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2024年 行政法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 行政法 京都大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/11/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

京都大学法科大学院2024年 行政法

問1

1. 前段

⑴Cは企画書を提出したにすぎず、指定管理者の指定の手続等に関する条例(以下、本件条例)3条の「申請書」を提出していない。そのため、Cは行政手続法(以下「行手法」)2条3号の「申請」をしたかどうかが問題となる。
 企画書の提出は、たしかに本件条例に規定されていないため、「法令に基づく」とは言えず、許否応答義務もないとも思える。しかし、市のウェブサイトに掲載された公募要領には、指定の申請に先立って企画書の提出を求め、市が委託したコンサルタントが応募者と企画書の内容を協議した上で、指定の申請予定者を内定するとされていた。そのため、応募者と企画書の内容をみて本件条例4条の基準の該当性を判断し、「申請」するものを決めているといえる。そうすると、事実上、企画書を提出しないと「申請」ができない。加えて、制度全体の仕組みから見れば、申請予定者の内定がないと「申請」ができないから、申請予定者かどうかの通知をする仕組みが備わっているといえる。そのため、行政庁は企画書の提出者を申請予定者とするかの許否を決定し、提出者にそれを伝えなければならないといえる。
 よって、企画書の提出は行手法上の「申請」に当たる。

⑵したがって、Cが指定候補者に選定されるようにするためには、Cを指定管理者に指定するよう義務付ける申請型義務付け訴訟(行政事件訴訟法(以下略)3条6項2号)及びCを申請予定者に指定しなかった処分の取消訴訟(3条2項)を併合提起するべきである。

2. 後段

⑴本件条例3条による申請があったときは、指定候補者を選定するものである(本件条例4条1項)。そして、選定と同時に非選定者を指定管理者に指定しない旨の処分をしなければならない(同条2項)。
 本件では、企画書の提出によって「申請」がなされているところ、A・Bが申請予定者に選定され、Cは申請予定者にされなかった。なお、前述の通り、企画書の提出を「申請」と捉える以上、申請予定者と同条1項の指定候補者は同様に解される。そうすると、Y市は非選定者であるCに対して、指定管理者に指定しない旨の処分をしなければならなかった。それにもかかわらず、Y市はかかる処分をせず、応答を留保している(Y市行政手続条例8条)。
 そして、指定管理者に指定しない旨の処分がなされることで、本件条例4条1項の基準を満たしていないことがわかるから、かかる応答留保は取消事由となる。
 よって、当該処分の留保は、本件条例4条2項、Y市行政手続条例8条に反すると主張する。

⑵Y市は、Cに対して、コンサルタントがA・Bを申請予定者に選定したことと、A・B が選定された理由のみを記載した文書を送付したにすぎず、理由が不十分ではないか(Y市行政手続条例9条)。

ア 同条の趣旨は、行政庁の恣意的な判断を抑制することと名宛人に対して不服申立ての便宜を与える点にある。そこで、理由呈示の程度は、いかなる事実関係につきいかなる法規をどのように適用して当該処分がなされたのかを、処分の名宛人においてその記載自体から了知しうるものでなければならない。 
 Cに送られた文書からでは、A・Bが選定された理由しかわからず、Cが選定されなかった理由がわからない。本件条例では指定する者の数も決まっていないため、A、Bを選定したことはCを選定しなかった理由とはならない。そのため、いかなる事実関係につきいかなる法規をどのように適用して当該処分がなされたかを、Cは了知することはできない。
 したがって、理由が不十分である。

イ 理由提示の不備は、行政庁の恣意的な判断を抑制するという条例の趣旨を没却する重大な違法である。また、名宛人に対しても、改めて必要とされる理由を提示した処分をすることで、不服申立ての便宜を十分に与えるべきである。
 したがって、理由提示の不備は処分の取消事由となる。

ウ よって、当該理由呈示は、Y市行政手続条例9条に反すると主張する。

問2

1. 指定期間が満了した場合、Bが提起した指定取消処分の取消訴訟(3条2項)には、訴えの利益(9条1項括弧書参照)が認められるか。

2. 取消訴訟制度の目的は、行政庁の違法な処分により個人の権利利益が侵害されている場合に、当該処分の法的効果を遡及的に消滅させ、以て個人の権利利益の回復を図る点にある。そこで、訴えの利益が認められるには、㋐処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか又は㋑処分を取り消すことによって回復される権利利益が存在するかのいずれかが認められることが必要である。

3. 本件条例5条による指定期間は5年とされ、指定の条件(本件条例6条)として、Y市の同意を得ずに営業を停止した場合に指定を取り消すものとされていた。本件では、Bが市の同意なく営業を停止したから、指定取消処分がなされた。そして、その取消訴訟の係属中に上記5年の指定期間を超えてしまったから、上記訴えの利益はなくなったとも思える。
 しかし、同条例7条の協定では、Y市がA・Bに対して毎月100万円の委託費を支払うことが定められていた。そして、本件の指定取消処分は指定期間の4年目が終了する月末になされている。そうすると、本件の指定取消処分を取り消すことによって、5年目の委託費の支払いを受けられる権利利益を回復することができる(㋑充足)。

4. よって、上記取消訴訟には、訴えの利益が認められる。

以上

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