5/12/2025
The Law School Times【ロー入試参考答案】
九州大学法科大学院2025年 憲法
問1
「目的・効果基準」とは、当該行為が政教分離原則(20条1項後段、20条3項、89条)に反するか否かを判断する際の違憲審査基準である。「宗教的活動」(20条3項)を、行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為と限定的に解釈し、そのような行為に限って政教分離原則に反するとの考え方が「目的・効果基準」である。
問2
最高裁が「目的・効果基準」を初めて打ち立てたとされる判決は、津地鎮祭事件である。津地鎮祭事件では、地鎮祭での起工式が20条3項にいう「宗教的活動」にあたるか、市長による費用の支出が89条前段に反するかが問題となった。市長が世俗的行事と評価しており、神道に対する関心を高めることを目的としていないこと、神道を援助、助長する効果は認められないことから合憲としている。
愛媛玉串料訴訟判決では、愛媛県が玉串料を公費で負担したことが89条に反するかが問題となった。玉串料の奉納者は当該行為に宗教的意義があると認識しており、県が特定の宗教団体を特別に支援しており、これらの宗教団体が特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものであるとして、違憲としている。
問3
1. 空知太神社事件では、市有地である土地を氏子集団に無償提供したことが政教分離(20条3項)に反しないか問題となった。
本件物件は神道の神社施設に該当すること、神社の行事は宗教的意義の希薄な、世俗的行事にすぎないものではないこと、管理と祭事は氏子集団が行っており、これは宗教的行事を行うことを主たる目的とする宗教団体であり、寄付を集め、神社の祭事を行っており、氏子集団は神社施設の対価を支払っておらず、便益を享受していることから、本件の利用提供行為は、直接の効果として氏子集団による神社を利用した宗教的活動を容易にしている旨の判断を示したものと解される。
そして、以上の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すると、本件免除は、市と宗教の関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、20条3項の禁止する宗教的活動に該当し、本件免除が20条1項後段、89条に違反するか否かについて判断するまでもなく、本件免除は違憲であるとの判断を示した。
2. 孔子廟訴訟は、市有地の使用料を全額免除した行為が政教分離に反しないかが問題となった。
本件訴訟で政教分離に反するか否かは、①当該施設の性格、②当該免除をすることとした経緯、③当該免除に伴う当該国公有地の無償提供の態様、④これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきとし、以下のような判断を示したものと解される。
本件施設の宗教性は軽微とはいえない(①)。また、市は公園用に国有地を購入し賃借しているため、市の出捐を伴っている。さらに、本件施設は元々の廟とは異なる場所に新築されていて、純粋な復元ではない。そのため、法令上の文化財ではない。そうすると、本件施設の観光資源としての意義や歴史的価値をもって、直ちに本件免除により新たに本件施設の敷地として国公有地を無償で提供することの必要性及び合理性を裏付けるものとはいえない(②)。そして、年間580万円程度の使用料を免除されているのであって、利益は相当大きいし、更新も予定されているから、継続的にこの利益を享受できることになっている(③)。宗教性を有する本件施設の公開や宗教的意義を有する釋奠祭禮の挙行を定款上の目的又は事業として掲げており、実際に本件施設において、多くの参拝者を受け入れ、釋奠祭禮を挙行している。そして、本件施設に多くの人々を受け入れており、上記利益を享受することで本件施設を利用した宗教活動を行うことを容易にでき、その効果は間接的・付随的なものにとどまらない(④)。
したがって、本件訴訟は違憲である。
以上