共通性を前提にして、訴因を比較すれば、両訴因が別訴において共に有罪とされるとしたら二重処罰になる関係にある場合には「公訴事実の同一性」が認められると解する。すなわち、公訴事実の単一性または狭義の同一性が認められる時に「公訴事実の同一性」が認められ、前者は実体法上一罪か否か、後者は両訴因の基本的事実の共通性を主に判断し、補助的に両訴因の非両立性を考慮する。
3. 本問では、窃盗罪と盗品等有償処分あっせん罪は吸収関係となり実体法上一罪になりうるから、単一性が認められる。さらに、窃盗の日時は令和2年3月10日で、盗品等有償処分あっせんの同15日と近接しており、場所も同一市内であって近接している。その上、財物たる時計も同一である。これらにより、基本的事実の同一性、すなわち狭義の同一性も肯定できる。よって、「公訴事実の同一性」がある。
4. 以上により、Qの訴因変更は認められる。
以上