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2022年 商法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2022年 商法 大阪大学法科大学院【ロー入試参考答案】

10/17/2023

The Law School Times【ロー入試参考答案】

大阪大学法科大学院2022年 商法

設問1

1. Y社取締役であるXは、本件株主総会における解任決議(会社法(以下略)339条1項)が可決されたことで解任されている。また、現時点は令和3年11月19日であり、本件総会決議の日である同年10月8日から「3箇月以内」である。そこで、本件株主総会の決議の効力を否定すべく、「当該決議の取消しにより……取締役……となる者」(831条1項柱書後段)であるXは、Y社を被告として(834条17号)、Y社本店所在の地方裁判所に対して(835条1項)、総会決議取消しの訴え(831条)を提起するという手段をとるべきである。

 ⑴ では、本件株主総会において、取消事由があるか。

  ア Y社は、種類株式発行会社ではなく、発行株式に譲渡制限もないため、公開会社(発行株式の全部又は一部に譲渡制限のない会社。2条5号)に該当する。そして、公開会社においては、取締役会を設置しなければならない(327条1項1号)。よって、Y社は取締役会設置会社である。よって、総会では、招集通知に記載した総会決議の目的となる事項以外の事項については決議できない(309条5項本文)。

  イ 本件株主総会では、総会の目的事項として、事業報告、計算書類の報告および剰余金配当の件が記載されているにも関わらず、Xを解任する旨を目的事項とすることがAによって提案され、決議に付されている。なお、Xの任期は令和4年の定時株主総会終結時までであり、まだ任期は満了していない。
    以上より、本件株主総会には、309条5項違反があり、「決議の方法が法令……に違反」(831条1項1号)するといえ、決議取消事由がある。そこで、Xはこのように主張するのが合理的である。

 ⑵ また、その他定足数要件・可決要件は満たしているが、総会決議の安定を図ろうとするための重要な規定である309条5項に違反している。その上、当該目的事項は、議事が整然と行えるように会場内の秩序を維持したり審議すべき議題の指示をしたりする重要な業務を担うべき議長(315条)たるAが提案して決議したものであるところ、「違反する事実が重大でな」いとはいえない。
   よって、裁量棄却(831条2項)されることもない。

2. 以上より、上記取消訴訟は認められる。

設問2

 検査役の調査は、成立後の会社の株主や債権者の利益保護のために設けられた制度である。しかし、かかる調査の手続には費用・時間がかかる。そのため、これらのコストを回避すべく現物出資や財産引受自体が利用されなくなり、かえって会社財産が充実しないという問題点がある。
 そこで、かかる問題点を改善すべく、検査役の調査の免除規定が設けられている。

設問3

 会社が取締役と取引することは会社の利益にもなりうるところ、結果的に会社に損害が生じたからといって当然に取締役の責任を課すことは取引の萎縮にも繋がり妥当でない。
 もっとも、自己のために会社と取引(直接取引)をした取締役については、自己の利益のために会社に損害を与えながら無過失を理由に免責されるのは妥当でない。この点が428条1項の趣旨である。

以上

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