広告画像
2023年 民事訴訟法・刑事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】
後で読むアイコンブックマーク

2023年 民事訴訟法・刑事訴訟法 明治大学法科大学院【ロー入試参考答案】

2/29/2024

The Law School Times【ロー入試参考答案】

明治大学法科大学院2023年 民事訴訟法・刑事訴訟法

【民事訴訟法】

1. そもそも、既判力とは、前訴確定判決の後訴に対する拘束力ないし通用力をいう。

その趣旨は紛争の実効的解決にあり、正当化根拠は手続保障である。そして、既判力の客観的範囲は、「主文に包含するもの」(民事訴訟法(以下略)114条1項)、すなわち、訴訟物の範囲に生じ、理由中判断には生じない。なぜなら、理由中判断に既判力を生じさせてしまうと、当事者が訴訟活動に過度に慎重になり、審理の遅延を招くためである。また、正当化根拠である手続保障が妥当する最後の時点である、事実審の口頭弁論終結時(民事執行法35条2項参照)を基準時として既判力が生じる。

2. もっとも、上述の原則の例外として、114条2項は相殺の抗弁に対して判断したときは、「相殺をもって対抗した額」すなわち、判決理由中で示された反対債権の存否の判断にも既判力が生ずる旨を定める。
 これは、1度反対債権を相殺に供することにより実質的に債権回収を図りながら、再び同債権を回収せんとし、いわゆる二重取りを行うことを防止するものである。

3. そこで、XのYに対する500万円の売買代金支払請求に対して、Yが800万円の請負代金債権をもって相殺に供した本件においても、以上を踏まえて既判力の生ずる範囲を画定する。

4. まず、訴訟物たるXのYに対する 500 万円の売買代金請求権の不存在に対して既判力が生ずる。また、理由中の判断である、Yが請負代金債権でもって相殺した500万円についても、114条2項より既判力が生ずる。
 一方で、原告の請求額たる500万円を超える残りの300万円部分については相殺に供したものではない。そのため、同部分について既判力は生じない。

【刑事訴訟法】

1. 「Xが、Vに対して性的に不快感を催すような言動をしていた事実」を要証事実と設定した場合、相談記録の中のV供述について証拠能力は認められるか。
 相談記録が「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」(刑事訴訟法(以下略)320条1項) (以下伝聞証拠とする)に該当し証拠能力が否定されないかが問題となる。

⑴ 320条1項の趣旨は、供述証拠が知覚、記憶、表現、叙述の各過程に誤りが介在するおそれが高いことから、宣誓(154条)、反対尋問(憲法37条2項前段)、裁判所による供述態度等の観察によって供述内容の真実性を吟味する必要があるのに、これをなし得ないため、このような証拠の証拠能力を否定し誤判防止を図った点にある。

⑵ そうだとすれば、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠で、要証事実との関係において供述内容の真実性を立証するためのものをいうと考えるべきである。

⑶ 「相談記録」は、Wが業務の通常の過程で体験した事実を記録した書面であって、その記載内容の真実性が問題となる。

⑷ よって、相談記録は伝聞証拠に該当する。

2. 326条規定の同意が存在しない以上、伝聞例外の検討を行うところ、本件では323条2号が問題となる。

⑴ 323条2号は、業務の遂行上一定の方式に従い機械的継続的に書面が作成されることから、誤りの介在可能性が低いことに着目した伝聞例外であることから、「その他〜書面」とは業務性や機械的要素、継続性を考慮して判断する。

⑵ これをみるに、相談記録はWの業務たるハラスメント相談室にて、その都度、相談日時・相談者の氏名と所属部署・相談内容・今後の対応予定を克明に記載するものであり、業務的であり、また機械的に記載されるものである。

⑶ したがって、伝聞例外となり、証拠採用が可能と思える。

3. もっとも、相談記録の中のVの供述は「Xが、Vに対して性的に不快感を催すような言動をしていた事実」という要証事実との関係で、Vの過去の体験を明らかにする供述内容の真実性が問題となるので、伝聞証拠に当たるものである。

⑴ そこで、再伝聞の許容性が問題となる。

⑵ 単純な信用性の情況的保障と証拠としての必要性が認められれば、伝聞例外が認められるところ、再伝聞についても、伝聞過程それぞれについて伝聞例外の要件が備わっているならば、同様に信用性の情況的保障と証拠としての必要性が認められるといえる。そこで、伝聞証拠について例外的に証拠とすることができる場合には、当該書面が公判期日における供述に代わることになるので(320条1項)、当該供述に含まれている伝聞部分には324条が類推適用されると考える。

⑶ 本件では、V の供述は、公判期日又は公判準備期日外に、裁判官又は検察官以外の者たるWの面前でなされた供述であるから、上述の法 324 条2項の類推適用より、321条1項3号を検討する。

⑷ 法321条1項3号の要件は、供述不能、不可欠性、絶対的特信性である。
 Vは「死亡」している上、Xの罪責として強制性交致死罪の成否が争点となっているので、V の供述でX の性的不快な言動を立証し、X の平素の性的に邪な感情を推認し、実行行為当時のXの性的な動機を推認することには不可欠性がある。
 また、Vは一般的に自分にとって明らかにされたくない性的な被害について、Wに対しこれを明らかにし相談しており、あえて嘘を述べる必要性はなく、特に信用すべき状況を肯定できる。

⑸ 以上より、伝聞例外を満たし、再伝聞も許容される。

4. よって、相談記録の中のV供述について証拠能力が認められる。

以上

おすすめ記事

ページタイトル
キャリア

法律事務所EXPO powered byカケコム 開催決定!

#ロースクール
ページタイトル
ロースクール

弁護士を目指す、フランス留学中の大学生が綴る留学&司法試験挑戦記 Vol.1

#ロースクール
ページタイトル
キャリアインタビュー

伝統と変革。テクノロジーと協働し、顧客の感情と向き合う弁護士を育てる。Authense法律事務所代表・元榮太一郎弁護士インタビュー【PR】