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2022年 刑事訴訟法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 刑事訴訟法 中央大学法科大学院【ロー入試参考答案】

3/11/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

中央大学法科大学院2022年 刑事訴訟法

設問(1)

1. 「現行犯人」(212条2項)に当たる場合、逮捕状がなくても逮捕ができる(213条)。よって、「現行犯人」に当たるか否かが問題になる。

2. 212条2項の「現行犯人」とは、212条2項各号に該当する者のうち、「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者」である。現行犯逮捕が令状主義の例外(憲法33条)の例外として許されるのは、特定の犯罪とその犯人が逮捕者にとって明白であるため誤認逮捕のおそれが低く、裁判所の司法審査を経るまでもないからである。そのため、「罪を(略)」に該当するかは、犯行と逮捕の時間的場所的接着性、逮捕者を基準とした犯罪と犯人の明白性を基準に判断する。

3.

 ⑴

  ア 甲は剣道で用いるかご手を身につけている。剣道のかご手は剣道の他、抗争などの際に手を保護するために使われる。そして、道を歩いている人が剣道のかご手を付けているのは明らかに不自然である。そのため、剣道のかご手は抗争の際に用いてこれをそのままつけていると推認することもできる。そのため、「明らかに犯罪の用に供したと思われる(略)物を所持している」(212条2項2号)と言える。

  イ 甲の顔面には新しい傷跡があり、血の混じったつばをはいていたことから、直前に何者かと抗争したことが推認できる。そして付近で本件犯行があり、角材や鉄パイプを用いて抗争をしていたことから、顔面などに傷を受けることが想定される。したがって、甲の顔面の傷跡や血の混じったつばは、本件犯行の犯行態様と符合する。よって、「身体または被服に犯罪の顕著な証跡があるとき」(212条2項3号)にあたる。

  ウ Aが停止するよう呼び掛けたところ、甲は突然逃走しているため、「誰何されて逃走しようとするとき」(212条2項4号)にも当たる。

 ⑵ 時間的場所的接着性を要求する趣旨は犯人明白性の客観的担保であるため、各号該当性が犯人明白性を占めす強い推認力を有している場合、その分だけ時間的場所的接着性の要求度が緩和される。たしかに、本件犯行は午後2時ごろに行われており、逮捕は同日の午後3時ころに行われている。また、場所も直線距離で4キロメートル離れている。そのため、時間的場所的接着性が強いとは言えないとも思える。しかし、前述のとおり、甲には212条2項2号および3号に該当する事由があり犯人明白性が高いため、時間的場所的接着性の要求度は緩和される。そのため、1時間、4キロメートルと多少時間、場所が離れていても、犯人明白性が強く推認されるため、時間的場所的接着性も認められる。

 ⑶ 犯罪と犯人の明白性は、212条2項各号の該当事実、犯行・逮捕の時間的場所的接着性、その他の客観的事情を考慮して判断する。前述のとおり、甲は剣道の籠手を所持しており、顔面に傷跡があり、血の混じったつばを吐いている。そして、A、Bが本件犯行について無線情報の内容を鑑みると、無線情報通りの本件犯行が行われていることを示しているといえる。よって、犯罪の明白性は認められる。
   加えて、たしかに1時間、4キロメートルと少々離れている。しかし、本件犯行に参加していたものが20歳前後であり、甲は20歳前後にみえることから、この点は一致する。加えて、前述のとおり2号、3号該当事実が認められることから、甲が本件犯行に関与していた可能性が極めて高いといえる。よって、犯人の明白性も認められる。

4. 以上より、①の逮捕は適法である。

設問(2)

1. ②の差押えは無令状で行われているため、220条1項2号の「差押」として適法かが問題となる。これに当たる場合、無令状で行えるため、適法となる(同条3項)。

2. ②の差押えは準現行犯逮捕後に行っているので、「現行犯人を逮捕する場合」(220条1項柱書き)にあたる。

3. 220条1項2号、3項の趣旨は、逮捕の現場には証拠物が存在する蓋然性が一般的に高く、令状裁判官の事前審査を経なくても捜索・差押えの「正当な理由」が一般的に認められるという点にある。そのため差押えは、被疑事実に関連する物に限り認められる。剣道のかご手は、本件犯行の際に手を保護するために用いられた可能性があるため、本件犯行、すなわち被疑事実と関連が認められる。

4. ②の差押えは派出所でされているため、「逮捕の現場」(220条1項2号)と言えるか。

 ⑴ 前述のとおり、220条1項2号、3項の趣旨は証拠物存在の蓋然性の高さにあるところ、被疑者の身体、所持品の証拠物存在の蓋然性の高さは、被疑者が場所を移動しても変化しない。もっとも、「現場」でという文理を鑑み、その場で捜索差押えを実施することが適当でないことに加え、速やかに、被疑者を捜索差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行した場合に限り、被疑者の身体、所持品の捜索差押えを「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視できると解するべきである。

 ⑵ 本件では、車両の通行もあり逮捕現場で差押えを行えば交通を妨げる恐れがある。また、しかも、Aがかご手を外そうとしたところ甲は興奮して暴れ、周りに見物人も集まっていた。そのため、交通状況に混乱を生じるおそれも十分あり、甲の名誉を害するおそれもある。そのため、甲を逮捕した場所は、差押えに適切な場所とは言えない。
   そして、A及びBは、逮捕現場から300mにある最寄りの派出所に連行し、逮捕から10分後で差押さえを実施している。よって、速やかに被疑者を捜索差押さえの実施に適する最寄りの場所まで連行した上、これらの差押えをしていると言える。
 よって、「逮捕の現場」における差押えと同視できる。

5. したがって、②の差押えは適法である。

 以上

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