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2024年 憲法 千葉大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 憲法 千葉大学法科大学院【ロー入試参考答案】

6/30/2025

The Law School Times【ロー入試参考答案】

千葉大学法科大学院2024年 憲法

1. Y県議会傍聴規則10条(以下「規則」という。)は、XがY県議会の撮影等をする自由(以下「本件自由」という。)を侵害し違憲ではないか。

⑴本件自由は憲法(以下略)21条によって保障されるか。
 XによるY県議会の撮影等は取材活動の一種であるため、本件自由は取材の自由である。
 取材は報道の不可欠な前提と言えるので、報道の自由の一環であるが、報道は、事実の伝達に過ぎないものの、編集という知的作業を経る点で送り手の思想の伝達という側面を有するとともに、国民の知る権利に奉仕するものとして重要な意義を有するため、報道の自由は表現の自由(21条1項)の一環として保障される。そして、取材の自由について、判例によれば同条の精神に照らし十分尊重に値するにとどまるとのY県からの主張も考えられるが、上述の通り取材は報道の不可欠の前提であるため同項で直接保障されると考える。また、取材の自由が憲法上保障される上述の論理はフリージャーナリストについても妥当すると解されるため、Xについても上記権利は保障が及ぶ。
 よって、本件自由は同項により保障される。

⑵次に、規則により議長の許可を得ていない場合、傍聴人は撮影等をしてはならないから、本件自由は規則によって制約されている。

⑶もっとも、本件自由も公共の福祉(12条後段、13条後段)による制約を受けるところ、正当化されるか。
 本件自由は、Y県議会の議論を世の中に伝えることにより自己実現を図ることができ、自己実現の価値がある。また、本件自由は、議員の政務活動費の不正利用を世の中に伝えることで不正利用した議員への政治責任を追求する世論を形成するなどの政治的意思決定に関与することができるため、自己統治の価値を有する。よって、本件自由は重要性が高い。
 次に規制態様については、表現内容の規制ではなく表現方法の規制にとどまるとのY県からの主張が考えられる。しかし、本会議における取材等が許可されなければ、議員の政務活動費の利用状況に関する取材を行うというXの取材目的は達成できないといえるため、実質的にみれば表現内容に対する規制にあたると考える。また、本件規則は事前の許可性であり規制態様は強い。
 よって、厳格な審査基準を採り、目的が必要不可欠であり、手段が目的との関係で必要最小限度の場合に合憲となる。

⑷本件で、確かに、規則の目的は会議の秩序維持であり、議会が民主政治に欠かせないものであることから必要不可欠であり、手段について、執拗な撮影等により議員が十分に会議において議論することができなくなることも考えられ、規則は目的との関係で必要最小限度であるとのY県からの主張も考えられる。
 しかし、撮影等は音を立てるものでないから、ジャーナリストの撮影等が議会の秩序を乱すとは言えないため、規則はその目的に適合しているとは言えない。
 また、執拗な撮影等により会議の秩序が乱された場合に事後的に罰することでも上記目的は達成できるから、事前の許可性にする必要性がない。
 よって、規則は手段が目的との関係で必要最小限度とは言えない。

⑸以上より、規則は本件自由を侵害し違憲となる。

2. 次に仮に規則が合憲であったとしても、県政記者クラブに所属する記者の撮影等は許可されているにも関わらず、Xに対しては規則に基づいて撮影等を不許可とすることは平等原則(憲法14条1項)に反し違憲ではないか。

⑴各人には事実的・実質的差異がある以上、「平等」とは合理的区別を許容する相対的平等である。そこで、当該区別が合理的区別と言えるか否かで合憲性を判断すべきである。

⑵それでは、本件区別は合理的と言えるか。
 本件では、取材の自由という上述の通り表現の自由として保障される重要な自由についての区別である。
 よって、厳格な審査基準を採り、目的が必要不可欠であり、手段が目的との関係で必要最小限度の場合に合憲となる。

⑶本件で、確かに、規則の目的は会議の秩序維持であり、議会が民主政治に欠かせないものであることから必要不可欠と言える。
 また、手段について、記者クラブに所属していないフリーのジャーナリストは秩序を乱した時にも記者クラブから処罰されるわけでもなく、またどんな人物かの一定の担保もないのであるから、不許可処分という手段は目的との関係で必要最小限度と言えるとのY県からの主張も考えられる。
 しかし、フリージャーナリストであることから秩序を乱しやすいと言えるわけでは必ずしもないのであるから、本件不許可処分は目的に適合しない。
 また、記者クラブの入会には総会で会員の3分の2以上の賛同を得る必要があるなどの一定の制約があり、フリージャーナリストが記者クラブに所属することは事実上困難であるから、不許可処分はXへの不利益が過大であり、必要性に欠ける。
 よって、本件不許可処分は手段が目的との関係で必要最小限度とは言えない。

⑷以上より、本件不許可処分は平等原則に反し違憲である。

以上

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