4/6/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
大阪大学法科大学院2025年 行政法
設問1
1. Y市建築主事が本件申請に対する諾否の応答をなお留保することは違法か。
⑴本件指導は、パチンコ店の開業についてAらの同意を得ることを求めるもので、「申請の・・・内容の変更を求める行政指導」にあたる(行政手続法3条3項、Y市行政手続条例33条)。そのため、「申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明」しているにもかかわらず当該行政指導を継続することは原則認められない(同条例33条)。そして、「申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明」とは、申請者が行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明していることをいう。
⑵本件でXは、同年8月中旬、本件申請に対して速やかに諾否の応答をすることを求める書面をY市長に提出しており、明確に表明しているといえる。
また、Xは様々な変更の提案を行ったが、AらはXによる変更の提案を受け入れず、本件建物でのパチンコ店の開業には同意できないとの立場をまったく変えなかったために、これ以上Aらに対して説明会や個別の訪問を行っても、パチンコ店の開業について同意を得られる見込みはないことから書面を提出しているところ、行政指導にはもはや協力できないとの意思を必要に迫られ真摯に表明しているといえる。
よって、「申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明」しており、原則として留保は違法である。
2. ⑴もっとも、かかる場合でも、相手方が受ける不利益と、行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較考量して、相手方の行政指導への不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情がある場合には、応答の留保は例外的に違法にはならないと解する。
⑵本件でXは、2024年3月上旬から8月中旬までの5ヶ月間も応答を留保され、その期間本件建物の建築ができておらずそれによりパチンコ店の営業を開始できていない。そのため、Xの経済的不利益は大きい。他方、本件申請に対する諾否の応答をなお留保することは、近隣住民Aらが自分たちの生活環境が損なわれることを危惧していることを理由に行われているところ、公益上の必要性がないとはいえない。もっとも、本件建物の建築計画は法6条1項にいう建築基準関係規定に適合するものであり、公益上の必要性が高いものとは言えない。
⑶そのため、相手方が受ける不利益と、行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較考量して、相手方の行政指導への不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情がある場合とはいえない。
3. 以上より、Y市建築主事が本件申請に対する諾否の応答をなお留保することは違法である。
設問2
1. XはAらの同意を得ることができておらず、本件指導に従っていないとして、Y市建築主事が本件申請に対して拒否処分をした場合、その拒否処分が違法であるか。
⑴まず、建築確認の要件は「建築基準関係規定に適合すること」(建築基準法6条4項)のみであるところ、本件建物の建築計画は本件申請の際に提出された図書及び書類によると、建築基準関係規定に適合するため、本件建築の建築計画は建築確認の要件を満たす。
⑵では、建築確認の要件を満たした場合に建築確認をするか否かについて、建築主事に裁量が認められるか。
まず、要件裁量につき、「建築基準関係規定に適合することを確認したとき」と建築確認の要件に抽象的表現はなく、要件裁量は認められない。次に、効果裁量につき「交付しなければならない」と交付しないという判断をする余地を残していないため効果裁量も認められない。
よって、建築主事に裁量は認められない。そして裁量が認められない以上、建築確認の要件を満たした場合、建築確認をしなければならない。
2. 以上より、XはAらの同意を得ることができておらず、本件指導に従っていないとして、Y市建築主事が本件申請に対して拒否処分をした場合、その拒否処分は違法である。
以上