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2024年 民事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】
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2024年 民事訴訟法 神戸大学大学法科大学院【ロー入試参考答案】

7/22/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

神戸大学大学法科大学院2024年 民事訴訟法


設問1

1. XはYに対し動産甲の引渡しを求めているのに対し、裁判所がYに対し動産乙の引渡しを命ずる判決をすることは、「当事者が申し立てていない事項」についての判決として、処分権主義の現れたる民訴法246条(以下、法名略)に反し許されないのではないか。

⑴ 246条の趣旨は、実体法上私的自治の原則が妥当するものについては、訴訟上も当事者の意思を尊重すべきであること及び当事者に敗訴時に負うべき不利益の最大限     を予告して訴訟に伴うコストを踏まえて訴訟に臨めるようにする点にある     。そこで、①原告の意思に反さず、➁当事者に予告された不利益の最大限を超えないならば、申立てと一致しない「判決」も246条の趣旨に反さず許されると考える。     

⑵ 原告Xは本件訴訟において、動産甲の引渡しのみを求めていることから、Xの意思としてはあくまで動産甲の引渡しにあり、乙の引渡しは求めていない。そうであるにもかかわらず、乙の引渡しを認めるのは、原告の意思に反する(①)。また、原告が動産甲のみの引渡しを求めているから、被告Y に予告された不利益の最大限は、甲の引渡しを命じられることである。契約目的物が乙である旨の主張は、あくまで甲を10万円で売ったことの積極否認の理由にすぎない     。にもかかわらず、動産乙の引渡しを命じることは、Yに予告された不利益の最大限を超える(②)。

2. 以上より、裁判所がYに対して、動産乙の引渡しを命じる判決をすることは、「当事者が申し立てていない事項」についての判決であり、246条に反し許されない。

設問2

1. XYのいずれの主張なく、本件売買契約の目的物が動産乙であると裁判所が認定し、Xの請求を棄却することは、弁論主義の一内容たる主張原則に反し許されないのではないか。

⑴ 弁論主義とは、訴訟資料の提出を当事者の権能及び責任ともする建前をいい、実体法上当事者意思に委ねられている以上、訴訟上も当事者意思に委ねるべきという点に根拠がある。ゆえに、当事者の主張していない事実を判決の基礎としてはならない(主張原則)。

⑵ そこで、弁論主義の適用される事実とは、訴訟の勝敗に直結する事実である主要事実、すなわち、訴訟物たる権利法律関係の発生、変更、消滅を定める法規の要件(要件事実)に該当する具体的事実を意味すると考える。他方、間接事実と補助事実については、証拠と同様の機能を有するので、裁判所の自由心証(247条)を害さないためにも弁論主義の適用される事実には含まれないと考える。

⑶ 本件の訴訟物は、売買契約に基づく代金支払請求権である。同請求権の発生を定める法規は民法555条であり、同条は、同請求権の発生要件として、目的物と代金を特定した売買の合意を定める。本件では、Yが、Xに対して、甲を10万円で売った事実がこれにあたり、主要事実である。他方、Yが、Xに対して乙を売った事実は、上記請求権の発生・変更・消滅を定めた法規の要件に直接該当する具体的事実ではなく、積極否認の理由にすぎないから、間接事実である。

⑷ よって、乙を売った旨の事実は弁論主義の適用対象ではない。

2. 裁判所の判断は、Xが請求原因事実を立証できなかったというものにほかならず、弁論主義に反さず適法である。     

設問3 

1. 本件訴訟でXY間の動産甲に関する売買契約の事実が認められない判決が確定しているにもかかわらず、本件別訴で本件売買契約締結の事実を主張することは、既判力(114条1項)に抵触するか。

⑴ 既判力とは、確定判決の後訴での通用力ないし拘束力をいい、「主文に包含」(114条1項)する範囲、つまり、訴訟物についてのみ認められ、判決理由中の判断には及ばない。 
 なぜなら、当事者が自律的に攻撃防御を尽くした場合は、手続保障が十分に与えられていたといえ、この場合は、拘束力を付与しても自己責任の範囲内として正当化できる点に既判力の根拠があるところ、訟物の存否については、当事者が攻撃防御を尽くすのが通常であり、根拠が妥当するからである。
 また、主観的範囲は原則として「当事者」(115条1項1号)であり、基準時は、事実審口頭弁論終結時である(民事執行法35条2項参照)。
 本件訴訟の訴訟物は、XのYに対する売買契約に基づく目的物引渡請求権であり、「当事者」(115条1項1号)は、XとYである。請求棄却判決がなされているから、本件訴訟口頭弁論終結時におけるXのYに対する同請求権の不存在について、XとYの間に、既判力が生じている。

⑵ 既判力が生じると、前訴事実審口頭弁論終結時における訴訟物の存在又は不存在の判断に矛盾抵触する後訴当事者の主張ないし裁判所の判断を排斥するという機能が前訴当事者間において営まれる。そうすると、類型的には、前訴訴訟物と後訴訴訟物が同一、先決、矛盾関係にある場合に前訴確定判決の既判力が及ぶと解する。
  本件別訴の訴訟物は、所有権に基づく返還請求権としての動産引渡し請求権である。これは、上記の本件訴訟の訴訟物と、同一ではないし、先決関係にも矛盾関係にもない。           以上より、本件別訴で本件売買契約締結の事実を主張することは、既判力(114条1項)に抵触しない。

以上


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