2/29/2024
The Law School Times【ロー入試参考答案】
北海道大学法科大学院2023年 商法
第1問
甲社は、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定款で定めているため(107条1項1号又は108条1項1号)、甲社の株式は「譲渡制限株式」(2条17号)である。また、甲社では、株券を発行する旨の定款の定めがあるため、甲社は「株券発行会社」(117条7項)にあたる。
甲社の株主Aは、自己の有する甲社株式1千株をBに売却することで、Bと合意し、Bに株券を交付(128条1項本文)している。この譲渡につきAは甲社の取締役会の承認を得ていないところ、その有効性が問題となる。
この点、会社に関する関係で譲渡を無効とし、会社にとって好ましくない者が株主となることを阻止できれば、定款による譲渡制限の目的は達成される。また、137条1項、138条2号は、譲受人からの承認請求を認めており、譲渡当事者間においては、有効であることを前提としている。したがって、承認のない譲渡は会社との関係では無効だが、当事者間では有効と考える。
そうすると、AB間では、株式譲渡契約が有効に成立している。
よって、AのBに対する甲社株式の返還請求は認められない。
第2問
会社法429条1項が存在しない場合には、第三者は、役員等に対して、民法709条に基づく不法行為責任を追及することになる。不法行為責任においては、行為者の「故意または過失」が要求されるところ、会社法429条1項では故意または過失は要せず、同条の「悪意又は重大な過失」は任務懈怠について存すれば足りると解されているため、同条は役員等の責任を加重するものと考えられる。
その趣旨は、法は、株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存するものであることから、第三者を保護することにある。
以上